表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/100

第21話・魔王様、ハローン祭りに行く

これからも、頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!

「ふああぁぁ! 良い天気じゃ!!」


体を照りるける、まぶしい日差し。

先ほどまでの雨模様が、ウソのようだ。

シアは右手をおでこの上にあてがい、日差しによる、そのまぶしさを遮る。

足元の地面には水溜りがあり、未だそこかしこの地面が濡れている。

彼女は今、『ブレアンド商会』の玄関前に居る。

つい先ほど『制服の採寸』も無事終了し、今日のところはお開きと相成った。


という訳で、今日はまだ、時間が余りまくっている。

さて、どうするか・・

転移で魔族たちの状況を見に行くのも悪くは無いが、それは彼らに対して過敏すぎると言えよう。

我としても次に彼らと会うのは、稼いだ金を持った上でのことにしたい。

とすれば、今日は何をするか。


「あ、あの・・・」


「ん?」


思案にふける魔王様に、後ろから声を掛ける女性がいた。

怖気づいているのか、声は震え、妙に他所他所よそよそしい。


「なんじゃ貴様か。 どうかしたかの??」


赤目赤毛という、特徴的な見た目の小柄な女性。

たしか・・セリアとか言ったか?

なぜ呼び止めておきながら「すいません」と連呼して、頭を下げてくるのだろう。

これではまるで、起き上がり小法師だ。


「あの、もも、もしよろしければなんですけどどどど・・・・!!!」


「まあ落ち着け、まずは大きく息を吸って深呼吸するのじゃ。」


すーはー、すーはー。

かのののアドバイスに従い、何度か大きく深呼吸を繰り返すセリアさん。

その甲斐あってか、幾分、彼女の気分も落ち着きを見せる。

それを見て、満足げな表情を浮かべる魔王様。


「はあ・・・ふぅ、落ち着きました。 エティシアさんって、人の扱いに慣れていらっしゃるんですね?」


「・・・そうか?」


すっかり落ち着きを見せた彼女は、彼女へ尊敬に似た感情を向ける。

何度も言うが、我は人間が苦手である。

その感情は、『嫌い』というよりは『怖い』の方が近いだろう。

魔王という立場上、配下の魔族たちの悩みなどを聞くに当たり、彼らを『落ち着かせる』などの手腕が養われただけの事だ。

まあ今の言葉は、誉め言葉としてありがたく、頂戴しておこう。


「ところで我を呼び止めたりして、何か用事があったのではないのか??」


「そうでした! エティシアさん、お時間はありますか!?」


時間・・・?

『暇か』と聞いているのだろうか。

それならばちょうど、持て余していたところだ。

この街での労働以外の用事は、特に無いのだ。


「なんじゃ、なんぞ面白き事でもあるのか??」


魔王様の疑問の言葉に、途端にぱあぁっと顔を輝かせるセリア。

今までの陰鬱いんうつとした雰囲気は、そこにはみじんも感じられない。

・・一体、彼女は何を企んでいると言うのだろうか?

彼女に分からない程度に、警戒をする魔王様。


「ご存知かもしれませんが、今この街では『ハローン祭り』がもよおされているんですよ!!」


「ハローン祭り?」


そういえばこの街に我が入る際、門番がそんな事を言っていたな。

街をあげた、『収穫祭』なるものが開催されると。

そうか、アレは既にもよおされていたのか。

どうりで気の上で寝ている時、妙に騒がしいと思った。


「それでなんですけど、その・・・・」


「なんじゃ、はっきり申せ。」


「あの、もしよろしければ、ご一緒に祭りを見て回りませんか!?」


・・・ほう。

人間達の祭りを見るか。

なかなか面白そうであるな。

当然、興味はある。

先ほど申したとおり、時間もたっぷりあるのだ。

魔王様の答えは、決まっていた。


「よろしく頼むぞ。」


「はい! 一緒に楽しみましょう!!」


セリアさんは、満面の笑みを返す。

こうして魔王様は、エスコートされる事になった。



◇◇◇



「・・・なんじゃ、この格好は??」


「よくお似合いです、エティシアさん!!」


セリアという女性に自宅へと招かれたシアは、家の一室へと連れ込まれた。

入るなりシアは着ていたドレスを脱がされ、何かとトゲが多い冒険者のような服を着せられた。

彼女は『これからハローン祭りに行く』と言ったのに、これは一体どういうことだろうか??

何よりこの格好は・・・・


「これはですね、400年前に私たち人間を滅ぼそうとした魔族という極悪種族を模した、仮装なのです! エティシアさんの髪が黒かったので、似合うと思ったんですけど・・」


「・・・・。」


似合うどころか。

そもそも自分は、その魔族である。

紙で出来た赤黒い角と、コウモリのような翼がなんとも懐かしい。

コレなら、仮装なぞせずとも素で十分である。

・・とは、さすがに言えない。


「そうか、魔族か・・・魔族とはそんなにも嫌われておるのか?」


先ほどの彼女に、悪気は無い。

だが『魔族は極悪種族だ』というワードが魔王様の心には、深く突き刺さる。


「エティシアさんは大戦を知らないんですか? 400年前に魔族が世界を席巻せっかんしていた時代を・・・」


「・・・いや、それは知っておる。」


実際、先代の魔王時代はそうであった。

あの頃は、世界は恐怖に打ち震えておった。

問題なのは、現在進行形で魔族がどれほど嫌われているのか、ということ。


「有史以来、私たちの平和は魔族という種族によって、おびやかされてきたと言うのが、この世界における常識となっているんですよ。 多くの歴史書や童話に、そう記述されています。 今も森の奥には彼らは住んでおり、危険な存在であると教えられています。」


「・・・。」


分かってはいた。

実際、昔は大多数の魔族がそんな奴ばかりであった。

我の死んだ幼馴染もしかり・・・

だが我が魔王になって以来、そんな事は一切させてはいない。

人間にも善人と悪人が居るように、魔族にだって良いやからは多いのだ。

そうして好戦的だった輩は、ことごとく大戦で戦死した・・・

だがそんな事、人間達は知っていようはずもない。

シアは何とも、形容しがたいフクザツな感情にさいなまれる。

そんな彼女の気持ちはいざ知らず、話を続けるセリア。


「我々も400年以来、戦争もほとんどなく、その戦力は落ちてしまっていると聞きます。 もし今、魔族に攻められれば、甚大な被害が出る事でしょう。」


「・・・・そうなのか。」


『我々が人間の地を攻める』・・・

そうか、戦力が落ちたというのは、どちらの種族も同じ事だったのだな。

だが両者のいさかいは、考えていた以上に根強いよう。

魔族を統べる者として、こんな時、どんな事を言えばよいのだろうか?

彼女へ返す、返事が見当たらない。

口をつぐむシアに対し、「ですが」と話を続けるセリアさん。


「私が生まれてから、魔族が攻めてきたなどという話は一切聞きません。 いえ大戦以来、そのような事は一切無いと聞きます。 少なくとも私は、人間と亜人が同じように、魔族も仲良くなれるんじゃないか、って思ってます。」


「!!」


そう、それこそ我々が熱望している事だ!

魔族の住まう地は、総じて魔素も濃く、人間達が欲しがる様な素材が、ごまんとある。

主に魔石とか、マジックアイテム用の素材とか。

それらと食料を、人間との間で融通ゆうづうできればとは常々考えるところだった。

本当に、そうなれば良いのに。

だがそこにはまだ、立ちはだかる大きな壁があるようだ。

『潜在的な認識』というものは、そうすぐに塗り替えられるものではないのだから。。


「エティシアさんも、そうは思いませんか?」


「シアでい。」


「・・・え?」


「ところでハローン祭りには、まだ行かぬのか??」


「ああ、そうでした!! 私も着替えるので、ちょっと待ってていただけますか!??」


人間を怖がるのは、もはや時代遅れだ。

魔族を束ねる存在の責務として、まずは400年来のわだかまりを埋めていこうではないか!

今後の方針が決まり、自然とシアの表情からは、笑みがこぼれ落ちた。

まあ、我の『認識』を塗り替えるのにもまた、時間がかかりそうではあるな。



人間達は人間たちで、魔族は魔族たちでお互いの存在を、恐怖している様子。

それに逆行するように、平和を謳歌して、お互いに総力が落ちてしまったようです。

それが果たして良かったのか、それは分かりません・・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ