8話 天才にとって sideパーシアン
「本当の意味でって……俺はもうお前の側近だろ。」
言っている意味がわかんねぇ。
「学園にいる間限定の、だろう?俺が言っているのは、その先のこと。学園を卒業してからも、俺の側近でいてくれないか、という提案だよ。」
……面倒なことになった。
つーか、どうすべきなんだこれ。いや、でもこのままいけば、フォーリアスが、アルシャリオと対立する構図ができあがるだろうし、側近になると、俺もそれに巻き込まれることになる。
それでもし、シオンがアルシャリオ側についたら……
「断る。」
「……どうしても?」
「嫌だ。」
「そっかー、じゃあ仕方ない……とはならないからね。」
……面倒くせぇ。
フォーリアスの笑みが一層嫌に見える。
「なんでそんなに俺にこだわるんだよ。年齢に関係ないなら、俺より優秀なやつぐらいいるだろ。」
そういうと、フォーリアスは、呆れた顔をした。
「君ほど優秀な人間なんて、そんなにいないんだよ。……まあ、でも君にこだわる理由、か。知りたい?」
「それは、まあ。」
「素直だなぁ。貸しを作る、とは考えないんだ。」
「……それならいい。」
「冗談だよ。」
……こいつ、遊びやがって。
怒りを露わにしようとしていた俺を気にせず、フォーリアスが話し始める。
「さて、話を戻そう。俺が最初に君の存在を意識したのは、天才がいる、そう聞いた時のことだった。」
天才……シオンのことか?
「そして、その天才には、双子の兄がいて、その兄の方も、生まれ持った才は、申し分ないものだったが、天才である弟には遠く及ばなかった。」
「いや待て、言い方が悪いだろ。それだと俺があいつに劣等感を持ってるみたいな……」
「知ってる人の大半は、そう思ってるよ、君の意志に関係なく、ね。まあ、そのリュシオンの才を知ってる人がそんなにいないっていうのはあるけどね。」
劣等感、そんなもの、感じることなんてないのに。
……仕方ないか。周りから見れば、それが普通なんだろうな。
「悪い、続けてくれ。」
フォーリアスは、その時、すこし不思議な顔をしていた気がする。
「……俺、さ。パーシアンが、というか、天才と呼ばれる兄弟がいる、それをどう考えているか、知りたかったんだ。」
……天才の兄弟、か。
「悪いね。本当に君に会って見るまではそういう印象が強くてね。実際の君は、全然そういう意識がないのにね。」
フォーリアスは、どこか遠くを見ているようだった。
「……天才、と呼ばれてきたんだ。側妃の子と言えど、ちゃんと母は上位貴族出身だし、他と比べて、魔法も勉強も、上達がはやくて。」
「……別に、優れているのは悪いことじゃねぇだろ。」
「うん。それはわかってる。でも、そのせいで数年前まで、俺はたくさんの人に囲まれていた。何度も何度も天才って言われ続けて、うんざりしてた。」
そういえば、シオンも昔、神官にやられてたな。
「でも、それは他から見れば、羨ましいものだったみたいでさ。……その時の俺は、きっとアルシャリオもそうなんだろうと思ってた。」
フォーリアスは、ふっと笑って言った。
「でもアルシャリオはさ、すごくまっすぐで、努力家で、俺が天才と言われようが、気にしてないんだなって、俺を、ただ、弟として、ライバルとして、見てくれていることがやっと、わかった。だから、ありがとう。二人には本当に感謝してる。」
「……ちゃんと話すのは、大切だよな。どんなこと考えてんのかは、聞かねぇとわかんねぇし。まあ、そのきっかけになれたんなら、よかったよ。」
フォーリアスは、ふっと笑った。
「やっぱり俺は、君に側近になってほしい。きっかけはただ、アルシャリオの気持ちをすこしでも知れたらってだけだったけど。優しくて、芯が強くて、守るべきものを、ちゃんと分かってる。そんな君と、俺は一緒に進んでみたい。」
……真剣なフォーリアスは、調子が狂う。
俺はすこしため息をついて、言った。
「わかったよ。だけど、お前の下につくことが、俺にとって、価値のあることだと思ったら、な。」
「そうか!」
フォーリアスは、予想していたよりも喜んでいた。
「あのなぁ……一応言っておくが、今の俺は、正直シオンと競うことになるっていうデメリットを背負ってまで、お前の側近になる気はないぞ。」
そう言うと、フォーリアスはふっと笑った。
「上等だよ。絶対に君の考えを変えてみせる。」
……ここまで強気なフォーリアスを見るのは、初めてかもしれない。
「ま、がんばれよ。」




