第22話・魔王様、とその他の皆様
当作品初の、3人称。
つまり、魔王様以外にスポットを当てた話となります。
※サブタイトルの句読点は、誤字ではありません。
私の名はセリア=リムール。
生まれも育ちも『ブライト』という、根っからの町娘です。
今まで城門の外など、学校の宿泊学習以外では行ったことなどありません。
幼少の時期からの夢は、『誰か素敵な方のお嫁さんになる事』
そのために私は、最近まで花嫁修業を頑張ってきました。
おかげで、パンにジャムをこぼさずに塗る事まで出来るようになったのです!!
人間、やれば出来ると、身をもって学ぶ事ができました。
・・しかしある日、私の母が病気で倒れてしまいます。
すぐに治療院に運んだため、大事に至ることはなかったものの、その治療のためには多額のお金が必要になりました。
家には、歳の離れた妹まで居ます。
こうなっては、花嫁修業などにうつつを抜かしている場合ではありません。
昔に通っていた学校の恩師などを頼り、私は人生初の『就職活動』というものを経験させられました。
ですがこれがまた、思ったとおりに行かない・・・・
なかなか私を雇ってくれる場所は、現れませんでした。
数日、数週間、数ヶ月・・・
そしてとうとう、先だって私は『ブレアンド商会』という大きな商社に就職することが決まったのです!!
商会から通知が来た時は、飛び上がってしまうほど嬉しい気持ちでいっぱいになりました。
妹も、一緒になって祝ってくれました。
ただ両親は、笑顔の中にやりきれなさが垣間見えたような・・・・・
ううん!
きっと2人は疲れているのでしょう。
これからは私が、頑張って働くので、2人はゆっくり休んで下さい!!
「どうしたセリアよ、何をニヤついておるのだ??」
「いいえ、何でもありません! それよりも私になんかに付き合っていただいて、ありがとうございます。」
「・・・かしこまらずとも良いと言うに。」
私同様に仮装を施した女性が、私に微笑を浮かべてきます。
現在、私の隣を歩いているのは、私と同じ商会に就職を果たした女性。
名をエティシアさんと言います。
パッと見た感じのプロポーションも抜群なのですが、なによりその物怖じしない豪傑な精神に、とても心惹かれます。
昔から周りは私を、『もっと積極的になるべきだ』と言われ続けてきました。
彼女はまさに、私の理想のすがたなのです!!
会ってから日は浅いですが、憧れてしまいます。
「実は私は、こういった仮装が昔から大好きで・・・でも誰も理解してくれなくて、自重してきたんです。」
「好きなことならば、周りの目など気にする事もなかろう。」
今日は、ハローン祭り第3夜。
今夜は街をあげて、土地神のハローン様を祝い、その一環として人々の装いは華やかに・・・
簡単に言えば『仮装』をします。
ですが私の知り合いには、これを恥ずかしがるヒトが多く、それが大好きな私としては、非常に肩身の狭い思いをしてきました。
ですが彼女に相談をすると、どんなバカバカしい内容であっても、真摯に答えを返してくれます。
はけ口のなかった悩みが、ウソのように解けていくのが、自分でも分かります。
「不思議ですね、今日お会いしたばかりだと言うのに、とってもあなたが身近に感じます。」
「ん、それは『おばあちゃん』とかいう輩の話か? 言っておくが呼ぶのは許可せぬぞ?」
「フフ、分かっています。」
彼女は私にあわせて嫌がることもなく、仮装をしています。
それも魔族の。
私が衣装を貸したのですが、なんだか私の『仮装』と比べて妙に様になっているというか・・・
まるで彼女が、本当の魔族のようにも見えます。
いえ、私も話だけで、実際にこの目で見たことがあるわけではないのですがね。
「おお? おいセリアよ、アレはなんじゃ!??」
「どれですか? 私に説明できるならば、何でもお答えします。」
話に聞く魔族とは、彼女は全然違います。
当然ですね、私は何をバカなことを考えているのでしょうか。
彼女はこの街に来たばかりのようです。
根っからの町娘として、ここは彼女にこの街の魅力である『ハローン祭り』を教授しなくてはいけないですね!!
これからの生活は困難を伴うでしょうが、とても楽しい日々を送っていけそうです。
◇◇◇
その頃、黒き魔族の森の中。
ぽつんと立つ魔王城の中はいつになく、緊張に包まれていた。
「私は魔王様を探しに出る事とした。 ときおり様子を見には来るので、皆はいさかいなど起こさずに、今までどおりに過ごすように!」
一人の初老の魔族の言葉に、各々(おのおの)からは、どよめきの声が上がる。
魔王様が、人間の街へ出稼ぎに行ってしまったことにより、魔族領に取り残される形となってしまった彼ら。
『絶対に付いてくるな』と言われはしたものの、やはり魔王様の身が心配であった。
特に付き人をしていた、エグラーと言う魔族は、これが顕著だ。
日がら1日中そわそわしっぱなしで、今までつつがなくこなしていた業務も、少々だがポカをしてしまっていた。
魔王様が出かけられて、早3日。
もはや、我慢の限界であった。
400年の貧困に耐えるのと、魔王様が3日不在なのは、事態の重みが違う。
「皆には迷惑を掛けるが、これまで通りの・・・」
「お待ち下さいエグラー様、あなたにまで行かれては、私どもは・・・!!」
「そうです、魔王様がご不在の間は、あなただけが頼りなのですよ!??」
「エグラー様、あなた様まで居なくなって、その後我々はどうすれば良いのですか!?」
だがその過程で魔族たちが反発するのは、無理もなかった。
魔族たちは、大戦で生き残れたのが弱者だった事もあり、得てして食糧確保などの外交面は、任せきりであった。
その役の2人が魔王城を出払われては、魔族たちはどうともしようがなくなってしまう。
方々から上がる不安の声は、そういった背景から来るモノであった。
「案ずる事はない、備蓄庫には食料が入っておる。 弱った病人や子供へ、優先して配るように。 これは魔王様直々のご意思である!!」
彼の言葉に、ざわめいていた魔族たちが一挙に静かになる。
『魔王様直々の勅命』を聞かされている最中は、無駄口をたたく事はできない。
そして自分たちに残されたという、優しき魔王の言葉。
魔王様の唯一の側近であるエグラー様が、ずっと取り乱していたのは当然。
金がないとか、食べる物が乏しいなど、どうでも良くなった。
人間世界は、敵地。
今のままでは出稼ぎに行かれた魔王様の身が危険だ!
・・・400年来の生粋の引きこもり魔族たちの総意は、すぐに固まりを見せた。
「エグラー様、魔王様をどうか、この魔王城へ連れ帰ってくださいませ。 我々は死のうとも、魔王様をお慕いいたす所存です!!」
この魔族のあげた声に呼応するように、我も我もと魔族たちは再度、魔王に忠誠を誓う。
それは波のように広がり、魔王城全体を震わせるまでの、大きな喧騒になった。
この光景を前に、満足そうに顔を縦に振るエグラー。
皆も自分の気持ちが、ようやく分かってくれたようである。
「では私は行くぞ!」
大手を振るって、天に向けて両手をかざす。
これから魔王様の下へ直接、転移をするのだ。
多大な魔力を消費してしまうが、1回ぐらいなら死ぬ事はない。
魔王様の魔力をたどれば、転移など造作もないこと・・・
「な・・・・、シア様の魔力がたどれないだと!??」
「「「「え・・・・?」」」」
ここに来て、緊急事態発生。
気配を消しているのか、魔力を魔法で偽装中なのか・・・
人間世界に赴いたはずの、魔王様の魔力をたどる事ができなかった。
もちろんコレでは、魔王様の下へ赴く事など、出来ようはずがない。
「そんなバカな、もっと気を練ればきっと・・・!!」
「「「「・・・・。」」」」
これには他の魔族たちも、あっけに取られてしまった。
エグラーはこめかみに指を当て、必死で魔王の所在の確認を急ぐ。
だが彼女の気配はカケラたりとも、見つけ出す事はかなわなかった。
要するに魔王様、行方不明である。
室内で放し飼いにしていたインコがある日、タマタマ開いていた窓から飛び出してそのまま帰らないのと、心境的に似ていた。
彼女はインコではないが、外の世界をロクに知らないという点では、ある意味似ていなくも無い。
それからは大騒ぎするもの、号泣するものなど、多種多様であったと、申し添えておく・・・
書き方を、改革した方が良いかもと思う今日この頃。
すぐに出来るような気は全くしないので、長期スパンの計画でやっていくつもりです。
目標、10年・・・。




