表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/100

第31話・魔王様、宴会を楽しむ


料理名などは、前回も同様に、分かりやすさ重視のために日本のソレと共通化しました。




ブライトは、とても大きな街だ。

大昔に行われた区画整理で、街は用途ごとに区分けされており、それぞれのブロックごとに発展している。

その一角。

街の外れのほうに、古くからのれんを下げている、有名な飲み屋があった。


「ご注文を確認させていただきます。 店長お任せコース6つに大ジョッキ12本、串焼き36本、以上でよろしいですか?」


新しく入った客に、注文確認を行う店員。

この客は6人組で、仕事帰りなのか、皆スーツを着込んでいる。

仲間内の慰労会いろうかいだろうか?

そのうちの1人が、注文内容を肯定するように首を縦に振る。


「その他に何か、お勧めはありますか?」


「今日は飛鹿のもつ串が入っております。」


「じゃあ、それも6つお願い。」


「かしこまりました。 少々お待ち下さい。」


一礼して、厨房へ下がる店員。

テーブルを囲んだ6人組は、示し合わせたように、一様に会話を始めた。

その中の1人の女性は、どうしてか、顔色がよくない。


「どうしたの、ライザックさん? 気分でも悪いの??」


「あの・・・我は、その・・・金の持ち合わせがないのだが・・・。」


心苦しいといった風に、小さな声で自分の現況を語るエティシア=ライザック。

今回のこの慰労会いろうかいの主役である。

彼女のこの告白に、顔を見合わせる5人。


「それなら気にしなくていいわ、だって今日は、あなたの歓迎会よ?」

「そうそう、君が入ってからまだ一度もこういう事していなかったんだし、楽しんでいけよ!」


「あ、ありがとう・・。」


なんか知らんが、金は心配ないらしい。

今まで会ってきた人間は、優しい者たちばかりだ。

そこからは、特に脅威は感じない。

セリアの事もあるし、もしかしたら、他の魔族たちが人間の街に来てそれぞれに生きるという道も、あるいは可能かもしれない。


当然それには、彼らの認識などの調教が必要不可欠ではあるが。

もしその時がきたら、魔王として、責任もって事に当たろう。

そうなると彼らにも、魔族への認識というモノを聞いてみたいな。


「あの・・・少し聞きたいことがあるのだが・・。」


「大ジョッキ12本、お待たせいたしましたー。」


「早っっ!??」


示し合わせたようにやって来た、先ほどの店員さん。

注文から、いくばくの時間が経っていないというのに、とてつもない早さだ。

『待ってました』とばかりに、彼らはテーブルに置かれた大ジョッキに、手を伸ばしていく。

その飲み物は、魔王様の前にもドンと置かれた。


「シラフじゃつまらないわ。 ライザックさんも飲んで、それから話しましょう。」


「おう・・・。」


大きなジョッキに入った、黄色の液体。

液面にはブクブクと、白い泡が立っている。

これは、飲み物なのか?


「かーうめぇ! 染み渡るーー!!」


「・・・(ゴクリ)」


周りを見渡してみると、店にいる人間達は皆一様に、このフシギな飲み物を、美味うまそうに飲んでいる。

彼らを魔法で調べると、そろって精神に一定の高揚感などが垣間見える。

そうか、つまりこの飲み物は、酒なのか。

こんなモノを飲むのは、いつぶりだろうか??

ゴキュゴキュ・・・


「ぶはっっ!?? な、なんだコレは!?」


口に入れた瞬間、飲み物が爆発したぞ!

魔法痕跡が、まったく確認できなかった。

こんなものを、美味そうに飲んでいるというのか?

人間、やはり理解に苦しむ生物だ!!


「ビールって言うんだよ。」


「ライザックさんは、もしかして炭酸系は初めてなの?」


「は・・、炭酸??」


炭酸飲料。

二酸化炭素が封入されている、アミューズメント要素の高い飲み物である。

(※作者視点による)

口内の爆発は、魔法現象などによる事象ではない。


「これは、そういう飲み物なのよ。 苦手なら他のを頼もうか?」


「・・・いや、問題ない・・。」


こちらは、おごってもらっている身。

我のせいで追加注文など、もってのほか。

ようは魔法で、爆発する原因を取り除けば良いのだ。


「む・・、うまい・・・のか?」


再び飲み物を口にすると、今度は苦虫を噛み潰したような顔をする魔王様。

ビールの炭酸抜き。

それは、甘さのまったく無いケーキを食うに等しい行為。

炭酸と一緒にアルコール分まで飛んでしまったため、酔いも回っては来ない。

より勿体無もったいない行為をしでかした事に、彼女は幸か不幸か、気がつかなかった。

『店長お任せコース』の料理も運ばれてきたところで、大宴会の始まりだ。

酔いが回った彼らは、既に上機嫌になっており、そこかしこから笑い声が漏れる。

なんと賑やかな事か。


「そういえば何か、聞きたいことがあったんじゃないの?」


「いや、あれは・・・・何でもないのだ。 料理がなかなか来ないのでまだかと・・。」


「なぁんだ、ライザックさんって思ったより食いしん坊?」


せっかく、彼らがあんなに楽しそうにしているのだ。

今はそんな、辛気臭い話は、するものではない。


「なら、これも食えよ。 俺のお勧めなんだけど、マジうまいぞ!!」


「ああ、ありがとう。」


見るからに美味そうな、料理の数々。

そこかしこから聞こえてくる、楽しそうな笑い声。

このような事を、我が魔生で体験できようとは。

ああ・・・ダメだな。

この満たされたモノを、城に居る者たちにも分けたいと、どうしても考えてしまう。

自分で『辛気臭いのはイケない』と言っておきながら、このザマか。

こんな事では、魔王失格だ。


「どうしたの、ライザックさん。 ふさぎこんじゃって・・・」


「いや・・、何でもないのだ。 何でも・・・」


彼らのために、より一層、頑張ろう。

そう固く決意する、魔王様であった・・・・




話が長くなりすぎたので、二分割しました。

次話はなるべく早めに、投稿いたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ