第28話 降格
霧の城に戻ってから、数日後。
宿舎に作戦室副長のヘルザが酒を持ってきた。
「見て、このデータ。魔王軍の領地が40%から45%まで上がったわよ! カゲトたちって凄い強さなのね」
「いや、ヘルザの調査が正しかったからだ。カールの兵は弱かった」
「カゲトのおかげで、あのハゲ室長の鼻を明かせてやれたわ。乾杯しましょう!」
「ああ、ヘルザと知性に」
「カゲト、ミュウミュウ、ドーザの強さに」
「「「乾杯!」」」
――――――――――――――――――
次の日、作戦室ではヘルザと室長のドビアスが口論していた。
ハゲ頭だけが石化していた。間違いなくメデューサのおしおきだ。
「なぜ、降格なんです? 昇格の間違いじゃないんですか? 私の分析は正しかった!」
「現地にいる魔物が襲っただけで、魔王軍の領土が増えるわけがないだろう!」
「それは、ランベルト領の兵が弱いから――」
「いいや、違うな。貴様がオークの群れを動かしたに決まっている。何しろ実際にオークに指示を出している貴様だからなあぁ! 私に頭脳で負けるのがくやしかったんだろう? 女の浅知恵だ。女の陰湿な嫌がらせは怖い、怖い」
「じゃあ、リーンハルト領に向かっているオークの群れの位置を調べてください。移動距離をみれば、あの日にランベルト領にいないことがわります」
「どうせ寝させずに、走らせたんだろうが! あーかわいそうな、オークたち。ヘルザ、作戦を変えたことを謝罪しろ。今ならまだ許してやってもいい」
ドビアスはヘルザのお尻を撫でるが、ヘルザが払いのけた。
「謝りません!」
「――可愛げのない女め。そうでもしないと、ありえないんだよ! あんなことは!」
「なぜ、そう言い切れるのです? 敵と打ち合わせでもしていたんですか?」
「ひ、人と打ち合わせなど、するわけないだろうが! とにかく貴様は降格! 降格! こーかーく!! 今日中に端の席に移動しろ。いいな!」
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その日の晩、ヘルザが再び酒を持ってやってきた。
「カゲトー! 今日も飲むぞー!」
「もう、ずいぶん飲んでるだろ?」
「飲まなきゃやってられませんってーの! 明日からはCランクの仕事よ。そんなもん酔っててもできるっちゅーの。私もめでたく、あなたたちリストラ候補の仲間入りね」
「よし、とことん飲もう! ドーザやミュウミュウも付き合え」
……………。
「なによー、ドラゴンも牛も弱いわね。だらしない」
「お前が飲ませすぎたんだ」
「なによー。なくさめてくれるんじゃないの? チューしよ、チュー」
「ちょっと待て。んぐ……」
酒乱なのか? 普段の堅物イメージとまったく違う。
ヘルザの唇を離す。
「ハゲ室長を懲らしめたいと思わないか?」
「それができたらしてるっちゅーの! ボスもアイツの味方だし、どうにもできないわ」
「なら、その上に訴えればいい。もうすぐ魔王がくるんだろ?」
「来月にご視察に来られるわ」
ヘルザが近づけていた顔を離し、眼鏡を直す。
「――まさか? 魔王様に訴えるつもり!」
「そうだ。メデューサとカールは繋がっている。その証拠を示せば、メデューサとドビアスはクビだ。だが、作戦室を探し回ったが、そんな書類は無かった。何か知らないか?」
「――水を頂戴。酔った頭じゃ、何も出てこないわ」
ドーザを叩き起こすと、地下水を汲んできてもらった。
「ボスと人間が裏で組んでいたとしても、完全に信用しあっているとは思えない。誓約書をお互いに持っているはずよ。極秘案件だから誓約書はボスの部屋でしょうね」
「魔王が来る前に何とか入手できないか? 上手く行けば副室長復帰どころか室長にもなれる」
「やる価値はありそうね」
ギイーッ。
宿舎の扉が開く音がすると、室内に緊張が走った。
「誰だ!」
話を聞かれていたなら、殺さなければならない。
「ただいま、みんな!」
「「「エリーナ!」」」




