4話 第一王子、第二王子として sideフォーリアス
私の呪いが解けたあと、私はアルシャリオのことを、考えていた。
……まさか、私のことを、あんなに心配するとは思わなかった。
幼い頃から、私とアルシャリオは、王位継承権を争う座にいるとして、比べられて育ってきた。
しかし、私の母である側妃と、アルシャリオの母である、正妃は、元々は友人で、同じ男の妃になり、実質的に立場に優劣がついたとしても、それは変わらなかった。
だから、私とアルシャリオの仲もそこまで悪い訳ではなかった。
けれど、王位継承権がある以上、互いに競い合う存在である必要があった。
私には、勉学や魔法の才がある、と言えるだろうし、それを多くの人間にも言われてきた。
そして、私が王になるべきだ、と言う人間が、少なくないのも知っている。
けれど、私は、真に王になるべき器とは、アルシャリオのような、自分に厳しく、誰にでも等しく手を差し伸べる優しさのある人間だと思っている。
アルシャリオのそばにいたら、嫌でもわかる。
彼のような、必死に努力をする人間が、一番人に優しくなれるのだと。
だからこそ、私は、言うべきだと思った。
アルシャリオに、私は、王になる気がないのだと。
王には、貴方がなるべきなのだと。
改めて考えると、アルシャリオに、なんと切り出せばいいのかとわからず、そのまま、日は過ぎていった。
そして、今日のすこし前のこと。
生徒会室に行き、扉を開いた。
「ああ、フォーリアスか。今日はすこし早いのだな。」
部屋には、アルシャリオ一人だけだった。
「ああ、他にやりたいこともなかったからな。……いつもこんな早くに来ているのか?」
「そうだな。俺のここでの仕事は、生徒会長としての役割を果たすことだからな。それに、この仕事は、王子としての執務よりも楽しいんだ。」
「そうなのか?」
思ってもみない言葉に、私は少し驚きを隠せなかった。
「ああ、もちろん、王になる上では、執務をこなす方がためになる、とわかってはいるのだが……黙々と一人で作業をするよりも、直接生徒と関わり、その輪に加わって何かを作りあげる、というのは、とても良いことだと思うんだ。」
……こういうところなのだと思う。
アルシャリオが、王になるべきだ、と思うのは。
民と同じ視線に立ち、共感することが、普通にできてしまうのが、この人なのだ。
「……アルシャリオ。」
不意に名前を呼んだからか、アルシャリオは、不思議そうな顔をしていた。
「なんだ?」
「私は……王になる気はない。」
アルシャリオは、驚いたように目を丸くしたが、私は、話し続けた。
「陛下……父上にも、話すつもりだ。だが、先にお前に話しておいた方が、良いと思ったんだ。」
「待ってくれ、どうして、どうして、そんなことを言うんだ。俺は……」
「私は、お前が王になるべきだと思う。お前には、その器がある。私よりも、ずっと。」
「そんなことは無い!現に、お前が王になることを望んでいる人間だって、大勢いる!お前は、そんな人々の意見を知っていて、そんなことが言えるのか?」
アルシャリオが、珍しく、声を荒らげて言う。
「それは、ただの他人の意見にすぎないだろう?私の意思とは関係ない。」
自分でも驚くほど、鋭く、尖った声が出た。
「もういい!勝手にしろ!」
そう言って、アルシャリオは、部屋から出ていった。




