3話 兄弟喧嘩
前を向くと決めた。
千夜としてではなく、リュシオンとして生きる覚悟を決めて、もっと、新しい視点で周りを見れるようになったと思う。
……今の家族や王子たちとの関わり方も、考えないとなぁ。
今世の人生を考えるほど、前世の人生が、薄れてしまいそうな気がして、考えられなかったけれど。
今の俺を見てくれる、みんなのことを考えたいと思う。
特に、第一王子は、もう、かなりの時間を過ごした。
一緒にいればいるほど、そこが知れぬ努力をしてきた人だと思った。
魔法や頭脳の才能、というどうしようもない部分では、彼は、俺や第二王子に比べ、劣っている、と言えてしまうだろう。
ただ、それを賄うほどの努力と、洞察力の高さ、そして、優しさが、彼にはある。
まあ、それが彼の素なのかは、わからないけど。
俺も、彼と、向き合ってみよう。
今まで、見てこなかった分も、ちゃんと。
リュシオンとしての俺を、ちゃんと見てくれている人と。
そう、決意したはいいものの、第一王子に素とかほとんど見せたことないしな。
一番最初の親睦会の時に、ちょっと取り乱しちゃったぐらいで。
うーん。
「さっきからどうしたんだよ、シオン。」
シアンが、呆れた視線を送ってくる。
「いや、気づいたら放課後になってたから……第一王子とどうやって話そうかと。」
「今までも散々会話はしてきただろ。」
「だって、ちゃんと話すとなると別だし。あっちがちゃんと俺を見てくれてるんなら、俺もちゃんと話さないと失礼だし。」
「今までのことなかったことにすんなよ。」
……図星を刺された。
「う、いや、でも変わっただけ良しとして!」
一歩目が踏み出せなくて、シアンと、生徒会室の前で話していると。
「もういい!勝手にしろ!」
いきなり大声をあげながら、第一王子が生徒会室から飛び出してきた。
「「えっ!?」」
びっくりして声をあげたら、シアンと被った。
「っ!……リュシオン、パーシアン、来ていたのか。」
珍しい。随分、感情的になっているみたいだ。
「なにか、あったんですか。」
シアンが、第一王子に尋ねる。
「……すまない。すこし、一人にしてくれ。」
そう言って、第一王子は、去っていった。
「……とりあえず、入ってみるか?」
「そうだね。たぶん、第一王子がああなった原因もいるだろうし。」
俺は、そう言って、扉を開いた。
「失礼します。」
「ああ、パーシアン、リュシオン、一緒に来るとは、珍しいな。」
部屋にいたのは、第二王子だった。
「はい。……第一王子殿下と、何かあったんですか?」
第二王子は、肩を竦めて、シアンの問いに答えた。
「ああ、ちょっとした口喧嘩だ。大したことは無い。」
「……そうですか。」
どうやら、第二王子は、これ以上話す気はないらしい。
……でも、俺は。
「嘘、ですよね、第二王子殿下。」
俺がそういうと、第二王子が驚いた顔をして、こちらを見た。
「さっきから、ずっと、手がすこし震えてます。第一王子殿下も、感情的に行動する人ではないのに、あのような状態になっていた、ということは、大したことは無い、なんてこと、ありませんよね。」
「っ!!」
図星をつかれたように、第二王子は、俯いた。
そして、言った。
「……そうだ。すこし、じゃないか。かなり、アルシャリオと揉めてな。」
第二王子は、顔を上げ、俺たちを見て、話し始めた。
「話しておこう、どうせ、パーシアンとリュシオンにも、いずれ関係のあることになるのだから。」




