第32話 魔王来訪
霧の城・メデューサの部屋。
「カゲト様、ドーザさん。毒蛇の錠前は消えましたか?」
「ああ、消えたみたいだのう」
「そのようだ……」
「では、メデューサさんを蘇生します!」
「何だと!」
「やめろ……。エレーナ……」
エレーナがニコリと笑う。
「もう目的は達成しました。それに、お二人なら復活したメデューサさんに負けないでしょ?」
「それはそうだが――」
「心配いりません。しばらく反省してもらいますから」
メデューサの目に光が戻る。
「お嬢さん、助けてくれたの? ディアナの時のように?」
「ごめんなさい。私はディアナ様のように優しくはありません。ミュウミュウ、いい?」
「オッケー! バンバンいっちゃうよー!」
ミュウミュウが大斧を振りかぶる。エレーナが両目を押さえた。
「え? え? アタクシに何をするつもり? ウギャッ!」
メデューサの左腕、右足、左足が斬られていく。そして――。
「やめてえ! お願い! それだけはやめて―――!」
髪蛇がすべて刈り取られた。
「わざわざ生き返らせていたぶるのは、感心せぬな、嬢ちゃん」
ヘルザが首を振る。ヘルザが言う。
「違うわ、ドーザ。私たち蛇族は手足を斬られても、また生えてくるの。ここまでやれば1年はおとなしくするしかないわ。牢屋に入れるより安心よ」
「後は、これを掛けていてくださいねー。石化光線は危ないですから」
エレーナは黒色眼鏡をメデューサに掛けた。
霧の城・城内にゴーン、ゴーンと鐘の音が鳴り響く。
ヘルザが慌てる。
「魔王様が来たわ!」
俺はミュウミュウの肩を借りて立ち上がる。
「誓約書はお前の手柄だ、ドーザ。俺たちは行く」
「ああ、洞窟の借りは確かに返してもらった――魔王軍に残る気はないのか? カールを倒すのなら、残った方が都合が良いと思うがのう」
「カール以外の人間も大量に殺すことになる。それはごめんだ。そうだろ? エレーナ」
エレーナを見るとうれしそうな目で見つめ返してきた。
「ドーザ、友として聞いてもらいたい願いが二つある」
「聞こう」
「一つは魔王が帰った後、誓約書をリーンハルトにも見せて欲しい。それで、カールは反乱軍になる。リーンハルトには俺から話を通しておく」
「願ってもないことだ。人間どもが内輪もめをすれば魔王軍が有利になる」
「もう一つは、隠れて魔王を一目見たい。ゴブリンになる前、人生を賭けた目標だった」
ドーザは黙り込んだ。
ヘルザがフォローするように言う。
「カゲト、ドーザは新四天王になる魔物よ。魔王様への忠誠心も高い。だから、うなずくわけにはいかないわ。だから、私が隠れて見れる場所へ案内する。ドーザ、少しだけよそ見してくれる?」
―――――――――――
「出迎えに来ずに、どうしたんだい? へえ、これは――」
魔王がマントをひるがえして、メデューサの部屋に入ってきた。
「恐ろしい姿だと思ってましたが、何だか素敵な方ですね」
「お兄ちゃんだったら、勝っちゃうんじゃない?」
体中に鳥肌が立つ。
馬鹿野郎! この部屋全体、いや城さえ覆うような闘気に気づかないのか。
それに――。
「エレーナ、あの顔に見覚えがあるだろう? 何ども見ているはずだ」
「私のお知り合いにはいないと思いますけど……」
「知り合いじゃない、どこの街にもある勇者の銅像だ」
「そういえば、そっくりです!」
「50年前に魔王を倒した男。そして俺が子供のころから目指し続けていた男だ」




