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聖獣達の鎮魂歌外伝~預言者の物語~  作者: 悠介


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第十二話 別れは唐突に

「疲れたじゃん、それに、あの人が言った事ってホントじゃん?」

「どうだろうねー?あたしたちの知ってる歴史とは全然違うからねー。」

「でも、大人の人に聞いたら、何処でそれを知ったんだ?って言われちゃうよ……?」

「はい、あのお話は今のところ私達だけの秘め事になるでしょう、私は明後日もジェライセさんの所に行こうと思っていますが、皆さんはどうしますか?私の個人的好奇心につき合わせるのは、少々気が引けるのですが。」

 ジェライセさんから、ダークエルフの歴史を聞いた次の日、いったん解散して家に帰った私達は、探検仲間の秘密基地で合流して、その話をしていた。

 ジェライセさんは、私達の護衛として、三日に一度同じ場所に同じ時間に来るから、そこに来るかどうかは君達に任せる、と言っていた、それだけ危険な事をしてでも伝えたかった事、私達妖精族と、ダークエルフの間を取り持って欲しかったのか、それとも別の意図があったのか、はたまたただ単に真実を教えたいという欲求だったのか、どういった意味合いでそれを行っていたのか、ならばダークエルフにとっては危険とも言われていた、神木へと近づく事、に寛容だった理由は、私はそれらの事を知らない、疑問に思う前に村を離れてしまって、それ以降あの村に立ち寄る事を許されていなかった私は、結果としてその時にジェライセさん達と袂を別った形になるだろう。

 ただ、それまでの数か月、といって、数か月しかなかった期間、私がアンクウとして覚醒するまでの数か月、私はジェライセさんや、他のダークエルフの方々から学び続けた、私に出来る事は何かがあるか、それとも何もないのか、それを確かめたくて、私達を助けてくれたジェライセさんに恩返しがしたくて、私は学び続けた、その頃には、探検仲間達と行動を共にする機会は減っていた、私一人がジェライセさんの元に学びに行き、三人はそのアリバイ作りに協力してくれる、それが私達の中で定番と言うべきか、決まり事担っていた。


「ジェライセさん、そちらの文章は?」

「ん、これはダークエルフの歴史に関する記述を、ダークエルフ側が記録したものだよ。私達に許されているのは、古代妖精語だけだった、発音や意味合いとしては君達と一緒だったのかもしれないけれど、言語、書き言葉としては違う、という意味合いだね。」

「翻訳をしていただいてもよろしいでしょうか?」

「構わないとも。」

 私は、彼らにアリバイ作りを任せて、三日に一度ジェライセさんと共にダークエルフの集落を訪れていた、途中からは、私一人で伺おうか、ダークエルフと神木の関係性を聞いた時に、ジェライセさんの身に危険がある、と知って独りで行こうかと提案をした事があったけれど、結果としてジェライセさんは私の護衛を最後まで果たしていた、私を心配して、と言うのは当然のことかもしれない、ジェライセさんと違って、魔物に対する対抗手段を持っていなかった私が、道中で死にでもしたら、そしてそれにダークエルフが関わっていると理解されてしまったら、当然のごとく「フェルン側に都合のいい歴史」として、ダークエルフがエルフを唆した、誘拐したと語るに決まっている、それをジェライセさんは理解していたのだろう、だから、危険と言われている神木に近づく行為、をしてでも私の護衛をしていた、が正解だろう。

 一か月もたたない内に道を覚えていた私としては、ジェライセさんの護衛は有難いと共に「窮屈」と感じなくもなかった、少しふらっと道を外れて探検がしたい、という探求心からしたら、護衛と言うのはどうしても煩わしくなってくる、という事だ。

「それで、そちらは……。」

 研究者気質だ、とは言われていた、父が学校で教鞭をとりながら、その傍らで研究を続けていた様に、私自身も研究者気質の妖精だ、とは認識していた。

 ただ、ジェライセさんンからしたら、たまたまか必然か助けた子供が、ここまで喰らい付いてくるとは思わなかった、と言った所だろう、実際に、ジェライセさんは私がその事柄に食いついて、教鞭をとっているみたいだ、と喜びながら驚いていた。

 朝食を食べて、探検仲間と一緒になって遊んでくる、と言って昼食を持って家を出て、ジェライセさんの元に「村の穴」から行って、ダークエルフの集落で日中を過ごして、そして夕暮れには村に戻る、そんな生活を私は繰り返していた、あの頃は学校というのがまだまだ体制としてしっかりしていなくて、別段いなかったとしてもいたとしても構わない、というスタンスだった、私達から興味を持った場合に学び舎に行く、が当たり前だった為、三日に一度いかなかったところで、誰かが怪しむ事もなかった。

 探検仲間、と言われていた私達が何処にいて、という詮索をされる事が無かった、三人は秘密を守る為に秘密基地にいてくれたけれど、大人が秘密基地に来る事もなかった、だから、私の行動が誰かにばれる事はなかった。

 それを良い事に、私は学び続けた、ダークエルフの歴史と、フェルンが伝聞してきた歴史の相違、どちらが正しくて、どちらが間違っているか、と言うのはわからなかったが、結果として、フェルン側の「都合のいい洗脳」からは解き放たれた、ただ、私一人がそうなった所で意味はなかった、国としてしている政策と、私個人の意見、では国の言っている事の方が正しいと思われてお終いだろう、と考えた私は、誰かにそれをいう訳ではなく、羊皮紙に書き留めて、それを部屋の勉強机の引き出し、鍵を掛けられる引き出しに閉まっておいた。

 いつの日か、誰かに伝え継ぐ日が来るのかもしれない、何千年というフェルンの歴史の中で生み出された不都合で都合のいい存在、であるダークエルフの迫害の歴史を終わらせる事が出来るかもしれない、私達があそこで魔物に襲われて命を落とさなかったのには意味がある、私達が生き残ったのにも、ジェライセさんがあそこに通りかかったのにも、きっと意味はある、と信じて、私は羊皮紙に書き留めていた、齟齬を、食い違いを、私達ににもわかる様に説明をしてくれたジェライセさんの言葉を信じて、私は書き留め続けた。


「それではジェライセさん、また三日後に。」

「あぁ、また三日後、ここで。」

「ありがとうございます。」

 別れは唐突に、などと歌った童謡があったと私はきいた事があった、私達妖精にとって歌とは踊りと共にあるもの、踊りがあって、歌があって、という順番だったと記憶している、「祈祷の舞」が踊りに変わり、そしてそこに誰かが歌を付けた、楽器をドラグニートから輸入して、独自に改良をして妖精族が使いやすい形に変えていった、そんな記述が残っていた、その中にあったのが、「別れは唐突に」というフレーズだった。

 私達妖精にとっては縁遠い、人間達の言葉だと思っていた、私達にとって別れとは「時々あるかもしれないけれど、生きている中で何度か出会うだけの事柄」だという認識だったからだ、私達にとって、出会いと別れと言うのは緩慢に訪れる事柄であって、人間の様に何十年という短い時間で起こる事ではない、と言うのが、当時の私の認識だった。

 そんな私が「別れは唐突に」を覚えている理由、それは。

 アンクウとして覚醒した日、どうして覚醒したのか、ならばどうして私だったのか、どうしてエルフであった私が素質を開花させてしまったのか、ならば、どうして未来視をするというアンクウに、死神という名がついているのか、どうして「覚醒した瞬間に暴走」をしたのか。

 わかっていない事は多い、私自身、私の能力に関しては不明な事が多い、王家が、教会が、と誰かが嘯いたとしても、それは眉唾な話で、私にとっては「もっと遠い、そして大きな存在」による何かではないか、とすら考えていた、竜神様であるテンペシア様が仰られていた「君は干渉された」という言葉、それの意味を知らずに、問う事も許されずに今ここにいる訳だが、その「干渉」の意味、ならば、私がアンクウとして覚醒したのも、その干渉があったからこそではないか、とも考えられる。

 全ては仕組まれていた事、ならば誰が仕組んだのか、私はその答えを知らない、テンペシア様が知っていたのかもしれないが、今となっては誰かに聞く事でもないとも思っている、だから、私の運命がどうで、何がどう操作されて、と言うのは、私の考察に過ぎない。

 私の考察に意味があるとも思えない、私はただ、未来を回避する為だけに動いている、私はただ、滅びの未来を視た者として、それを回避する為に動く義務がある、と考えて行動している、結果が変わらないのだとしても、それが変わらない滅びの未来だったのだとしても、私にそれを止める選択肢はない、私は、私の為に、そしてキュリエの為にも、世界の滅びを止めなければならないという、宿命があるのだから。

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