第29話 同時作戦
霧の城・門前
「やったあ! ワンちゃんに初めて勝ったあ! これで1勝50敗だね!」
「……まぐれだ。アバズレ」
「強くなったわね。もうヘトヘト」
「キューン、キューン!」
ケルベロスが倒れ込むと、ミュウミュウもヒザをついた。エリーナが肩で息をしている。
「良くやった。二人とも」
ドーザが小声でささやく。
「ボスはケルベロスより強い。きわどい戦いになりそうだのう」
「二人とも短期間でSランクの力をつけた。これ以上は望むのは贅沢だ。後は俺たちがフォローするしかない」
「私のほうさっぱりだわ。ごめんない」
ヘルザが申し訳なさそうに言った。
魔王の視察が近づくにつれ、メデューサは部屋から出ることは無くなり、ドビアス以外の出入りを禁止したのだ。だから、ヘルザはまだ何も見つけられていなかった。
「わしの焼却炉のところにも大量の書類が持ち込まれておる。魔王様に疑われそうなものはすべて燃やす勢いだ」
宿舎に戻り、みなに作戦を伝えた。
「メデューサを確実に倒せるかはわからない。誓約書が見つかる可能性も低い。だが、二つの作戦を合わせれば勝算はある」
「合わせるって、どういうこと?」
「同時にやる」
――――――――――――――
魔王の視察当日。霧の城の魔物はみな忙しく働いていた。
宿舎では俺、エレーナ、ヘルザ、ドーザが緊張の面持ちで、コップを持っていた。ミュウミュウがコップにミルクをそそぐ。
「はい、モウモウママから届いた特製ミルクだよー」
全員にそそぎおわると俺は言った。
「この戦いで、ドーザは四天王、ヘルザは室長、そして俺とエレーナとミュウミュウは自由を手に入れる。絶対勝つぞ!」
「おう!」「ええ!」「はい!」「うん!」
全員が一気に飲み干すと、コップを床に投げつけて割った。
体の周りを薄い光の膜が覆う。
ナーガが動き周っている作戦室を抜け、メデューサの部屋へと続く階段を昇っていく。
部屋の前にはドビアスが立っていた。
「おい! 貴様ら何をしている。早く持ち場に戻れ!」
「ドーザ、メデューサへの殺意だけは出すなよ。毒蛇の錠前が発動する」
「ああ、麻痺はゴメンだ」
ドーザは尻尾を大きく振り上げると、トビアスが慌てた。
「お、おい。焼却係の分際で何をするつもりだ!」
「ノックだ。少し荒っぽいがのう」
ドビアスは尻尾を振り下ろすと、ドビアスの体は扉をぶち破って、部屋の中へ飛んでいった。




