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第93話・魔王、ダメ出しされる

これからも、よろしくお願いいたします。

感想や気になる点などがありましたら遠慮なくお寄せ下さい。


衆目を集めるのも気にせず、魔王は街道を爆走する。

というか、気にする余裕は無かった。

何処に居るかも分からないベライバルを探し、街を迷走する。


事の起こりは、少し前にさかのぼる。

狩猟免許甲種の筆記試験から、ちょうど7日目の昼過ぎ。

試験結果に自信のあった魔王は、ドンと構えて工事を手伝っていた。

そこへ、頭領が声を掛けてきて―


『おいエティシア、ちょっと来い!』


『はい!』


脱兎の如く勢いで棟梁の下に行き、「ありがとう」と感謝しながら封筒を受け取った。

差出人の無い手紙、だが見ずとも内容は分かっている。

とうとう合格の通知が来たのだ!

まだ確認はしていなかったが、すでに次に控える実技試験に思いはせ、封筒の中身を取り出し・・・・


―国民年金に加入しませんか?

100年後、1000年後どの種族であろうとも必ず訪れる老後の生活の不安を一挙解決!

現役時代に一定額を積み立て、退職後の生活費として分配される賢者もビックリ、超安心システム。

積立額が増えれば増えるほど、受け取れる額が増えます!

なお時代変革などで受け取れる額が減る事がありますが、逆に変革で元に戻ることもあります。

※短命種とドラゴン種の方は、加入いただけません


『なんだ、このフザけた内容の手紙は!?』


『あー、これは国が主導の年金の案内状だな、金ばっかり掛かってよ。 貴族どこか王族ですら敬遠してる制度の一つさ』


『大丈夫なのか、この国は?』


それが本当なら・・・・いや、そんな事はどうでも良い。

怪しい手紙はてのひらで灰になった。


『手紙ってコレだけ!?』


こんなゴミは要らない。

魔王はグッと顔を付きそうなぐらい近づけて、待っている手紙を催促した。

頭領は気迫に押された後、離れたところにいるエルフへ声を掛けた。


『ん、あぁと・・・・コレだけだよなっ?』


『もう一枚、青くて厚いのを渡しましたが?』


エルフはそう言って、魔王を指差した。

正確には彼女の、灰まみれになった掌の上を・・・・

一瞬で顔を青くさせた彼女は、魔力を集めて叫んだ。


『ふ、復元!』


幸い燃したばかりの灰は、魔法によってみるみる元の手紙の姿へ戻った。

風が強かったらヤバかった。

今度は間違えて焼却したり失くしたりしないよう、バカな報せのほうは右袖へ仕舞っておく。

もう一枚の復元した手紙には間違いなく、狩猟免許合否通知書と書かれていた。

どうやら、年金通知の裏に隠れてしまっていたらしい。


『フフハハハ、待っていた、この日をどれほど待ちわびた事か!』


『おぉエティシア、それ例の狩猟とかのヤツか? まさか合格したら工事を止めるなんて言わないよな?』


不安なのか興味が在るのか、他の工事している人たちも集まってくる。

そして結果は、「合格」の2文字が確かに書いてあった。

―ただし、一部を除き。

見間違いかもしれない、一縷いちるの望みに掛けて街を探し回った末、ようやく一軒の食堂の中に、その姿を見つけることが出来た。


「ベライバル、ここに居たか。 探したぞ!」


「へっ魔王様?」


前に彼自身からも聞いたが、爆裂などの特殊魔法使いは儲かるようだ。

こんな昼間から居酒屋で外食とは、羨まし・・・・いや、けしからん奴め!

魔族の窮状について語らいたいところだが、それよりコイツには話が在る。

呆然とするベライバルの襟首を掴み、魔王は鼻先に青い手紙を見せ付けた。


「私は魔王などではない、エティシアだ! それよりこれだ、これを見てくれ!?」


「それは狩猟免許の・・・・あぁ・・・・・・」


見せられた手紙の一部分を見て、彼は力なく返事した。

手紙の四角く囲われた部分には、試験の結果『不合格』という残酷な三文字が。

余計な一文字でこうも変わるとは、人間社会とは恐るべき場所であると再認識させられる。

ガクリと肩を落とす魔王を見て、しかし当のベライバルは分かっていると首を縦に振った。


「申し上げたでは在りませんか、1ヶ月そこらで試験を受けるなど無謀ですと」


「くぅ・・・・・・」


元の知将ベライバルの的確な返しに、魔王はグウの音も返せなかった。

彼は魔王軍を離れて以後、テバスという人間の街で冒険者になっていたらしく、引退した後も工事現場などの『爆裂担当』として大成していた。

それにあやかろうとして、結果はご覧のとおり惨パイ。

泣きそうだった魔王の瞳にキッと光が戻り、知将に知識を求める。


「教えてくれないか、私にナニが足りなかったのかを!」


こう言っては自慢のようになってしまうが、魔物の習性や急所など、冒険に際しての知識には誰にも負けない自信があった。

伊達に魔王は名乗っていない、もしこのままでは『人間に不戦敗した魔王』という不名誉な称号が与えられるだろう。

それだけは避けたかった。


「分かりました、出来るだけ力添えしましょう」


「おお、そう言ってくれるか!」


元は配下のベライバルだが、人間社会の大先輩として、また冒険者ハンターとして学ぶことは多いに違いない。

持ち帰った今回の試験問題を彼に渡し、魔王は早速レクチャーを受けることになった。


―第1問・連邦法にある冒険者に関する記述で、適当なものを1つ選べ

①グランドグリズリーは特定保護動物に指定されているため、いかなる理由であっても狩猟はできない

②冒険者を引退する際は役所へ届け出た後も、免許は返納しなくて良い。

③災害級魔物を発見した場合は、速やかにギルドへ届け出ねばならない。

④1度に2つ以上の依頼を受ける場合、ギルドマスターの承認を得なければならない。


「なるほど・・・・これが今回の問題ですか」

 

顔色一つ変えず、何もか悟ったように頷く。

さすがは知将、パッと見ただけで問題が解けたらしい。

いや、さすがに魔王もコレはすぐに分かったが。

涼しげな様子で頬をかき、ベライバルは問題から魔王へ視線を流して、疑問をぶつけた。


「ところで、まお・・・・エティシア様はどれが正しいと思われますか?」


魔王はフンと鼻を鳴らし、胸を張って答える。


「③だろう、災害級ともなれば1人での対処は避けるのが当然だ」


どれも正解っぽいので迷ったが、3番目を読んでコレだと確信した。

なのにベライバルは、微妙な表情を浮かべているのはナゼ?

聞く前に彼は、問題を変えてきた。


「―次に第2問ですが、ゴブリンとの対処で間違っているのはどれか・・・、エティシア様はなんと答えられましたか?」


「②だな。 ゴブリンは群れで行動するから、討伐が目的なら火炎系で殲滅するのが手っ取り早い」


自信満々に魔王が答えていくたび、彼の表情から色が抜けていく。

最後の問題を解き終える頃には、ベライバルは俯いてしまった。

魔王も不安に苛まれてきて機構としていると、彼は静かに問題用紙を机の上において厳かに告げる。


「エティシア様・・・・残念ですが、一つも正解がございません」


「なんですとっ!?」


今、彼女がベライバルに言ったのは、試験で解いたのと同じ答えである。

いやいや全問不正解とか、もし本当なら魔王とかやってられないレベルだぞ。

血の気が引く音を聞きながら、彼女は人目も気にせず、テーブル越しに身を乗り出した。


「何が間違っているというのだ。 400年ひき籠もっていたとはいえ、生物全種が進化したわけでも在るまい!?」


「おお、落ち着いて下さい! 何もかも間違いと言う事ではありません!!」


襟首をつかまれたベライバルは、苦し紛れに弁明していた。

不正解といったのに間違いでないとか、コイツ馬鹿にしているのだろうか。

しかしウソ、というワケでもないらしい。

魔王は手を離すなり、長い髪を揺らしながら顔を彼の鼻先まで近付けた。


「・・・・・・聞かせろ」


「はっはい・・・・では第1問からですが。 災害級の魔物が発見された場合、速やかに届け出るのは役所でございます」


耳を疑った。


「・・・・はっ?」


「で、ですからギルドはあくまで狩猟のための組織。 災害級を発見ともなれば領兵など、軍隊が対処することになりますので、そのぅ・・・・・」


言葉を徐々に尻すぼみさせながら、ベライバルは体を小さくさせていく。

ようするに魔王は、人間の用意した罠(ひっかけ問題)に見事に掛かったというわけだ。

愕然とした彼女だったが、呆然とした様子を浮かべながら続きを促した。


「・・・・次は?」


「その前に、1問目にある間違っている部分についてですが―」


ベライバルは1文節ごとに魔王へ、その間違いを訂正して教える。

彼のレクチャーその後も、食堂の閉店まで続けられたのだった。


次話は、執筆中のため決まっておりません。

今後も、よろしくお願いいたします。


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