11話 探り合い
後日、手紙は無事にディアン伯爵令息まで届けられ、会って話せることになった。
「連絡によると、ディアン伯爵令息がサロンを取ってくださっているようです。」
「わかった、ありがとう。」
会うのが帰属と言っても初対面だし、念の為アイルも一緒だ。
指定されたサロンに着くと、既にディアン伯爵令息がいた。
「お初にお目にかかります。ディアン伯爵家が長男、シュレガートと申します。本日はお会いする機会を設けて下さり、感謝いたします。」
ディアン伯爵令息は、優雅に立ち上がり、また優雅に礼をした。
……花びらが、舞っているように見えるのは、俺の幻覚だろうか。
「こちらこそ、提案に答えて下さり、ありがとうございます。俺のことはリュシオンと呼んでいただいて構いませんので、お名前で呼ばせていただいても良いですか?」
「とんでもない。リュシオン様に名前を呼んでいただけるとは、光栄です。」
……なんか、キラキラしてんだよなぁ。
女子生徒に人気があるとは聞いたことあるけど、これならうなずけるな。
「さて、では初めに、普段より、私の妹が大変お世話になっております。特に、先日の件では、命を救ってくださったと聞きました。挨拶が遅くなってしまい申し訳ありません。本当にありがとうございました。」
「いえ、俺はその場で、自分にできることをしたまでです。」
丁寧な人だ。
今のところ、裏表があるようには見えないが、どうだろう。
「シュレガート様は、とても優秀な方とお聞きしましたが、現在四年生ということは、研究をされているのですよね。俺は、度々卒業生の論文を拝見しているのですが、良ければシュレガート様の研究について、お聞かせ願えますか?」
学園は基本的に五年制で、一から三年生は、授業と数回の野外活動。四年生は、独自の研究、五年生はフリー、という形式になっている。
ちなみに五年生は、他国を回ったり、四年生の時の研究を続けたり、授業を受けたり、色々できるらしい。
「ええ、私でよければ、ぜひ。私は、魔力の源についての研究をしているのですが、有力な説である肉体でなく、人格に魔力が宿るのではないか、と考えているのです。」
「なるほど。初めて聞きました。魂に魔力が宿るという説なら聞いたことがあるのですが。」
「はい。最近提唱されはじめてきたものですからね。魂の説は以前は有力視されていたのですが、魂の転生が証明されてから、あまり研究する人は多くないのです。」
……転生が証明されてるってよく考えるとすごいことだよな。
俺たちみたいに異世界転生の事例はまだ少ないけど。
「ということは、人格に魔力が宿るという説も、魂の転生に関係しているのですか?」
「ええ。転生した人物は、転生前と転生後で人格の統合、と呼ばれる作用が起こり、人格が多少変わってしまうのですが、転生前の記憶を取り戻す前と後で、魔力の質が変化した、という事案があるのです。」
へぇ、じゃあ俺とシアンもちょっと変わってたりするのかな。
「まあ、違う要因で変化した可能性も十分にあり得ますから、そこからはまだまだ研究不足ですね。」
「いえ、とても興味深い内容でした。お聞かせいただき、ありがとうございます。」
「そう言っていただけると嬉しい限りです。……リュシオン様、一つ、お聞きしたいことがあるのですが、よろしいですか?」
……なんだか急に、雰囲気が変わったな。
「ええ。答えられることなら、お答えします。」
「ありがとうございます。……リュシオン様は、私の妹のことを、サフィーリアのことをどうお考えですか。」
シュレガートは、より真っ直ぐに、俺を目を見て言った。
「……そうですね。成績を見たり、実際に関わってみて、かなり優秀な方だと感じました。特に頭の回転の速さや、駆け引きの上手さという点では、秀でていて、仕事も安心して任せられます。……ただ、あなたが俺に求める言葉が、これではないでしょう?」
俺は、シュレガートと目を合わせ、言った。
「そろそろお聞かせ願えませんか、シュレガート様。あなたの真意を。」




