第92話・魔王、試験に行ったは良いものの。
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魔族が人の助けを借りる―
そう聞いたら、先代の魔王なら当該の魔族を滅ぼしていたことだろう。
でも断言する、困っていることあれば助け合うべきだと。
そして迷子になったなら、道を聞くべきだと。
「この街に大学なんて一つしかありませんよ。 この通りの一つ目の十字路を左に曲がったら突き当りがそうです」
「助かりました」
通りすがりの親切な青年に礼を述べた魔王は、意気揚々と教えられた道を突き進んでいと、大きな建物が姿を現した。
ここテバス公立大学で今日、『狩猟免許』をとるための試験が行われる。
他にも受験者とおぼしきライバルが・・・・・続々とは言いがたいが十数人、大きなカバンを持ってみな同じ方向へ向かっているのが映った。
「戦場か、何年ぶりだろう」
血沸き踊るとは、この事を言うのだろうと怪しげに魔王は手をワキワキさせる。
この受験のために犠牲となった4,000ゴールドと、今日の仕事のシフトを無駄にしない。
大学の前に掲げられた『狩猟免許甲種受験会場』という看板をみて、より気が引き締まっていく。
「大学って、広いんだな・・・・・・・」
着いたら目の前が会場かと思っていたが、ずいぶん建物が多い。
なんと混沌だろう、見ているだけで目を回しそうだ。
勘で近くを歩いている人の後ろを付いて行き、正面のレンガ造りの古めかしい建物へと入っていく。
中にも入り口で見たのと同じ看板が掲げられており、隣に手書きの表が掲示されているのが目に付いた。
場所は間違いないようで、少しホッとした。
「あぁ、ここか」
程なくして、『甲種免許』との札が掛かった小さな部屋を見つけた。
ズイブンと小さいが、恐らく圧縮系の魔法でコンパクトにしているのだろう。
なるほど、ここで未来の冒険者が生まれるとは面妖な・・・・・・魔王の敵では無いが。
「さあ友敵たちよ、我が前に平伏すが良い!」
今でこそ魔王と程遠い毎日を送っているが、そこは腐っても400才の魔族。
人生経験と知識には、他の追随を許さない。
・・・・・そのはずだったのだが、入るなり振り向こうともせず黙々と机の上で勉強する彼らの姿に、そんな勝ち誇った気持ちは吹き飛んでしまった。
「えぇと・・・・・失礼します」
空いている席へ付き、魔王は「ふぅ」と息をつく。
もう試験をしているかと、一瞬ヒヤリとしたが、よくよく見れば彼らは勉強しているようだった。
食い入るように本に目を通し、ブツブツと呪文のようなモノを唱えているもの。
連打するように一心不乱に、本にガリガリと何かを書き込むもの。
傍から見れば恐怖心すら抱くその姿を、魔王はあざ笑う様に見ていた。
すると後から入ってきた男性が、彼女へ声を掛けた。
「あのー、すみません」
「ん、なにか用か?」
「そこ、俺の席なんですが・・・・」
「・・・・・は?」
男に言われたことが分からず、素っ頓狂な声を上げる。
しかし机の上に貼られた紙が目に入り、ようやく状況を理解できた。
どうやら受験は、指定席らしい。
「おっと! すまない、失礼した!!」
驚いた、ここまで決められているとは思わなかった。
魔王の偽名『エティシア=ライザック』の名は、3つほど隣に書かれており、やっと一息つく。
いや違う―落ち着いている場合じゃない、自分も持ち物の確認を行う。
現場から借りてきた筆記用具は、黒い鉄粉で文字を書く筆と、書いた文字が消せる魔道具。
そして特に大事なのが受験票、1ヶ月も肌身離さず持ち歩いてたため端々がヨレてしまっているが、これが今日の身分証名書となるわけだ。
程なく『試験官』なるコートを着込んだ、高いマスクの男性が入ってきて試験に際しての注意点などの説明が始まった。
試験中は騒いではいけない、ヨソ見をしてもいけないなど、まるで騎士団の教練のように厳しい。
「―以上が、試験を受ける上での説明となります。 なにか質問はありますか?」
「あのー、どうしても横が見えてしまうことがあると思いますけど。 別に見たくて見るわけじゃないですけど、不可抗力の場合・・・・・」
横に居るカジュアルな出で立ちの男性が手を上げ、質問をした。
カンニングするつもりはないが、と言っているのだろう。
机の間隔は1.5人分ほどしかなく、少し広げたら手がぶつかってしまうほど近い。
試験官は、顔色一つ変えず淡々と答えた。
「見ないで下さい」
「でもほら、見えちゃう事とかあるじゃないスか?」
「見ないで下さい、他にありますか?」
なるほど、カンニングに理由は関係ないらしい。
よくよく勉強になるものと感心させられる。
『試験コーソク時間』とやらで定められた間、いつも以上に気を張っていこう。
続いてモヒカンの男性が手を上げた。
「あのー、試験の結果はいつ発表になるんですか?」
「今日の結果は7日後です。 めでたく合格された方には、二次試験のご案内もさせていただきます」
「えっ、二次試験って何ですか??」
驚く魔王に、一斉に注目が集まった。
申し込みの際に必ず試験の説明を受けることになっているはずだが、魔王は聞いていなかったらしい。
試験官の男性は顔色一つ変えず、淡々と答えた。
「二次試験は二次試験です。 冒険者になるには筆記のほか、技能を試す実技試験に合格する必要があります」
「マジですか・・・・」
「マジです」
すまし顔がイラッとするが、魔王も浅はかだった。
冒険者には獲物に関する知識などのほか、大事とされるのが身体能力だ。
魔法でも筋力でも良い、自分の身ぐらい守れなければ話にならない。
それは分かるのだが・・・・きちんと確認しようよ私、魔王は自分にそう言い聞かせた。
大人しくなった彼女を見て理解したと判断したらしい試験官は、腕に付けた時間を見る道具を見る。
「ほかに質問はないですね? では順番に問題用紙を配りますので、良いと言うまで開かないで下さい。 書いていいのは表紙の名前と、受験番号のみです」
試験官は後ろ手に組み、教室内を見回して、そう話を締めくくった。
いよいよ戦闘・・・・もとい試験開始である。
この日を迎えるため魔王は、1ヶ月も魔物や獣などの特性などを、一から覚えなおしてきた。
持参した筆を握り締め心臓をバクバクさせているウチ、開始時間となり、一斉に問題用紙がめくられる。
さあ、ここからが正念場だ!
―第1問・連邦法にある冒険者に関する記述で、適当なものを1つ選べ
①グランドグリズリーは特定保護動物に指定されているため、いかなる理由であっても狩猟はできない
②冒険者を引退する際は役所へ届け出た後も、免許は返納しなくて良い。
③災害級魔物を発見した場合は、速やかにギルドへ届け出ねばならない。
④1度に2つ以上の依頼を受ける場合、ギルドマスターの承認を得なければならない
何ソレ?
次話は、決まっておりません。
これからも、よろしくお願いいたします。




