2人の兄弟会議
※お待たせしました(`・ω・´)ゞ※
※大事なくだりを忘れとりました。追記済みです<(_ _)>
「やぁ、セシナ。お待たせ。フィアちゃんは?」
ルシウス兄さんが相変わらずへらへらしながら入室してくる。
「今日は部屋でエリンと一緒に勉強をしている。この件はエリンにも伝えてあるから、エリンが上手くやる」
「ならいいよね。まぁ、ここも特別な部屋だから、滅多なことがないと入れないけどね~」
そう、ルシウス兄さんが言った通り、ここは普段みんなで食事をとっているダイニングとは異なる。登録した者しか入れない兄弟会議のための部屋である。今日はルシウス兄さんと俺だけだが、兄弟全員で集まることもある。
ここで俺たちが何をしているかと言うと。
「それで、捕えた者たちについて詳細は?」
ウチのローゼンクロス辺境伯領に堂々とネズミが紛れ込んだらしい。ほとんどは俺の部下や、ジル兄さんが捕まえて牢に放り込んである。中には騎士に捕まった者もおり、本当に密偵なのかと苦笑してしまうレベルの者たちだったけれど。
「全員人間だね。ひと昔前なら人間と吸血鬼の混血の子を攫って密偵に仕上げていたけれど、さすがに今はないようだね」
まぁ、そうだな。昔はそういうこともやっていたらしいが、それが吸血鬼側にバレて当時の国王は王妃、王太子、王子王女ともども処刑されたんだよな。
でも、人間側に国を治める者がいなければならないと判断されて、公爵家からまともな人間が王位を継いで二度とそのようなことをやらぬよう当時の吸血鬼の王と誓いを立てさせられたんだっけ。
「ここで捕まった密偵に、混血児がいたら大変なことになっていたがな」
「まぁ、それも面白かったけどね」
と、ルシウス兄さんが苦笑する。
「やめてよ、もう」
全く冗談が尽きないんだから。
「それで、何故ウチに?」
ルシウス兄さんにそう問えば。
「どうも、フィアちゃんの様子を探りに来たらしい。人間側の王家の密偵らしいね。さてはまだ、フィアちゃんを諦めていないらしいね」
呆れたようにルシウス兄さんが答えた。
「あれだけあのカイムとか言うバカ王子がフィアを苦しめたって言うのに、まだフィアに未練があるのか?」
「らしいね。どうもあのバカ王子の婚約者候補もほぼ国内には残っていないらしい。けれど国外で探そうにも、それはそれであのバカ王子くんの失態を国外にも知らしめることになる。国内の年ごろのご令嬢たちはほぼみんな外国への伝手まで辿って婚約者を決めてしまったらしい。相当嫌がられているらしい」
「ふぅん。フィアへの行為は本人が隠れてやっていたようだけど、それが露見したってこと?」
「その話はフローリア公爵が王都を出発する前に国王と2人で行い、今後二度とフィアちゃんがバカ王子に嫁ぐことはないと公爵自ら宣言して認めさせたそうだよ。その話が外に漏れることはないと見られたんだけど、国内の年ごろの令嬢たちが国外にまで婚約者の候補を広げたのはその前。そもそも以前、吸血鬼の王子・ギルくんの不興を買ったあのバカ王子くんと結婚したいだなんて思う令嬢は、あのバカな妹君だけだったようだね」
「あぁ、あの時のこと?確かそれが原因で、思いっきり吸血鬼たちにバカにされたんだっけ。あの王家」
「そうそう。今回のギルくんの縁談もそれを修復するものだったらしいけどね?こちらで“保護”する形で迎えたフィアちゃんにまだ未練があるなんて。もう一度笑ってやってもいいんじゃない?」
「ごもっともだな」
「ところで、セシナが送った密偵はどう?」
「全員調査を終えて帰ってきたけど。もちろん公爵一家が無事に領地に着くのを見届けたら他も帰ってくる算段」
「そう。相変わらず優秀で何より。それで、調べていたジュリアンヌ王女のことはわかった?」
「まぁな。調べたところによると、あのソフィアンナと言うフローリア公爵家三女とかなり親しい仲だったらしい王女は、ソフィアンナを兄の婚約者にするためにフィアを追い落とそうと色々な嫌がらせをやってきたらしい。フィアにだけ聞こえるように暴言を吐いたり、脚をひっかけたり、大事な書類を隠したりなど。彼女を追い込むようなことを平気でしていたんだが、それを庇っていたのが王太子妃だったらしい。しかし王太子妃に手を出せばさすがに王太子が黙っていないから、ジュリアンヌ王女は窮地に立たされていたんだが、ソフィアンナがカイムを籠絡したことで無事その作戦は成功したと言っていい」
「結果は不適格で婚約者の座を降ろされちゃったけどね」
ルシウス兄さんが苦笑する。
「更に、ギルとの婚約の件だが、ソフィアンナは吸血鬼がいかに醜く恐ろしいかをジュリアンヌ王女に教え込んでいたらしく、彼女は王族でありながら吸血鬼の王家の者たちとの交流は最小限にとどめて極力避けていたらしいよ」
「一国の王女が、公爵令嬢とはいえその言葉をうのみにしてずっと吸血鬼を恐れていたんだねぇ。笑ってしまう」
「でも、昔だってそうでしょ?」
「確かに」
ルシウス兄さんが頷く。
まだ、人間と吸血鬼が共に暮らしていなかった時代。人間は自分たちとは異なる吸血鬼を恐れ、一方的に攻撃を仕掛けていた時代があった。結果は吸血鬼の方が強いので、即座に一蹴されたようだが。
争いまくって負けまくった結果が、人間の王国は存在するものの吸血鬼の自治区を作ってその力の恩恵をもらうと言うスタイル。まぁ、吸血鬼側も人間側がちょっかいを出してこないのなら別にいいと今のスタイルを維持しているのだが。
「けど、実際の吸血鬼であるギルはとてつもなく美しかったらしくて、こっそり見合いの場に見に行ったジュリアンヌ王女はそこで初めてソフィアンナに騙されていたことに気が付いたらしい」
「それで横恋慕か。まぁ、ウチにフィアちゃんが来てくれたのだからいいけどね」
「うん。仮にギルがフィアを婚約者に迎えていたら、さすがに俺はキレるぞ」
「だろうね。何たってあのギルくんだもんね。あの王女・・・知ってるのかな?ギルくんの二つ名」
「知らないんじゃないか?知っていたら、夜会や茶会であんなに自慢して回らないだろう。婚約発表パーティーまでは人間の王国側で過ごすらしいけど、現在は周囲に自慢しまくりソフィアンナの悪口を広めているらしい。さすがに王女として品がないと王太子に言われ、現在社交界禁止令がだされているらしいよ」
「ははは、それはまた残念な“妹”だね」
「マティ兄さんが知ったら三日くらい寝込みそう」
「その間の辺境伯の仕事のしわ寄せは俺たちにくるからね。なるべくこちらで始末して“妹”でリハビリさせてからことにうつろう」
にぃっとルシウス兄さんがひとの悪そうな笑みを浮かべる。
「ついでに今度のギルくんの婚約発表パーティーもマティ兄さんが行く予定だったけどさすがにあの王女が来るなら無理だろうね。俺が行くことにするよ」
「まぁ、俺もそれがいいと思う」
マティ兄さんが実物を見たら修復不可能な状態になりそうだ。
「それで、王家の密偵についてだけど」
「どうするんだ?」
「セシナの影が掴んできたネタで面白いのない?」
「えぇーそうだな。ジュリアンヌ王女の件だけど。面白い表情の写真がいっぱい撮れたってさ。部屋でひとり顔を歪めながら激怒している顔。メイドを怒鳴りつけている顔、虫を見つけてめちゃくちゃ号泣して鼻水でぐちゃぐちゃな顔。どれも傑作だけどどうする?」
「じゃぁ、それを付けて返してあげよっか」
「えげつないな」
「おや、セシナは温情をかけてあげる気?」
「まさか。でも、ギルに比べたらどうってことない」
そもそもフィアを傷つけた時点で許すことはないのだが。ギルの婚約者になったのならそれはそれで面白いことになりそうなので事の行く末を見守ろうと思っている。
「そりゃそうだ」
ルシウス兄さんが苦笑する。
さて、あのお花畑な王女さまがギルの二つ名に気が付くのはいつになるのか。
「そうだ。今夜の晩餐には何がでるのかなぁ」
不意に、ルシウス兄さんがそう切り出す。
「あぁ。辺境伯領で採れる巨大マッシュルームの話をしたら興味を持っていたから、今晩はそれを使ったメニューを頼んだよ。あと、デザートはチーズケーキ」
「わぁ、楽しみ~。フィアちゃんが喜んでくれるのが何よりだけどね。さぁ、お腹空いたし、俺たちも行こうか」
「あぁ。その前に俺はフィアを迎えに行ってくるよ」
「うん、頼んだよ」
ルシウス兄さんと別れて、俺は早速フィアの元へと急いだ。
※続きは明日UP予定です<(_ _)>※
※追記箇所:婚約発表パーティーの出席者がマティ兄さん→ルシウス兄さんになったくだりを追記しました。




