ー03ー「ヨマヨイ」
それから二日後のこと。
アリスのクラスに一人の転入生がやって来た。
「夜迷ステラです」
鮮やかな瓶覗色の髪に、黒縁のメガネ。
膝上まで長い紺一色のスカート、古風なセーラー服。
おそらく転校前の制服なのだろう。御令嬢のような佇まいに、アリスはしばらく見惚れていた。
「どうぞ、宜しくお願いします」
丁寧にお辞儀をすると、にっこりと微笑む。
「夜迷、お前の席は新居坂の隣な」
「げっ!?」
先生の言葉を聞いたカズミは、アリスの方を向いて小さく呟いた。
「オレ、ほんまにお前以外の女の子アカンねん、苦手やねん……」
顔を青くしてカタカタと震えるカズミは、最初のころから変わらない。
入学一日目のことだっただろうか。カズミはペンケースを拾い上げたアリスを見るや行き成り
廊下を飛び出して逃げ出し、おまけにそこの廊下にいた女子生徒たちと
ぶつかって悲鳴を上げていた。
今カズミが普通に接することのできる女子はアリスだけなのである。
「あの…」
「ヒッ!?」
いつのまに来たのだろうか、カズミの横の空席には既に夜迷が座っていた。
夜迷は首を傾げ、不安そうにカズミを見つめる。
黒縁の眼鏡の奥から覗くぱっちりとした眼を、少しばかり細めて心配そうに夜迷が尋ねる。
「大丈夫、ですか?」
「えっ!?あぁ、だだだだだだい、だいじょぶやで、だいじょーぶ……」
夜迷の視線に怯える小動物、カズミ。
「あの、私教科書が、届いてなくて。だから、一緒に見せて貰っても、いい?」
夜迷は長い横髪を眼鏡と一緒に耳に掛ける。そのまま優しく微笑んで、カズミを見た。
「もっもももも、モチロンや、構わへんでぇっ?」
慌てふためくカズミは、気持ちとは反対の目でアリスに助けを求める。
アリスはくすくすと笑い、少し経ってから利き手で親指を立てて「ドンマイ」と呟いた。




