王女ジュリアンヌ
※ジュリアンヌ視点のお話です※
―――<SIDE:ジュリアンヌ>
私はその日、長年辛苦を分かち合ってきた親友に裏切られたことを悟った。同時にこれほどまでのチャンスがあるかと意気込み、こっそりと隠れていた物陰から躍り出た。
そして私を見て、私こそが相応しいとアピールすれば麗しき絶世の美貌を持つ吸血鬼の王子が、私を選んでくれたのだ。
なお、私を騙してきた親友の両親は絶望の表情を浮かべ、親友にバカにされてきた冴えないその姉は2回も婚約破棄されて、その上3回目は婚約前に拒否されたことにショックを隠せないようだ。
けれどこの縁談は元々私に来たものだったし、私がちょっと渋っている間に横入りしてきたのはそっちでしょ?ふんだ、いい気味よ。
こうして私は麗しき絶世の美貌を持つ吸血鬼の王子と婚約した。吸血鬼の自治区にて婚約発表パーティーまではこちらで暮らすけれど、婚約発表パーティー後はあちらで暮らすことになっている。その日が待ち遠しくて待ち遠しくて私は茶会や夜会でそのことを自慢して回ったわ。
ただ予想外だったのは、あの冴えない姉は第2王子のカイムお兄さまの婚約者になるかと思えば、吸血鬼側の温情で吸血鬼にもらわれることになるなんて。ずっと親友だと思っていたソフィに騙されており、吸血鬼は醜く恐ろしいものだと聞かされていたけれど、実は美形づくめなのですって。あの冴えない姉がその美形をものにするのは癪だけれど、聞いた話では境界に追いやられた哀れな辺境伯の末子が相手らしい。いいざまね。きっとそんな扱いを受けている相手だもの。見た目もたいそう貧相なのでしょうね。
更に、ソフィはお父さまに職を解かれた両親と兄と連れて辺鄙な領地に帰るらしいの。ふんっ。私を騙した罰が下ったんだわ。
さぁ、私は王子さまが迎えに来るのを待つだけ。今からでも楽しみだわ。
―――
ソフィの家族が片田舎に追いやられて暫くすると、予定通り吸血鬼の第2王子のギルバートさまが自ら私を迎えに来てくれたわ。ふふ、ソフィもその家族もきっと今頃悔しがっているでしょうね。
私はギルバートさまにエスコートされて、空飛ぶ馬車に乗り込んだの。そして遂に吸血鬼の王城に降り立ったのだけど。
吸血鬼の王城は想像していたよりも古ぼけていた。何よこれ。吸血鬼って人間よりも高位な種族じゃないの?お金もいっぱい持っていて、実家の城よりも豪華な場所で暮らすとばかり思っていたのに。これなら、実家の方が何百万倍もましだわ。
ついつい、「何この城、ぼっろ」と言ってしまったけれど、ギルバートさまは微笑んでいらしたからきっと聞かれていないわね。
さて、ギルバートさまに案内された部屋は確かに広いし、アンティークものが並んでいるのでしょうけど・・・。想像していた豪華絢爛なものとは違った。けれど、婚姻したらギルバートさまと同じ部屋で寝食を共にすると言うし、これは一時的なものよね?しょうがないから我慢してあげるわ。
―――けれど、それからの生活は王城の古ぼけた感じは別として、とても素晴らしいものだったの。まず、吸血鬼の王さまはとても若々しくて美しくていい匂いがするの。加齢臭がしてきたウチのお父さまとは大違い。
思わずボディタッチもしたくなるってものよ。それに王さまも私がちょっとかわいく“お義父さま”と呼べばにこっと微笑んでメロメロなの。
妃であるお義母さまはそれに苦言を呈してくるけど。何よ。若くてかわいい私に嫉妬しているの?みっともないわね。
「(ちっ、あのクソばばぁめ)」
更にギルバートさまのお兄さまもとってもキレイなの。ご兄弟で並ばれたらもう、神々しいったらありゃぁしないわ。けど、気に入らないのがその妻だって言う女よ。
何だかソフィの姉を思い出す色褪せたような髪。それに私の方がよっぽど美人じゃない?自信がないのか肌を隠すような服ばかり選んで。私のように大胆に肌を出すこともできないんだわ。それに、私がちょっとかわいく寄り添えば、お義兄さま、いいえアルバートさまもにこりと微笑んでくれて。ふふふ、すっかり私の魅力にメロメロみたい。
「(あんな色褪せた髪のブスな女、目じゃないわ)」
それに他にもこの城にはイケメンがいっぱいいるの!だからそこら辺の騎士や執事を誘ってみたのだけど断られてしまったわ。もう、遠慮しなくていいのに。
だって私はかわいいし、それに第2王子のギルバートさまの婚約者なの!そう言えば、第2王子ね。てことは、将来王になるのはギルバートさまでは、ない?どうせなら第1王子のアルバートさまを狙った方がいいわよねっ!?
更にその妻と言えばあんな地味な女だもの!私にかかればイチコロよ!だって、私はソフィの姉とカイムお兄さまの婚約破棄にも協力し、見事にそれを成し遂げたのよ?まぁ、その後釜に座ったソフィは私を騙した天罰が下ったのか、カイムお兄さまの婚約者候補をクビになって片田舎の領地に親子共々左遷されたけどね。
その日から早速私は、アルバートさまに猛アピールを開始したわ。朝の晩餐でもアルバートさまの腕を掴んで颯爽とあの地味女を追いやってアルバートさまの隣の席を奪取したり、暇さえあれば家庭教師の目を盗んでアルバートさまの元へ奔走してアピールしたの!
そんな時だったわ。あの地味女とギルバートさまの会話を偶然聞いてしまったの。
『そう言えばあの離宮のリフォーム、進んでいるの』
『えぇ、義姉上。順調ですよ』
離宮、ですって?ひょっとしてあの地味女が王太子であるアルバートさまのお部屋を追い出されてそこに籠るってこと?つまりはアルバートさまからの冷遇。私がアルバートさまに溺愛される時が遂に来たってことね!
こう言う展開は既に経験済みなのよ。ウチの城でもちょぉっとやり過ぎて、一番上のアルノルトお兄さまの妃のクラリスが体調を崩して表舞台から暫く退き療養することになったのよ。
それも、城の中の離れでね。
やっとあの邪魔な地味女が消える!やっと私の天下が来たのよ!
そして私はギルバートさまとの婚約発表パーティーに臨むことになったの。その日は大切な話があるとギルバートさまから言われているわ。きっと私の婚約者がアルバートさまに変更になると言う話でしょうね。ふふふ、楽しみで仕方がないわね!




