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聖獣達の鎮魂歌外伝~預言者の物語~  作者: 悠介


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第二十四話 職務

「貴方の役割はこの国に住まう者達の死の未来を視続け、私達に報告する事、それ以上でも、それ以下でもありません。わかりましたね?外園。」

「はい、女王。」

「では、ソルトレス、外園をアンクウの間へ。」

「はっ!」

 五十歳になった私は、上級魔法まで扱えるようになった私は、本格的にアンクウとしての職務に就く事になった、それは死の未来を視続け、それを王家に報告する事、それ以外の事をするな、考えるな、思考するな、王家にとって都合のいい傀儡であれ、それが女王の言い分だったのだろう、そして、王家としての総意だったのだろう、誰かがそれに反対する事も、誰がその事に声を上げる事も、無かった。

 私はと言うと、五十歳にもなれば身体的には成熟してくる、父が千歳だった頃、と同じ程度であり、エルフの中では高身長、身長が高い類だ、と言われる程度には、背が伸びていた。

 最初はダボダボで、袖もぶかぶかだった白いローブも、これ以上身長が伸びるのなら、袖丈が足りなくなってくる、そう言った程度には私は成長をしていた。

 髭が生えてきたらどうしようか、という事も考える程度には「第二次成長期」というものを過ぎて成長した私、声変わりもして、父によく似た声になった私を、彼らは認知できるのだろうか、今突然テイラット達にあって、彼らが私を認識出来るのか、ならば生きているかもしれないジェライセさんは、私を認識出来るのか、それ位には、私は変わっていた。

 性格としてはそうさな、思慮深くはなったかもしれない、あの頃の私は、碌に思考をしていないふりをして、その裏で色々と考えていた、表向きは無意識でやっている、という事にしておかないと、思想統制までされてしまいそうな勢いだった、私はフェルンの思惑に堕ちるつもりはなかった、ジェライセさんが勇気をもって告発してくれた、フェルンとダークエルフの歴史、そして、フェルン正史では語られていない、凄惨なフェルンの残虐な歴史、ウィザリアという平和だった島を「マナの源流をそこに移したから」という理由で、原住民だったエルフと人間の共存生活を破壊し、日独立国家の紛争地帯にまでしてしまった、という歴史もしっていた、だから、私はフェルン側の思惑通りに教育をされている訳ではなかった、ただ、それを誰かに言ったとて、それを信じてくれる存在は居なかっただろう、それだけ、フェルンにおける歴史の改竄は進んでいた。

 常識の違い、と言えば良いのだろうあか、私達真実を知っている者と、知らない者達の中で、「知らない者からしたら知らなくても問題がない」事で、「知ってしまったらフェルン側にとって不都合」な事実が、幾つもある、という事を私は認識していた、フェルンと言う、妖精の治める国の歪み、についても、私は気づいていた。

「外園、ここに入れ。」

「はい。」

 アンクウの間、と言われる、未来を視る為の機能が備わった空間、その為の魔力を神木から与えられているという儀式の間に、私は一日中居た。

 表向き、私は王家にとって従順なアンクウだった、それは私が逆らう気が無かったから、私が発狂しそうになりながら未来を視続けたのは、それが彼らに対する贖罪だと思っていたから。

 私には罰が必要で、誰かが罰してくれないのなら自分で自分を罰さなければならない、という自嘲気味た思考だった、それが表向きには「王家に従順」に思われていたのだろう。

 ただ、私が王家に従っていたのは自信を罰する為、それが贖いだと本気で思っていたから、当時は、国の外に出るという思考すらなかった、滅びを予言したあの日、アの滅びのヴィジョンは、私は王家には話していない、王家にとって都合の悪い事実を、私は王家へのカウンターとして持っていた、と言うと語弊がありそうだが、あの日視た滅びの予言、私が眠りに落ちて、悪夢の様に見続けている「聖獣の守護者達の死による世界の滅び」という予言、それをどうにかする術はないのだと思っていた、現状でも、どうにもならない事なのかもしれないとは思っている、ただ、こうして現在旅をして、何とかしようとしているという現状からは、とてもではないが考えられない生活を、当時は送っていた。

「……。」

 アンクウの間、神木の根元からほど近い、私の職場だった場所、マナに満ち溢れていて、私程度にはマナに耐性が無いと、「マナ酔い」という、酩酊状態に陥ってしまう場所、そこが私の仕事場だった。

 そこには魔力を効率的に扱う為に用意された特別な羊皮紙とペンがおいてあって、そこに死の未来を書き連ねて、それを王家の調査役に渡していく、それが私に与えられた役割だった、心が病んでしまいそうな、ともすれば病んでいたかもしれない、そんな日々を、私は合計五百五十年ほど過ごしていた。

 十歳から六百歳まで、王家の神殿で過ごし続けた私は、自戒的に外に出る事もしなかった、流石にそこまでの制限はされていなかった、警護の人間は必要だと言われていたが、ロザウェルの中を歩いて回ったり、他の妖精と交流を持つ事、自体は禁じられていなかった、ただ、私個人の感情として、それをしなかった。

 ただ、それをして教会の人間といざこざを起こすのも面倒だった、私が聞いていた歴史、王家と教会の対立の歴史、フェルンがそろそろ建国八千年という歴史を持つ古い国である中で、五千年前ほどに出来た勢力、王家ではなく、古い神木信仰を主だった行動原理とした「教会」、フェルン創立に当たって、国として体を為す為に必要とされて、当時は村単位で生活をしていたフェルン全体から選ばれた「王家」、その二つは歴史上、裏の顔として争いを続けていたらしい、私が子供の頃には、王家の話も教会の神木信仰も村にはあった、詰まるところ「折衷案」として王家と教会が互いにいがみ合っているのに気付かれないように、と教育に手を出していた、それがフェルンにおける教育の実体だ、とロイスはため息交じりに話をしてくれた覚えがある、これからお前をそこに突っ込まなければならない、俺にはそれを止める事も、何かを進言する事も許されていない、ロイスはそう言っていた覚えがある、ため息交じりに、私を心配してくれていたのだろう。

 私は王家側の存在として、王家と教会が取り合っていた「アンクウ」という、フェルンの裏の歴史の中で何度か現れた予言をする死神、死の未来を視る事が出来る「都合のいい存在」として、どちらかに所属する他無かった、先代のアンクウは教会に属していた、私は王家に属していた、アンクウとは、同時に存在していてはいけない存在、ある意味「先代アンクウの生まれ変わり」が私の持っている魂なのだろうか、とも言われていた、それ位には、何故か「一代一人だけ」「突発的に発生する後天的な種族」として、アンクウは位置づけされていた。

「さて……。」

 私は職務を全うするだけ、命を選別するわけでもなく、ただ未来を視続けるだけ、そうだと思っていた、私にはそれしか許されていないのだと、私に与えられた罰は、私が未来を視続ける事、私が死の未来を視続けて、いつか発狂死する事、それが私に与えらえた罰なのだ、と考えていた、私は本気でそう思っていた。

 ただ、運命と言うのは何処に何があるのか、どこでどう変遷していくのか、それはわからないものだ、私がフェルンを脱したのは百年前、私がフェルンを脱するきっかけを作ったのは、とあるダークエルフの少女、キュリエだった。

 彼女との出会い、ダークエルフの死の未来に関しては門外漢だった私が、彼女を連れて国を捨てた理由、ならばどうして「そこで国を捨てる覚悟をしたのか」については、少しばかり詳しい説明が必要になってくるだろう。

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