第40話・魔王様、有給をとる?
これからも、楽しんで書いていこうと思います。
感想や気になる点などがございましたら、遠慮なくお寄せください!
「先日は、たいへん迷惑を掛けました。」
顔を赤くさせながら、深々と礼をする魔王。
上司は謝罪をする彼女を、目線をそらす事無く、ジッと見つめた。
「・・・うるさく言うつもりはありませんが、体調が悪いならそうと、今度からは仰(
おっしゃ)って下さいね?」
「はい、遵守します。」
言われるとおり、商会の廊下のど真ん中で倒れたのは、非常にいただけなかった。
今回は上司殿を始め、多くの人たちに迷惑を掛けてしまったのだ。
今はこうして関係筋の方々に、頭を下げに廻っており、最後に上司の元へ来た。
「皆さんにも大変、迷惑を掛けました。 ごめんなさい。」
当然のごとく同僚へも、頭を下げる魔王様。
しかしそんな彼女を、同僚たちは笑顔で迎え入れてくれた。
「何事も無くてよかったよ、今日は無理しないでね。」
「私たちがフォローするから! ね、シアちゃん?」
なんと暖かい言葉の数々・・・、魔王は今にも涙が出てしまいそうになった。
頬を伝う涙をぬぐい、覇気をたぎらせる魔王様。
さぁ、今日は早引きしてしまった分も、バリバリ働くぞ!!
「ではライザックさん、在庫管理表への記入をお願いします。 決して、無理はしないでください。」
「了解です、なのじゃ!」
魔王含め、各々(おのおの)の作業に戻る在庫管理部の面々。
こうして、いつも通りの和やかな空気が流れ始める室内。
カタカタと小気味良い音だけが、部屋の中を木霊する。
最近は仕事にも慣れ、魔王様の仕事をする手も少々、早くなってきているように見受けられた。
それを皆、微笑ましげな表情を浮かべて見守る。
「そういえばエティシアさん、有給願いは書いたの?」
「『ゆーきゅー』? なんじゃそれは??」
隣の席に座る男性の言葉に、質問を返す魔王。
一方それを聞いて、上司はハッとしたような表情を浮かべ、再び魔王の横へやって来た。
「すみません!! 危なく失念するところでした。 ライザックさん、この紙に名前と休暇事由を記入してください。」
「書くと何かある・・・のですか?」
『ゆーきゅー』という言葉にも、何か関連がありそうだという事は、おおよそ予測できる。
魔王様の疑念をよそに、上司の説明は続く。
「これは商会に対して、休暇を願い出る書類です。 事後承諾のような形になってはしまいますが、目撃している人間も多いので、申請は通ります。」
「事後承諾? 目撃??」
頭に疑問符を浮かべる魔王様に、同僚の一人が『ゆーきゅー』の意味の説明を始めた。
ブレアンド商会では、定められた期間だけ、休んでいても給料が出る、ということが出来る制度がある。
それが『有給制度』ある。
魔王は新人なのだが、止むに止まれない事情に限り、取得は可能である。
今回の『病気』という事由もしかり、事後承諾でも通る確率は、十分にあった。
それを聞いて、魔王は目をむく。
「そんな制度が・・・。」
「良かったね、シアさん。」
病気で倒れていたアレで、金が出るとは?
摩訶不思議よのう、人間とは。
疑念を抱く魔王に対し、畳み掛けるように上司は、ズイッと押し付けるように手に持っていた紙を、彼女へと手渡す。
「後で提出書類と一緒に、人事部へ持っていくので、それまでに書いておいてくださいね。」
「ああ・・・はい。」
今回だけ・・
今回だけ、甘えさせていただこう、うん。
しかしあくまで、今回だけ!
怠けは、人間、いや・・魔族をもダメにする。
魔王様、ブレないクソ真面目っぷりであった。
「ライザックさん、私の方でも申請書類があるので、あなたの身分証明書をご提出願えますか?」
「身分証明書?」
身分証明書?
あるような、無いような・・・
聞いたことがあるような、無いような・・・
悩む彼女に対し、横にいた同僚の男性が、ヒソヒソ声で話しかけてくる。
「アレだよエティシアさん! 入社の時に渡された水色の保険証とか・・。」
ああ、あの水色の板か?
アレが身分証明書だったのか。
それならば、もちろん!
ん・・・?
そういえば貰った後、どこへしまっただろうか?
「まさかシアさん・・・失くしたの!?」
途端にキラリと光る、上司の目。
おっそろしい地獄耳だ。
そして呆気にとられる、同僚たち。
マズい、今なら視線だけで優に死んでしまいそうです。
「とんでもない! 確か貰った後に、大事だからと机の中に・・・・」
ガチンッ!!
「「・・・・。」」
静まり返る、在庫管理部。
まるで物が挟まったように、魔王様の机はその口を固く閉ざした。
このクソ・・・貴様はあくまで私に抗うか!?
良い度胸である、そうであれば、こちらも徹底抗戦だ。
呼吸を整え、タイミングに合わせて机に掛ける手に力をこめる魔王。
「ぐ、おおおおおおおおおおお!!!!!!」
注目を浴びないよう、下手に魔法は使えない。
つまるところ、実力行使だ。
全神経、そして労力を総動員して、開かずの扉を突破するのである!
バッッカーーーーーーーーンンンン!!!!!
「どわっっ!??」
魔王が全神経を集中した力業は、引き出しを数メートル先の入り口のドアまで吹き飛ばした。
幸い人間には当たらなかったものの、机の中身が散らばり、室内は大惨事となってしまう。
あ~あ・・・。
「ら、ライザックさあぁーーーーーーーーーーーん!!!!」
「ご、ごめんなさーーーーーーい!!」
魔王様と上司の声がハモり、、同部の室内に木霊した・・・
◇◇◇
「ありました、健康保険証!!」
長い長い採掘作業の末。
やっとこさ掘り当てた、保険証。
ちなみに住民票等は、街へ入った際に魔力で操作して作っております。
あしからず。
「・・・そのために、机の中身をぶちまいたのは、少々頂けませんでしたね。」
キラリと光る、上司の目。
オーガ再来である。
「ごめんなさい。 以後気をつけます。」
「保険証は預かります。 仕事の手は止めてかまいませんので、あなたは散らばった資料を整理して下さい。」
机が開かなかった理由。
考えるまでも無い、頂く資料もらう紙、すべて無造作に机の中へ仕舞っていたのだ。
最近は開けることもめっきり減り、開きにくくなっていた事を、すっかり忘れてしまっていたのである。
その上で、まがりなりにも魔王が全力を出して開けたのだから、無事で済もうはずが無かった。
「いらない資料を選択して、それは廃棄するといいよ。 こういうのって、どんどん溜まっていっちゃうからね。」
食い入るように彼らのアドバイスを聞く、魔王。
魔王城では、使わないものは売り払ったり、物々交換に供したりしていたモノだ。
それと同じか。
だが魔王の瞳には、とっていたモノ全てが大切なもののように映った。
一体どれが捨てて良いもので、どれが駄目なモノなのやら、皆目見当もつかない。
エンストした車のように、動きを停止させた魔王の姿を前に、再び周りの者達が動き始める。
「今回は俺たちも手伝うよ。 こういうのって、明確な線引きは無いんだ。」
「そうなんですか?」
こういう事は、魔法で選別することは当然、出来ない。
いわば、『慣れ』などが重要である。
私のスキルは、まだまだ道半ば。
魔王は反省しつつ、散らばった資料の整理を開始した。
これからも、もっともっと精進しなければならないなァ・・・・。
なるべく誤字や変な箇所などが無いよう、時間をかけてチェックしながら投稿しているので、時間がかかっています。
投稿が遅れがちで、申し訳ございません。




