↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/67

第五十六話 罪の意識

「……。以上が、ダークエルフであった彼女、キュリエの末路です、テンペシア様。彼女は、暴走するほかなかったのでしょうか?暴走して、血肉を喰らうか死ぬか、どちらかしか未来はなかったのですか?」

「僕達竜神は、フェルンの施政に携わっていない、ダークエルフに関する情報も、キミと同等か、それ以下の知識しか持ち合わせていないんだろうね。……。ただ、そうだね。命とはいつか終わるもの、命とはいつか散っていくもの、僕達竜神が、それを何百万年と言う時間をかけて行っていく様に、君達妖精が数千年をかけて行っていく様に、竜人が数百年を、人間が数十年を掛けて逝く様に、それは変わらない輪廻だ。……。悲しい現実かも知れないね、僕達にとって、民の死と言うのは当たり前の事だ、隣人でなく、民草なのだから。……、僕も、君の気持がわからなくはないんだよ、外園君。」

「私の気持ち、とは……?」

「……。あれは、つい最近の事だ。つい最近、竜神はその種族としての個体数を、致命的に減らした。その理由を問われても、僕は答える事は出来ない、ただ、同胞だったはずの彼らが、決断を誤って決別をした、ある意味思想が暴走した結果、と言いかえる事が出来るだろうね。暴走とは、つまりそういう事なんだ。僕達竜神でさえ、決断を間違える事はある、決別の道を選ばざるを得ない事もある、僕達でさえ、神と呼ばれている僕達でさえ、過ちを犯す事はあるんだ。僕達は僕達の事を神だとは思っていない、僕達は、守護者であって神ではない、それはそうかもしれないけれど、仮にも神と名の付いた種族だ、そんな僕達でさえ、過ちを犯す事はあるんだよ、外園君。」

 キュリエの顛末を、私はテンペシア様に報告しに行った、死んでしまおうかと考えながら船に乗って、そしてドラグニートに戻ってきて、その事の顛末を報告していた、その時にテンペシア様は何かを考えていらっしゃった様子だった。

「そうだね、君は知る権利があるのかもしれない、世界の守護神の在り方を、この世界における守護神とは、いったいなんでどうやって生きていて、そして何を考えているのか。ならば、どうしてこの世界が出来た時からいたのに、フェルンと言う国にダークエルフという存在を許したのか。僕は五千年前に生まれたばかりだから、フェルンが創立してからの出自だ、そのことは知り得ない。……。デインも、その事は知らないのかもしれない、二千年前まで眠っていた彼には、それを知る権利が無かったのかもしれない、ただ、それでも逢う意味はあるんじゃいかな?」

「世界の、守護神……?」

「うん、世界の守護神、この世界が生まれてから八千年間を眠って過ごして、そしてこの二千年間、世界を見守り続けた、そんな守護神だよ。僕達竜神の祖である、初代竜神王から数えて、九代目竜神王の孫、初代竜神王から一千万年間続く、王の血脈の子孫、それが守護神デインだ。」

「その方ならば、私の疑問の答えを持っていらっしゃると……?」

「それはわからない、ただ、君が世界を守ると決めたのであれば、彼に会うだけの権利はあってしかるべきだろう、とは思うな。彼女を失ってから一か月、船の中で答えを出したんだろう?」

 答えを出した、それは私が世界を守る為に行動をする、という解の事だろう、私は、キュリエの言葉に従おうと考えた、打ち砕かれそうな感情の波の中、涙を流せなかったあの日の暮れに、私は世界を守る道を選んだ、それまでの人生が未来を告げる予言者だったのに対して、今度は明確に世界の滅びに対するカウンターになる、と言うのが、私の中で決めた事柄だった、決定事項だった、それが、キュリエの死を悼む為に、彼女の死に報いる為に必要な事だから、と。

 その為になるのであれば、世界の滅びが防げるのであれば、私がどうなったとて構わない、同士んだとしても構わない、ただ、世界を愛して死んでいった者達の為にも、私も私なりに世界を愛そうと決めただけだ、それがどんなにいびつな形だったとしても、それがどんなに歪んだ感情だったとしても、私は遺された者、遺された事には、遺されたなりの意味がある、そう考えなければ私はやっていけなかった、ならば自壊的に死んでしまおうか、と考えた末の決断だった、私は、死よりも守護を選んだ、キュリエの言葉に従う事を選んだ。

「……。私に、その権利があるのであれば。私に、世界を守る礎足らん権利があるのであれば、私はその道を歩みましょう。それが、私の中で決めたただ一つの意思決定なのです。……。小さい頃から、研究者気質と言われ、先生と言われ、私は、ゾキュペ村から出る事すらないのだ、と思っていました。そもそも、私は村の名すら知らなかった、無知蒙昧な子供だったのです。それが、ダークエルフであられるジェライセさんと出会い、そしてアンクウとして覚醒し、王家の都合で神官として働き、その都合でキュリエと出会い、そして彼女を殺めるに至った。……。それが、全ては準えられた事なのであれば、私は都合よく消費される運命だったのでしょう。ただ、私は明確に世界の滅びを予言しました、そして、それを防ぐ手立てを探していた、それも事実です。その時点で、私の運命は、誰かにとって与り知らぬ未来へと変わっていった、のかもしれません。……。ならば、私が生き残った意味、私がアンクウになった意味、私がキュリエと出会って、国を脱した意味、ならばそもそも、村が滅ばなければならなかった意味。それを知る為にも、私は世界を守る為に、私に出来る事をしなければならない、そう感じています。」

「動機がどうであれ、世界の事を想ってくれるその心があるのなら、僕達はそれを尊ぼう。デインに会う為の方法、について教えるから、そうだね……。まずはエレメントに行って、そしてエレメント中央広場にある、竜神の彫像、に向かうんだ。後は、彼が教えてくれると思うよ。」

「はい。……。テンペシア様、下賜していただいていた、キュリエのローブは、お返しします。」

「ううん、君が持っていてくれ。君にとって、それは大切なものだろう?彼女が消えた時、彼女の身に着けていたものは、全て消えてしまった、ローブを除いて、全ては還ってしまった。なら、形見としてそれを持っておくことくらい、許さないといけないと思うから。」

「ありがとうございます、それでは、私はエレメントへ向かわせていただきます。」

「気を付けて。」

 テンペシア様の神殿を出て、私は中央都市エレメントへ向かう為に、宿で一泊してから機関車に乗った。

 ずっとキュリエと一緒に乗っていた機関車、私には大きすぎた二人掛けの座席、誰かが乗ってくるわけでもなく、誰かと相席する訳でもなく、私は独りで、都市テンペシアから、中央都市エレメントへと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。