第31話・魔王様、宴会を楽しむ
料理名などは、前回も同様に、分かりやすさ重視のために日本のソレと共通化しました。
ブライトは、とても大きな街だ。
大昔に行われた区画整理で、街は用途ごとに区分けされており、それぞれのブロックごとに発展している。
その一角。
街の外れのほうに、古くからのれんを下げている、有名な飲み屋があった。
「ご注文を確認させていただきます。 店長お任せコース6つに大ジョッキ12本、串焼き36本、以上でよろしいですか?」
新しく入った客に、注文確認を行う店員。
この客は6人組で、仕事帰りなのか、皆スーツを着込んでいる。
仲間内の慰労会だろうか?
そのうちの1人が、注文内容を肯定するように首を縦に振る。
「その他に何か、お勧めはありますか?」
「今日は飛鹿のもつ串が入っております。」
「じゃあ、それも6つお願い。」
「かしこまりました。 少々お待ち下さい。」
一礼して、厨房へ下がる店員。
テーブルを囲んだ6人組は、示し合わせたように、一様に会話を始めた。
その中の1人の女性は、どうしてか、顔色がよくない。
「どうしたの、ライザックさん? 気分でも悪いの??」
「あの・・・我は、その・・・金の持ち合わせがないのだが・・・。」
心苦しいといった風に、小さな声で自分の現況を語るエティシア=ライザック。
今回のこの慰労会の主役である。
彼女のこの告白に、顔を見合わせる5人。
「それなら気にしなくていいわ、だって今日は、あなたの歓迎会よ?」
「そうそう、君が入ってからまだ一度もこういう事していなかったんだし、楽しんでいけよ!」
「あ、ありがとう・・。」
なんか知らんが、金は心配ないらしい。
今まで会ってきた人間は、優しい者たちばかりだ。
そこからは、特に脅威は感じない。
セリアの事もあるし、もしかしたら、他の魔族たちが人間の街に来てそれぞれに生きるという道も、あるいは可能かもしれない。
当然それには、彼らの認識などの調教が必要不可欠ではあるが。
もしその時がきたら、魔王として、責任もって事に当たろう。
そうなると彼らにも、魔族への認識というモノを聞いてみたいな。
「あの・・・少し聞きたいことがあるのだが・・。」
「大ジョッキ12本、お待たせいたしましたー。」
「早っっ!??」
示し合わせたようにやって来た、先ほどの店員さん。
注文から、いくばくの時間が経っていないというのに、とてつもない早さだ。
『待ってました』とばかりに、彼らはテーブルに置かれた大ジョッキに、手を伸ばしていく。
その飲み物は、魔王様の前にもドンと置かれた。
「シラフじゃつまらないわ。 ライザックさんも飲んで、それから話しましょう。」
「おう・・・。」
大きなジョッキに入った、黄色の液体。
液面にはブクブクと、白い泡が立っている。
これは、飲み物なのか?
「かーうめぇ! 染み渡るーー!!」
「・・・(ゴクリ)」
周りを見渡してみると、店にいる人間達は皆一様に、このフシギな飲み物を、美味そうに飲んでいる。
彼らを魔法で調べると、そろって精神に一定の高揚感などが垣間見える。
そうか、つまりこの飲み物は、酒なのか。
こんなモノを飲むのは、いつぶりだろうか??
ゴキュゴキュ・・・
「ぶはっっ!?? な、なんだコレは!?」
口に入れた瞬間、飲み物が爆発したぞ!
魔法痕跡が、まったく確認できなかった。
こんなものを、美味そうに飲んでいるというのか?
人間、やはり理解に苦しむ生物だ!!
「ビールって言うんだよ。」
「ライザックさんは、もしかして炭酸系は初めてなの?」
「は・・、炭酸??」
炭酸飲料。
二酸化炭素が封入されている、アミューズメント要素の高い飲み物である。
(※作者視点による)
口内の爆発は、魔法現象などによる事象ではない。
「これは、そういう飲み物なのよ。 苦手なら他のを頼もうか?」
「・・・いや、問題ない・・。」
こちらは、おごってもらっている身。
我のせいで追加注文など、もってのほか。
ようは魔法で、爆発する原因を取り除けば良いのだ。
「む・・、うまい・・・のか?」
再び飲み物を口にすると、今度は苦虫を噛み潰したような顔をする魔王様。
ビールの炭酸抜き。
それは、甘さのまったく無いケーキを食うに等しい行為。
炭酸と一緒にアルコール分まで飛んでしまったため、酔いも回っては来ない。
より勿体無い行為をしでかした事に、彼女は幸か不幸か、気がつかなかった。
『店長お任せコース』の料理も運ばれてきたところで、大宴会の始まりだ。
酔いが回った彼らは、既に上機嫌になっており、そこかしこから笑い声が漏れる。
なんと賑やかな事か。
「そういえば何か、聞きたいことがあったんじゃないの?」
「いや、あれは・・・・何でもないのだ。 料理がなかなか来ないのでまだかと・・。」
「なぁんだ、ライザックさんって思ったより食いしん坊?」
せっかく、彼らがあんなに楽しそうにしているのだ。
今はそんな、辛気臭い話は、するものではない。
「なら、これも食えよ。 俺のお勧めなんだけど、マジうまいぞ!!」
「ああ、ありがとう。」
見るからに美味そうな、料理の数々。
そこかしこから聞こえてくる、楽しそうな笑い声。
このような事を、我が魔生で体験できようとは。
ああ・・・ダメだな。
この満たされたモノを、城に居る者たちにも分けたいと、どうしても考えてしまう。
自分で『辛気臭いのはイケない』と言っておきながら、このザマか。
こんな事では、魔王失格だ。
「どうしたの、ライザックさん。 ふさぎこんじゃって・・・」
「いや・・、何でもないのだ。 何でも・・・」
彼らのために、より一層、頑張ろう。
そう固く決意する、魔王様であった・・・・
話が長くなりすぎたので、二分割しました。
次話はなるべく早めに、投稿いたします。




