2:陛下とかいう人が来た
猫に爆誕して何日経ったか覚えていない。けれど、いつの間にか固形物が食べられるようになった。
ママンのお乳はまだまだ飲みたいけど、人間のおじいさんがくれるお魚もお肉も美味しいのよね。
だからたぶんそこそこに成長したんだと思うのよ。兄姉たちも倍くらいになった気がするし。
初めのころは、赤ちゃんだからあまり目が見えていないのだと思ったけど、いまだに世界は色褪せてぼやけたまま。これ、猫特有のやつだ。確か赤色とか見えないのよね。んで、ド近眼。
まぁ、そこまで猫生活には困らないからいいけど…………尻尾ぉぉぉぉ!
『こら、お行儀よくしなさい』
『ギェッ』
ママンのペフンペフンと動く尻尾に飛びついてじゃれていたら、ママンに頭頂部からガッツリ噛まれた。
なんか誰か来たから、お行儀よくして愛想を振りまかなきゃいけないらしい。
「陛下、ようこそおいでくださいました」
「健康に育っているようだな」
「はい。どの子たちも充分な資質をそなえておりますぞ」
いつもお魚やお肉をくれる人間のおじいさんが、全体的に黒い人間に私たちの説明をしていた。
肌色の大きな手が伸びてきて、兄姉たちがわらわらと逃げ惑っていたけど、何が怖いんだろうか?
『おじいさんの知り合いっぽい人間だよ? どうせ撫でるだけでしょ? 可愛さアピールして甘やかしてもらおうよぉ? せっかくの猫生なんだからさぁ――――ミギュ?』
黒っぽい人間に首根っこ摘まれて持ち上げられた。
あっれぇ? 思ったより悪い奴だったの?
「コイツにする」
「よろしいので?」
『いや高いから! 持ち上げるのはいいけど、体の下に手を添えてよ!』
「あぁ、すまんな」
「いえいえ、陛下のお気に召す子がいてようございました」
――――陛下?
黒っぽい人間は王様なのかもしれない。それ以外に『陛下』って敬称付けられる人は知らないし。
ってか、ここ日本じゃないのかもしれないとか、今さら気が付いた。
だって、陛下の人が私の体を手のひらで支えたあとに抱きかかえてくれたけど、着ている服がなんとなく西洋というか異世界感があった。
胸ポケットとか肩のとこから、ジャラジャラとなんかぶら下がってるの。
ぬぐぐぐぐ、気になる。キラキラ光りやがって!
どりゃぁぁぁぁ――――グエッ。
「やめろ」
「ハハハ! まだまだ遊びたい盛りですので、ご容赦を」
陛下の人、ママンと同じタイプだったよ。
顔面鷲掴みで止められたよ。そしてまた首根っこ掴まれて腕の中。
んー…………もうちょっと奥に行きたい。だがしかしこれ以上奥にいくと脇だな。人間の男の脇に顔を突っ込むのはどうかと思う。だがしかし、あそこらへんマントの陰にもなってるから、凄く薄暗くて狭くて落ち着きそう…………ええい、私は猫だ! 脇が臭かったら噛みつけばいいか!
『フンフン…………臭くないな。セーフ』
「…………コイツは何を考えているんだ」
「まだ子どもですので、暗く狭く温かいところが好きなんですよ」
「……………………ふむ」
おじいさんと陛下の人がなんか色々話していた。私は騒ぎすぎたことと、抱っこされてゆらゆら揺れて眠くなって、そのまま爆睡こいてしまった。




