第27話 女魔法使いアデリナ視点③
教会の外で、エレーナがディアナのつぶやいていた詠唱を紙に書いていた。
「直接、ディアナに聞けばいいじゃない?」
「無理です。あの神像から地下へ通じる通路は、大司祭マリウス様とディアナ様しか使うことを許されていません。私が存在を知ったのも最近のことです」
「地下には何があると思う?」
「メデューサとカールの繋がりを示す証拠です。カゲト様も霧の城で探しています」
「繋がりを示す証拠……。変わった戦いをするのね。ディアナのことを信じているのも嘘?」
「Sランクになるには、ディアナ様に指導を受けなくてはいけませんから」
この女、見た目と違い強い。
「Sランクになったら、カゲトの元に戻るの?」
「はい。カゲト様を助け、人も魔物も助けます。強くなった治癒の力で」
「そんなことが――」
できるわけがない。そう言おうとしてやめた。
この子は世界を救おうなど考えていない。目の前の者を救うことだけ考えている。
「エレーナのおかげで迷いが消えたわ。私も自分の思う通り生きることにする」
人も魔物も関係ない。ムカつくやつを倒していく。
エレーナを見習え、力が無くてもできることはある。
「カゲトに伝えて。仲間にはならない。だけど、カールを倒すのには協力するって。それと、あなたには迷いを払ってくれたお礼をあげる」
スクロールをエレーナに渡す。
「私のいる場所へ飛んで来れる移動呪文よ。困ったことがあったらいつでも来て」
――――――――――――――
森の中を歩いていく。
カールはカゲトより弱くてもSSランクの守護者だ。パーティーを組んで戦わないと。まず負けるだろう。
昔の冒険者仲間に声をかけてみるか? でも、Sランクは好待遇でカールに雇われている。逆にカールに漏れる危険性のほうが大きい。
「一人ずつ、不満を持っていそうな冒険者を探すしかないわね。時間がかかりそうだわ」
ため息をついていると、森の中からゴブリンが10匹ほど飛び出してきた。
私は驚いき、そして苦笑する。
カゲトはゴブリンだったが、あれは特別中の特別で、普通のゴブリンは雑魚中の雑魚だ。
「邪魔するなら、殺すわよ」
そう言いながら、3匹のコブリンを焼いた。
意外だったのは、残りのゴブリンは襲い掛かりもせず、逃げ出しもせずにいたことだ。統制が取れている。
「ゴブリンロードがいるわね」
頭上から声が聞こえる。
「ハッハハハ! 頭のいいメスだな、オイ! 俺様の見込み通りだ」
見上げると小さな崖の上にゴブリンロードらしき魔物がいた。
「なあ、俺様の師匠になってくれよ」
「魔物に物を教える? 馬鹿じゃないの。私が人に見えないのかしら?」
「ああ、見えないねえ。知ってるぜえ。人を何人も焼いていたのを」
ゴブリンロードが焼けた人の腕をかじる。
「おめえが焼いた農奴だ。いいローストだ。料理人のセンスもある。だが、同族を焼いちゃあいけねえな。ゴブリンでもそんなこたあしねえ」
「貴様!」
「冷酷で賢い。俺が求めていたメスだ」
「人がゴブリンと組むなどありえない」
「俺様もそう思っていたさ。人のオスは喰らい、メスは死ぬまで腹ませるものってな。だが、ノッポってやつは違った。人のメスを育て、自分の味方にしていた」
頭にカゲトとエリーナがよぎる。知り合いなのか?
「逆もあっていいんじゃねえかと俺様は思っている。これは取引だ。俺様を賢くしろ。代わりに手下を自由に使っていい。ゴブリンは弱えが、集団で戦うこともできるし、盗みはお手のもんだ」
「何匹いる?」
「やるねえ。伏兵に気づいたか? 信頼の証を見せてやる」
ゴブリンロードが角笛を吹くと、崖の上に大勢のゴブリンが現れた。
1000匹はいるだろうか。このゴブリンを上手く利用すれば、カールを倒せるかもしれない。
「私はアデリナ。次にメス呼ばわりしたら殺すわよ」
「歓迎するぜ。俺様はモヒカン。ゴブリンキングを目指す男だ」




