第31話 メデューサ視点②
霧の城・メデューサの部屋。
ミュウミュウとエレーナを相手にしている私は、ヘルザが何をしているかわからない。
石化を解いたドビアスに命令する。
「私はいったい……。はっ! 大丈夫ですか、ボス!」
「援護はいいです! ドーザの後ろを確認しなさい!」
ドビアスがドーザの後ろをのぞき込む。
カゲトが叫んだ。
「ドーザ! ドビアスを殺すなよ。大事な証人だ」
今度はドビアスが叫ぶ。
「ボス! ヘルザは書類棚を漁っています!」
証人? 書類? まさか――。
「ドビアァァス! 城中の魔物を集めなさい!」
「今は魔王様を迎える準備中です。それに大勢をここに入れてしまうと、もしものことが――」
ドビアスが目線を送る。次の瞬間、ドーザの尾に殴られてドビアスは失神させられてしまった。
こうなれば、二人を急いで倒すしかない。しかし、決め手が無い。弱いエレーナを狙いたいところだが――。
ビシィッ!
エレーナを狙う鞭の先にはいつもカゲトが立っていた。
「もう鎧がボロボロです。カゲト様にヒールをかけます!」
「ダメだ! ヒールを無駄打ちするな!」
書類棚からヘルザの声がする。
「カゲト! どこを探しても見つからない!」
「もう一度探せ! あきらめるな!」
「残念ね、カゲト。あなたが探しているものは存在なんかしてないの! つまり無駄なの。お嬢さんたちにしてもそう。驚くほど強くなったけど、アタクシには勝てない。わかったら膝を折り、屈しなさい! カゲトだけは絶対に許しませんけど――――――!」
「ヘルザさん! ドビアスさんが気を失う前に蛇の石像を見ていました。調べてください!」
「わかったわ!」
あのアマぁ!
「仕掛けがあったわ! 鍵を開ける呪文が必要みたい!」
「ミュウミュウ! 少しだけ一人で耐えられる?」
「任せといて! お姉ちゃん」
エレーナは石像の前に移動すると詠唱を始めた。
なぜ鍵になる呪文を知っている! あれは一部のものしか知らないはず!
「石板が手の形に光っています。これは」
「合わせてみろ!」
「反応しません! もしかすると、ここに当てなければいけない手は――」
エレーナたちがこちらを見た。
「セ・イ・カ・イ♥ だーかーら、アナタたちには一生開くことができないの、よっ!」
鞭で弾き飛ばしたミュウミュウが床にうずくまる。
これで、残るはエレーナだけ。
「私の勝利ですわ! これで終わりよ、下請さん。ホーホッホホ!」
「カゲト様!」「カゲト!」「お兄ちゃん……」「おぬし!」
絶望の表情。たまらないわ。カゲト、アナタもそうでしょ?
カゲトが腰を落として構える。
「みんな集中を切らすなよ!」
「前にどうなったか忘れたのですか? アナタ、馬鹿ですかぁ! 無能ですかぁ!」
躊躇せずにカゲトは剣を振り下ろし――そのまま倒れた。
毒蛇の錠前が発動し、麻痺させたのだ。
「カゲト様!」
だが――手放した剣はそのまま向かってきて、鞭を持っていたアタクシの右手を肘から切り離した。
「下請けえぇぇぇっ!!!」
「残念だったな……。剣はお前の下請けじゃない……」
宙に舞う右手をヘルザがキャッチする。
「後は任せて!」
ヘルザが千切れた右手を石板に当てると、ガコンっという音ともに石像が動いた。
あそこには、カールとの誓約書が!
「やめなさい、ヘルザ!」
「あきらめるんだな、ボス……」
震える手が私の足首を掴んでいた。
離せ! 離せ! 離せえぇぇ!
「あったわ、カゲト! カールとの誓約書!」
「よし……。ミュウミュウ、メデューサをぶちのめせるか?」
「もっちろん!」
しまった。エレーナに治癒させる時間を与えてしまった! 迎え撃たなくては!
右腕を振る――しかし、腕の先には右手も鞭も無かった。
ミュウミュウが大斧を振り上げて迫ってくる。
「ああ……。何で、何で下請けなんかにぃぃぃ!」
次の瞬間、アタクシは血をまき散らしながら、天井に叩きつけられた。




