どうせ死ぬから
こういうの初心者なのでいろいろ粗末なのは許してください!
「はい、みなさん!
この服に着替えて、訓練場に集まってください!」
孤児院のテーブルには、兵士の制服が置かれていた。
それに着替え、訓練場へ向かう……そのはずだった。
---
「ユウキ! 起きて! 遅刻する!」
「そうだぞ、ユウキ! 遅刻するぞ……って、だめだ、起きない。先に行くか……?」
リーチャとエリックは、いつまでたっても起きないユウキを必死に起こしていた。
昨日はあれほど気合いを入れていたのに……。
一同は、そんなことを思っていた。
「先に行くって……エリック、ユウキを置いていくの? 4人一緒じゃなかったの……?」
エルダはわざと、エリックにそう問いかけた。
「そりゃ、置いていきたくはないさ。でも、それじゃあ俺たちまで遅刻してしまう……」
エリックは真に受け、深刻そうな顔で答えた。
「ユウキーーーー! 起きろーーーー!」
そんな中、リーチャはユウキの頬に平手打ちを食らわせた。
「わーーーーっ!?」
ユウキはものすごい勢いで飛び起きると、部屋の隅まで逃げた。
何が起きたのか分からない様子で、目をパチパチさせている。
「あっ、起きた」
エリックと話していたエルダが、ぽつりとつぶやいた。
「ユウキ、早くこれに着替えて! みんな待ってたんだから!」
リーチャの気迫に押され、ユウキは黙って制服に着替え始めた。
「よし、行くぞ!」
ユウキが着替え終わったのを見ると、エリックは寝ぼけている彼を担ぎ上げ、そのまま走り出した。
---
「出席をとる!」
訓練場にやってきた教官がそう告げた、ちょうどそのとき。
ユウキたちは列の最後尾にたどり着いた。
慌てて自分たちの位置につき、何食わぬ顔で列に加わる。
どうやら、間に合ったようだ。
だがユウキはまだ寝ぼけているらしく、頭が右へ左へと揺れていた。
「13番、ユウキ!」
教官がユウキの名前を呼ぶ。
その声に反応し、ユウキの眠気が少し覚めたようだった。
「ひゃい!」
目は覚めたものの、まともな返事はできなかったらしい。
教官はわずかに眉をひそめた。
「……まあいい。次!」
特に何も言われずに済み、ユウキはほっと胸をなで下ろした。
---
「まずは基礎訓練だ! 銃、剣、弓の中から、好きなものを選んで練習しろ!」
教官の指示を受け、4人は集まって相談を始めた。
「どこから行く? あたしは銃をやってみたいんだけど、みんなは?」
リーチャは目をキラキラと輝かせていた。
「じゃあ、私も銃にしようかな」
エルダも銃を選ぶようだ。
「俺は剣をやりに行く。ユウキもどうだ?」
「じゃあ、そうするよ」
あっさりと行き先が決まり、4人はそれぞれ選んだ武器の訓練場へと向かった。
---
「なあ。お前、剣に興味あったのか? 俺はてっきり、リーチャと同じところに行くと思ってたけど」
剣の訓練場へ向かう途中、ユウキは前から疑問に思っていたことを口にした。
エリックは一瞬、ドキッとしたように目を細めた。
「な、なんでリーチャのところに行くと思ったんだ……?」
「だってお前、リーチャのこと好きなんだろ?」
まるで、それが当然のことだとでも言うように、ユウキはあっさりと言った。
「わ、わあああ! な、なんで……!?」
エリックは顔を真っ赤にして、目を泳がせた。
「なんでって、そりゃあ、お前、ずっとリーチャのこと見てるじゃん。バレバレだよ。
……あっ、着いた」
そんな話をしているうちに、2人は剣の訓練場へとたどり着いた。
剣の訓練場には、すでに何人も集まっていた。
壁際には木製の剣が並べられており、その前には厳つい顔をした教官が立っている。
「そこにある木剣を一本ずつ取れ!」
教官の声が訓練場に響いた。
ユウキとエリックは、並べられた木剣の中から一本ずつ手に取った。
「思ったより軽いな」
ユウキは木剣を持ち上げ、軽く振ってみる。
「おい、危ないぞ。周りを見ろ」
「はいはい、分かってるよ」
エリックに注意され、ユウキは木剣を下ろした。
「全員、よく聞け!」
教官が声を張り上げる。
「剣を振るううえで最も重要なのは、正しい構え、足運び、そして相手の動きを見極める判断力だ!」
教官はそう言うと、手に持った木剣を構えた。
「まずは基本の構えから教える。よく見ておけ!」
教官は足を開き、木剣を正面に構えた。
「これが基本の構えだ。剣を握る手に余計な力を入れるな。相手から目を離すな。どんなときでも、次の動きに移れるようにしておけ!」
他の人は教官の動きを真似し、それぞれ木剣を構えた。
ユウキも同じように構えてみる。
「……こうか?」
「違う。お前、肩に力が入りすぎだ」
隣からエリックが指摘した。
「え、そうか?」
「そうだ。そんなに力を入れていたら、すぐに疲れるぞ」
「なるほどな……」
ユウキは肩の力を抜き、もう一度構え直した。
---
「エルダすごーい!」
その頃、リーチャとエルダは銃の訓練をしていた。
「こんなの楽勝だよ。」
エルダは初めて銃を触ったのにも関わらず、ほとんどすべての弾を的に命中させていた。
飄々としているが、褒められたのが嬉しいのか少し機嫌が良さそうだった。
「いいなあエルダ。あたしちょっとしか当たらなかったよ。最初であんなにできるってことは、才能かな?親友に天才がいるってなんか嬉しいなあ!」
まんえんの笑みでそう言った。
「ふふっ。私がみんなを守るから、ね」
エルダも笑顔でそう言った。
---
訓練が終わり、夕食の時間となった。
「あー、腹減った!訓練、教官おっかなかったぜ。なあエリック?」
「そうだな。リーチャ、エルダ、お前たちのほうはどうだった?」
その話題を待っていたかのように、リーチャは話し始めた。
「もうこっちはエルダがすごかった!初めて銃触るのにほとんど全部命中させたんだよ!!」
さも自分がやったかのように得意げに言った。
「すっげえ!さすがエルダ!」
ユウキもとても嬉しそうに言った。
「おっ。ついたぞ。」
『食堂』そう大きく書かれた扉があった。
開けると中はとても大きく、人も大勢いた。
「でけえ!!」
あまりの大きさに、ユウキは叫んでしまった。
「いただきます!」
席を見つけ4人は食べ始めた。
大きな肉、見たことない魚の刺身。
どれも豪華でおしそうだった。
「なんで急に豪華なんだ?」
あまりの豪華さに僅かな疑問をこぼしてしまった。
なぜなら今までここまで豪華なものは孤児院で振るわまれなかったからだ。
「「.......」」
他の3人はわかっているようだった。
いうのを躊躇っていた。
「そりゃあ、僕らは戦場に行って死ぬんだからな。
こうやって豪華な食事を出して、ささやかな幸せに酔ってろってことだよ。
んなことも分かんねえのにここにいんのか、お前。」
急に頭上から、きつい言葉が聞こえてきた。
ユウキが顔を上げると、そこには一人の少年が立っていた。
年齢は自分たちとそう変わらないように見える。
しかし、その目には同年代の子供とは思えないほどの冷たさがあった。
「……なんだよ、お前」
ユウキは眉をひそめた。
「別に。事実を言っただけだけど?」
少年はそう言って、ユウキたちの向かい側に座った。
手には、ユウキたちと同じ豪華な食事が載った皿を持っている。
「おい、いくらなんでも言い方があるだろ」
エリックが口を挟んだ。
「言い方? じゃあ、どう言えばよかったんだ? 僕らは国のために戦う。戦場で死ぬかもしれない。だから、今のうちにうまいものを食べておけ。……これなら満足か?」
少年は皮肉っぽく笑った。
「お前な……!」
エリックが言い返そうとした、そのとき。
「ちょっと、あんた! さっきから聞いてれば、言いたい放題じゃない!」
リーチャが勢いよく立ち上がった。
「こっちは今日が初めての訓練だったの! いきなり死ぬだのなんだの、そんなこと言われて平気なわけないでしょ!」
「へえ。じゃあ、君は死なない自信があるんだ?自分が強いって思ってるの?」
「っ……!」
少年の言葉に、リーチャは口をつぐんだ。
「やめなよ、リーチャ」
エルダがそっと彼女の袖を引いた。
「でも……!」
「いいから」
エルダはリーチャを座らせると、少年に視線を向けた。
「あなたは、どうして死ぬって決めつけているの?」
「どうしてって……」
少年は一瞬だけ言葉に詰まった。
けれど、すぐに何事もなかったかのように食事へ視線を落とした。
「少し調べれば分かることだろ。強化兵が何のために作られたのか、君たちだって教わったはずだ」
「それは……」
エルダは言葉を返せなかった。
確かに、自分たちは戦うために作られた存在だ。
けれど、だからといって、戦場で死ぬことが決まっているわけではない。
少なくとも、エルダはそう思いたかった。
「……お前は、死ぬのが怖くないのか?」
それまで黙っていたユウキが口を開いた。
少年は食事の手を止めた。
「は?」
「いや、だってさ。俺たち、まだ子供だろ?死ぬのが怖くないやつなんて、そうそういないと思うんだけど」
ユウキは首をかしげた。
「俺だって、死にたくないし。みんなにも死んでほしくない」
ユウキは決意のこもった声で言った。
その言葉に、エリックたちは静かにユウキを見つめた。
ユウキは少しだけ考えるように視線を上げたあと、再び少年を見た。
「でも、だからって最初から死ぬって決めつける必要はないんじゃないか?」
「……」
少年は何も答えなかった。
「俺たちはまだ何も知らない。訓練だって今日始まったばかりだ。だったら、これから強くなればいいんだろ?」
ユウキはそう言って、目の前の肉をひと口食べた。
「それに、せっかくこんなにうまい飯があるんだ。死ぬとかなんとか考えるのは、食べ終わってからでもいいだろ!」
一瞬の沈黙。
「……ぷっ」
最初に吹き出したのはエリックだった。
「お前なあ……。さっきまで飯が豪華な理由を気にしてたくせに!」
「いや、だってうまいんだもん!」
「ふふっ、もう。ユウキらしいね」
エルダも小さく笑った。
「ちょっと! あたしだって、まだ全然食べてないんだからね!」
リーチャもそう言って席に座り直した。
先ほどまで張り詰めていた空気が、少しだけ和らいだ。
ただ一人、あの少年を除いて。
「……おめでたい頭だな」
少年は吐き捨てるように言った。
「そうか?」
ユウキはきょとんとした顔で返した。
「そうだよ。君みたいなやつが、真っ先に死ぬんだ」
「じゃあ、そうならないよう強くなるよ」
あまりにもあっさりとした返事だった。
少年は何か言いかけたが、結局、口を閉じた。
そして、目の前の食事を黙々と食べ始めた。
しばらくして。
「……名前」
少年がぽつりとつぶやいた。
「ん?」
「君の名前だよ。聞いてなかった」
「ああ、ユウキ。こっちはエリック、リーチャ、エルダ!」
ユウキは三人を順番に指さして紹介した。
「……そうか」
少年はそれだけ言うと、食事を終えて立ち上がった。
「待てよ!」
ユウキが呼び止める。
「なんだよ」
「お前の名前、聞いてない!」
少年は面倒くさそうに振り返った。
「……アレン」
「そっか! よろしくな、アレン!」
ユウキは笑顔でそう言った。
アレンはしばらくユウキを見つめていたが、やがて小さく息を吐いた。
「……変なやつ」
そう言い残し、食堂の人混みへと消えていった。
「なんだったんだ、あいつ……」
エリックが呆れたようにつぶやく。
「でも、ちょっと気になるな」
エルダはアレンが消えていった方向を見つめていた。
「そう? あたしはもう二度と会いたくないけど!」
リーチャは頬を膨らませた。
「俺はまた会いたいけどな!」
「「「えっ?」」」
三人の声が重なった。
「だって、わざわざあんなこと言いに来たんだろ?てことは遠回しに死ぬなって言ってるんだよ、きっと!」
ユウキは何でもないことのように笑った。
その笑顔を見て、エリックは呆れたようにため息をついた。
「絶対ちがうと……いや、そうだな。」
言うとしていた言葉を飲み込み、エリックは食事を続けた。
それからはくだらない会話で盛り上がり、部屋に戻り眠りにつく。
4人は今日も良い日だったと思った。
そしてずっと続けばいいと、思った。
誤字、脱字、不自然な分があったら教えてくれると助かります。




