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高天原の古城

作者:一夜
最新エピソード掲載日:2026/10/17
「神様に毎日お祈りしていれば、いつか必ず縁が生まれる」
十七歳の天野奏汰は、祖母と二人で暮らす高校二年生。六歳で両親を亡くし、学校に居場所はない。それでも毎朝、坂の上の古い神社に油揚げを供え、手を合わせてきた。何かを願ったことは、一度もない。
六月のある朝、境内に現れた古い鏡に、雲海に浮かぶ城が映る。倒れかけた鏡を支えようと手を伸ばした瞬間、奏汰は光にのまれ――気づけば、神々の国・高天原にいた。
そこは、神々から忘れ去られた古城・天鏡城。帰り道は閉ざされ、人の世の時間は止まることなく流れていく。家では、祖母がひとりで孫の帰りを待っている。
城に近づくことを禁じられた、勝ち気な太陽の姫君・姫乃。奏汰の供え物を十一年間受け取ってきた白狐・こはく。記録の欠けた鏡守・しずく。自分の名を忘れてしまった小さな神・小鈴。炎の武人に、水神の青年、皮肉屋の記録神。
術も剣も持たない人の子は、帰る道を探しながら、神々の里で働き、食べ、ぶつかり、少しずつ居場所を見つけていく。
けれど、城にはいくつもの「空白」が残されていた。
一枚残らず削り取られた、住人たちの名。姫乃が生まれた夜にだけ書かれなかった、一行の記録。城壁に走る八筋のひび。そして、鏡の奥に映った、どこか懐かしい誰かの手。
一方、人の世では、奏汰の消えた朝をきっかけに、祖母や同級生たちもまた、それぞれの「縁」と向き合いはじめていた。
この城で、誰が、何を忘れさせられたのか。
なぜ、奏汰だけが鏡を越えたのか。
そして、「縁とは呪いだ」と囁く者の正体は――。
帰りたい場所がある。けれど、離れがたい人もできてしまった。
神と人、ふたつの世界のあいだで、祈り続けてきた少年が選ぶ答えとは。
縁を信じる少年と、縁に傷ついた神々が織りなす、和風異世界ファンタジー。
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