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第2話「いつもの場所」

2話読んでくれてありがとう



 翌日。


 学校では、昨日と同じ一日が流れていた。


 吉塚柚須はいつも通り席に座り、いつも通り授業を受ける。


 ただ一つだけ違うのは、放課後が少しだけ楽しみになっていることだった。


 チャイムが鳴る。


 柚須は教科書をカバンにしまい、教室を出た。


 向かう先は、もう決まっている。


 博多駅。


 電車を降り、改札を抜ける。


 駅の中は今日も人で溢れていた。


 急ぐ人。


 立ち止まる人。


 誰もが自分の目的地へ向かっている。


 その流れの中を抜けていくと、少しだけ空気が変わる場所がある。


 ホームから上がった、IC専用改札の横。


 屋根付きの広場。


 そこにはベンチが並び、行き交う人の流れだけが静かに見えていた。


 発車ベルの音。


 アナウンス。


 ホームへ向かう足音。


 すべてが混ざっているのに、不思議と落ち着く。


 柚須がベンチに近づくと、すでにそこに人影があった。


「やっぱり来た。」


 福岡南だった。


「日課だから。」


 柚須はそう言って隣に座る。


 南は少し笑った。


「私も。」


 カバンからそれぞれ本を取り出す。


 同じ時間。


 同じ場所。


 ただ、読むものは違う。


 ページをめくる音だけが、間を埋めていく。


 特別な会話はない。


 けれど、その沈黙は気まずくなかった。


 人の流れを眺めながら、時間だけがゆっくり過ぎていく。


 しばらくして、南が本を閉じた。


「ねぇ。」


「うん?」


 少しだけ間を置いて、南は言った。


「ここさ、どう思う?」


 柚須は周りを見渡した。


 改札へ急ぐ人。


 ホームへ降りていく人。


 誰もが忙しそうに動いているのに、この場所だけは少し違って見えた。


「人は多いのに、落ち着く。」


「……うん。」


「一人でも平気だし、誰かといても邪魔にならない感じ。」


 南は小さく笑った。


「わかる。」


 その一言が、少しだけ嬉しかった。


 やがて夕方の光がガラス越しに差し込む。


 駅の中が少しだけオレンジ色になる。


 南が立ち上がった。


「そろそろ帰ろっか。」


「うん。」


 二人は並んで改札へ向かう。


 同じ方向ではない。


 ただ、ここまでは一緒だった。


 改札の前で立ち止まる。


 少しだけ沈黙。


「じゃあ。」


「また明日。」


 それだけ。


 けれど、その一言が自然になりつつあった。


 発車ベルが鳴る。


 人の流れが動き出す。


 柚須はホームへ向かい、南は別の方向へ歩いていく。


 振り返らない。


 けれど、また明日ここに来ることだけは、もうなんとなく分かっていた。

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