1:私、爆誕
仕事帰りでフラッフラのフラッフラ。
交差点、信号待ち、遠くに聞こえる叫び声、ブレーキ音、ハイビーム。
断片的な記憶の欠片たち。
瞼をギュッと閉じて押し上げたら、何も見えなくなっていた。
耳もよく聞こえないし、お腹は減ってるし、言葉は話せないし、何かにもみくちゃにされるしで、人生詰んだなと思った。
なんかいい匂いがするから、そこに近づこうとしたら、更にもみくちゃにされた。行き着いて恐る恐る口に含んだら――――これ、あれだ、お乳だ。
ということで、完全に人生詰んだんだなと思った、新生初日。
きっと転生とかいうやつだ。車に轢かれそうになってギュッと目を瞑るとかいう、定番のような記憶が徐々に蘇ってきたし。きっと私はあの瞬間に死んだのだろう。
そして、赤ちゃんに生まれ変わったのだ!
……………………と、思っていたのよねぇ。
目の前にいる、巨大な白猫もといママンにベロンベロンに舐められながら、こてんと後ろに転がる。
ママン、全力でグルーミングするのやめてください。
まさかさぁ、猫に転生してるとか思わないじゃん?
確かに、目も見えてないのに自力でお乳を飲みに行かないといけないの、なんかおかしいなとはと思っていたのよね。
思考回路に靄がかかってるみたいな感じで、ふわふわしてたけど、最近はちょっとクリアになってきた。
なんだろう、猫特有なのかな?
兄弟姉妹たちの尻尾がとてつもなく気になるし。
――――てぇいっ!
ついつい飛びついてしまうのよね。
『いたっ、やったにゃ』
『にゃ、まぜてまぜて』
『あぁぁぁ、もぉ! しっぽプリプリしないでぇ!』
なんだかんだと騒ぎながら、もみくちゃになっちゃうのがいつものパターン。
兄弟姉妹たちで、誰が兄で弟で姉で妹かなんて話し合いは、大概がじゃれ合いをしていて忘れて、またその言い合いをしてじゃれ合って、忘れる。
なので、みんなに可愛がられる末妹の座を早めに宣言した。
『あたち、すえっこがいい!』
『すえっこってなに?』
『いちばんよわいこ』
『え、よわくていいの……』
『うん! だから、にぃに、ねぇね、あたちをまもって!』
こちとら猫生は初めてかつそこそこ人間の思考回路なんだから、リアル猫生の兄と姉よ、私を可愛がれ! ってことでよろしく。




