表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/82

2話 今と前

部屋に戻り、しばらくたった頃。


シアンの魔力を感じたかと思うと、部屋に魔法陣が浮かび上がり、シアンが現れた。


「あれ、シアン、どうしたの?」


「……あの日、帰ってきてから様子がおかしいから、しばらく、待とうと思ってた。でも、そろそろいいだろ。……何があったんだよ。お前のことだから、あいつのことなんだろうけど。」


その言葉に俺は、少し、表情を崩した。


「君も君で、相変わらず察しがいいよね。もう少し、待ってくれてもよかったんじゃない?」


その問いに、シアンは、答えてはくれなかった。


「……アンサローム様。第二王子に加護を与えている、神に会った。」


「ああ、それは聞いた。」


「うん。……その時に、満月(みつき)は、どこにいるのか教えて、って聞いたの。」


「…………」


シアンは、何も言わない。


私は、声を震わせながら、言葉を紡ぐ。


「……満月は、この世界には、いないんだって。」


自分で言いながら、自分で、声に出してしまうのも、言葉にしてしまうのも、とてつもなく、嫌だった。


認めたく、なかった。


「ずっと、死んで、転生してから、また君に出会ってから、この世界は、前の世界の続きなんだって、ずっと、思ってたんだ。」


言葉が、とめどなく溢れてくる。


「でも、違った。君はいても、満月はいない。」


「……シオン。」


「それでも、私は……」


「……リュシオン!!」


聞いたこともないくらい、鋭い、君の声が、部屋に響いた。


「もう、私を千夜(ちよ)とは、呼んでくれないんだね、惑星(あるせ)。」


君は、すこし、間を置いて、言った。


「お前は……千夜(ちよ)じゃない!俺だって、惑星(あるせ)じゃない!」


「今の俺とお前は、幼なじみじゃなくて、兄弟で、今のお前は、リュシオンは、満月に出会っていない。」


わかってる、わかってる。でも、それでも、俺は……


「あの時、千夜は、死んだんだ!恋人だった、満月を庇って。千夜の人生は、あの時、確かに終わったんだ。」


「それでも……それでも、私たちには、千夜として、惑星として、生きた記憶がある!それを、なかったことになんて、できない。君と、満月と、やり残したことが、いっぱいあるんだ。それを、諦めることなんて、私は……」


私の言葉を遮るように、君は、言った。


「そんなこと、わかってる!俺だって、お前がいきなり死んで、たくさんの日常も、約束もなくなって、諦められないものなんて、死ぬほどあるんだよ!」


「でも、俺たちは、生まれ変わって、新しい人生を生きてる。今の俺たちを、リュシオンとパーシアンという存在を、見ていてくれる人たちがいる。……だから、ちゃんと、前を向こう。前世に、区切りをつけて、一緒に、今を生きよう、シオン。」


……そっか。惑星も、一緒なんだ。

大切な人を失ったのも、大切な時間を、諦めきれないのも。


それでも、君は、前を向こうって、思えたんだね。

周りの、今の俺たちを、愛してくれる人たちに、気づけたんだよね。


顔を上げると、自分の目から、涙が溢れていることと、同時に、君の目にも、涙が浮かんでいることに、気づいた。


「……君は、変わらないな。いつも、俺たちより、周りを見ていて、いろんなことに気づいてる。」


満月に会えないのは、辛いけれど。前の、幸せな時間を、惜しまなくなるのは、怖いけれど。


「君に、シアンに、それだけ言わせたんだ。俺も、ちゃんと前を向かなきゃ。」


千夜の人生は、終わったんだ。

とっくに遅い自覚だけど。


「ちゃんと、リュシオンとして、生きるよ、この人生を。前の続きじゃなくて、今の俺として。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ