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第32話・魔王様、宴会に酔いしれる

これからも、楽しんで書いていこうと思います。

感想などがありましたら、ドンドンお寄せください!


ブライトのはずれにある、少しばかり名の売れている飲み屋。

そこは不夜城のように、毎夜あかりが漏れ、中からは喧騒に似た人の声などが漏れ聞こえてくる。

昼は定食屋として営業しており、賑やかな人々の声が聞こえない日は、全くと言っていいほど無い。

その人々の中には、仕事帰りの魔王様たちの姿があった。


「毎度大変よねー、あなたも。 あの上司に口うるさく怒鳴られてさ。 苦しくない??」


「いや、まあ・・・そうでもないが・・。」


ほのかに頬を赤く染め、ほろ酔いになった職場の先輩が、絡んでくる。

あの後も『ビール』という飲み物を、追加で次々に頼んだ彼ら。

ある者は机に突っ伏し、またある者は、泣いている。(酔いのせいで)

お互いで、愚痴を言い合っている者も居る。


まったくロレツが回っていないのだが、あれで果たして、話が通じているのか、大いに疑問だ。

他の職場の仲間達は、この女性1人以外は、一様に寝てしまっている。


「実に賑やかなものだな。 もう夜だというのに、誰1人として帰ろうとせん。」


「そりゃーそうよ。 皆ここで、息抜きをしているんだから。」


「息抜きか・・・・。」


それだけ、彼らには心身ともに、余裕があるのが分かる。

しかし当の自分は、どうしても心の底からこの宴会を、楽しむことが出来ない。

若い頃は、賑やかなのが存外、大好きだったのに、いつから変わってしまったのだろうか?

思いつめたように、塞ぎ込む魔王様。

それを見て、一緒になって飲んでいた先輩の女性は、先ほど追加注文した酒の入ったグラスを、彼女の前に差し出す。


「今は嫌なことは、忘れちゃいなさい。 毎日暗くなってたら、人生を損するわよ?」


「すまん。」


ゴキュゴキュと、中に入った酒を飲み干す。

飲むたびに体がポカポカと温まっていくのが分かる。

すこし、体が重い気がする。

最近は酒を飲んでいなかったせいで、自分も酔ってきたのかもしれない。


「・・ふーん?」


グラスを渡してきた先輩が、酩酊めいていしながらもこちらを、ジッと見つめてくる。

薄く開けられたその目は、今にもまぶたが落ちてしまいそうだ。

視点は定まらず、我の体全体を見通している様にも見える。


「どうした?」


「あなた、いい体してるわよねー。 あやかりたいわー。」


「な、なんだ急に!? 何のつもりだ!??」


顔を紅潮させ、自らの体を抱く魔王様。

彼女には、周りのこのような反応に、どうしても過敏となってしまう傾向がある。

だって、街を少し歩くだけで、周りからおかしな視線を向けられるのだもの。


「あはは、変なことを聞いてるんじゃないの。あなたとってもキレイなのに、見た目にあまり、気を配らないのかなーと思って。」


「なんだ、そういう事か・・・。」


「朝に髪型のことで、上司に怒られていたようだけど」と付け加える彼女。

今まで、そんなことはロクに、考えたこともなかった。

彼女に一体、何を語ったモノか。

我の過去なぞを、話して間もない彼女らに、話して聞かせても意味が無いだろう。

当たりさわりのない範囲で、答えるか・・。


「我は、この姿が大嫌いなのだ。 見てくれなどに、気をかけるつもりは無い。」


「そ、そうなの・・。」


一転して神妙な顔つきになる彼女。

持っていたジョッキを、テーブルに静かに置く。

中に残ったビールが、チャプンと揺れる。


「立ち入ったことを聞いて、ごめんなさい。 悪気は無かったの。」


「別に構わぬ。 それ位は分かっている。」


「・・・・。」


テーブルの上の串焼きへ、手を伸ばす魔王様。

ほお張っているその表情は、この上なく幸せそうだ。

・・・だが、先ほどまでアルコールで上機嫌だった女性は、すっかり酔いがめてしまっていた。


ふつう、女性で見た目が美しいと言われて、喜ばない者はいない。

その上で、彼女が発した言葉。

『我は、この姿が大嫌いなのだ。』

ここまでキッパリ、自分の姿がキライなどという言葉を、聞くことになるとは予想もしなかった。

そこから考えられる、見た目が嫌いだという、その理由。

以下、先輩の妄想である。


『ヘイヘイ彼女! お前の体は借金返済の担保になってんだよ。 財閥のドラ息子のめかけになれば借金を肩代わりしてくれるって話になっているんだ。』


『おやめくださいまし! ああ・・・!!』(※ライザックさん)


『ふははは、恨むなら親と、美しい自分を恨むんだな!!』


こんなところだろう。

違法な高利貸しはすぐに露見することになったが、哀れ、彼女の心には大きな傷が残る事になってしまった。

状況的に、借金したのは酒びたりの父親か?

なんと、おぞましい事件であろう。


「ライザックさん、頑張ってね! 私、応援してるわ!!」


「ん、ああ・・・・・?」


サスペンス小説の、読みすぎである。

別の意味で彼女はサスペンスそのものといった存在だが、その内容は全く違う。

こんな突飛な妄想をするのも、泥酔して、気持ちがヤラレている影響なのだろうか?

問題が起きないことを、切に願うしかない。


「すみませーん、こっちのテーブル、追加お願いできますかー?」


「はーい、何をお持ちしましょうか?」


「コレ2つ。 大至急。」


「分かりましたー。」


やって来た店員さんは注文をとると、急ぎ足で厨房へと引っ込んでいった。

また”ビール”とやらだろうか?

あまり飲むと、体にドクであろうに。


「お待たせしましたー。」


「早いの!??」


注文から数秒と経っていないのに、注文したモノが運ばれてきた。

運ばれてきたのは、グラスにこそ入っているモノの、飲み物では無く、食べ物であった。

コトコトと、我と彼女の前へ、それぞれ置かれる。

なんだ、このフシギな物体は??


「食後には甘い物! コレ基本でしょ??」


「甘味物!? これがか??」


ワイングラスにカラフルに彩られた、摩訶不思議な物体。

初めて見るソレに、魔王様の視線は釘付けになった。


「当店名物、『ブライトパフェ』です! ゆっくり味わって下さい!!」


魔王様の疑問に、鼻をふくらませた店員が答える。

あれほど推すということは、よっぽど美味いモノらしい。

しかしなんだろうか、この色とりどりの色彩は・・・。

たくさんの果実や白い物体が、グラス越しに垣間見える。


「あー最高! ほらライザックさんも、早く食べないと溶けちゃうわよ?」


「何!? それはイカン!!」


勿体無さから、確認もそこそこに、パフェを口へと運び込む魔王様。

彼女の口の中へ運ばれたパフェは、決してしつこくない甘さを広げ、ゆっくりと溶けていった。

頬を、りんごのように赤くさせる彼女。


「こ・・こんなモノが、世の中にあったとは・・・。」


「ん~~?」


「う、うまーーーーーーーーーーい!!!!」


感動。

まさに目からウロコ。

何だコレは、超絶ウマいぞ!!?

こんなウマいものは、生まれて初めて食べた。

無心に、パフェにバクつく魔王様。


それを先輩女性は、微笑ほほえましく見つめるのだった・・・




引越し作業などで忙しくなるため、次回の投稿は4月以降となる見込みです。

楽しみにされている方には大変恐縮ではございますが、何とぞよろしくお願いいたします。

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