輪の外から
高校に入って、初めての大きなイベントは球技大会らしい。
……正直、サボりたい。
理由は簡単。
団体競技が苦手だから。
ご存知かどうかは定かではないが、私は中学三年間、団体行動というものにほとんど属してこなかった。
小学校の六年間は、ぎりぎりなんとか耐えていたような気がする。
けれど、その成れの果てが今の私なのだから、たぶん本当は耐えられていなかったのだろう。
では、体育の時間はどうしていたのかというと、私みたいな――はぐれ者、と言ったら失礼かもしれないが――団体行動が苦手な人たちが、少ないながらもいた。
だから私は、その人たちの輪に混ざっていた。
普段はつるまない。
けれど、必要なときには協力できる。
そんな間柄が、私にはとても心地よかった。
球技大会まで、あと一か月。
Xデーまで、私の心は毎日すり減っていくのだろう。
すでに胃は、きりきりし始めている。
その中でも、一つだけ救いなのはグループの作り方だった。
先生曰く、「クラスのみんなとの交流を目的としている」らしく、仲のいい人同士だけで固まるような分け方にはしないらしい。
五人と一人に分かれるような構図が、最初からできにくいということだ。
一人で本を読んでやり過ごせない私にとって、それはとてもありがたかった。
そして後日、先生からグループ分けが発表された。
私のグループの人たちは、穏やかな人たちだった。
昔の同級生のような煌びやかな人たちではなくて、少し安心した。
これなら、影に隠れるようにして過ごせそうだ。
さっそく、バレーの練習が始まった。
というのも、この時期の体育の授業はバレーらしい。
まずは、レシーブとトスの練習。
六人で輪になり、順番にボールを上げていく。
一人を除いてバレー初心者の私たちのグループは、なかなかボールが繋がらなかった。
「わー! ごめんっ! 飛んでった!」
「私、取ってくるわ」
「ごめんねー!」
そんな会話が、ちらほらと飛び交っていた。
例に漏れず、私も明後日の方向へボールを飛ばしてしまう。
「ごめんなさいっ……」
「おっけー。どんまいどんまい」
私のミスにも寛容でありがたかった。
ただ、何度も同じように飛ばしてしまうので、拾いに行ってくれる人たちにはとても申し訳なかった。
どうやら、グループの中にも同じことを思っていた人がいたようだった。
「ねぇ、レシーブってどうやるの? どう頑張っても思った通りの場所にいかないんだけどさー」
「私も。ねぇ、教えてくれない?」
わらわらとバレー部の子の周りに集まっていくグループの子たち。
私は、その場に一人取り残されてしまった。
突然、周りにあった音が遠くなった。
私は、その感覚に少し戸惑った。
置いていかれたような焦りと、目の前の輪がやけに眩しく見える感覚。
そして、思ってしまった。
――あぁ、まただ。
心の中の闇が、牙を向いた。
お前は違うのだ、と。
所詮、一人になる運命なのだ、と。
私はどうせ独りだ。
どこにいても。
なにをしても。
「葉月さんは大丈夫そう?」
急に自分の名前を呼ばれて、肩がびくりと跳ねた。
「はっ、はい!?」
現実に引き戻された私は、驚きのあまり声を裏返してしまった。
バレー部の子は、少し笑いながら言った。
「びっくりしすぎだよー。葉月さんも、わからないところない?」
「えっ……えっと……アンダーが上手くできなくて……」
「アンダーね。おっけー。腕だけで打つんじゃなくて、膝を使うんだよ」
「こうやってね」と、彼女は身振り手振りで教えてくれた。
私の世界に、ほんの少しだけ光が差した気がした。




