15:よく寝た
ふぁぁぁぁ、よく寝た。
伸びをしようとして、すっごく狭いところにいたことを思い出して這い出る。
いつの間にやら辺りは暗くなっていて、お腹もペコペコだ。
そろそろヴァルの部屋に戻ろうかなぁと思ったものの、ここどこ? ヴァルの部屋ってどこだっけ?
あと、周囲が妙に騒がし――――。
「いたぞ! あそこだ!」
『ひょえっ』
騎士さんとかいろんな人たちが、バタバタと走って私の方に向かってくる。
めっちゃ怖いんですけどぉ!?
慌てて棚の裏の隙間に入り込む。
出ておいでとか色々と言われるものの、誰か知らないので、なんとなく出て行き辛いし、捕まった何かされるのかもしれないし。
どうしようかと迷っていたら、聞き覚えのある声が響いた。
「ルナ」
――――ん?
「出てこい、ルナ」
あ、ヴァルだ。
棚の隙間からそっと覗いてみると、困ったような顔のヴァルが床に膝をついて、こちらを見つめていた。
目が合った瞬間、ヴァルの表情がふわりと柔らかくなった。
「ルナ、ケガはないか?」
『……ないよ』
「お腹は?」
『減ってる』
「ん。部屋に戻るぞ」
『うん』
隙間から出て、ヴァルにそっと近付く。
ヴァルの差し出してきた手に顔をスリッと寄せると、何度も頭を撫でられた。
部屋を勝手に抜け出したし、怒られるかなと思ったけど、怒られなかった。
でも、凄く小さな声で「無事で良かった」と言われて、心臓がギュッとなった。
『ヴァル、あのね…………あのねっ』
「ん?」
『……ごめん、なさい』
どうしてか目を見れなくて俯いて謝ると、ヴァルにそっと抱き上げられた。
そして、おでこに柔らかなキス。
「怒ってない。泣くな」
そう言われて、自分が泣いていることに気が付いた。
なんで泣いているんだろう?
猫って、涙出るの?
よく分かんない。
こぼれ落ち続ける涙をどうにか止めたくて、手で顔をクシクシと擦るけど、止まってくれなかった。
ヴァルに抱きしめられて部屋に帰る間に、泣き疲れてしまったのか、また寝てしまっていたらしい。
目覚めたら真夜中っぽくて、ヴァルの枕の横にある私専用のカゴの中だった。
カゴから抜け出して、ヴァルの身体をよじよじとよじ登り、胸の上に座る。
穏やかに寝ているのかと思ったけど、眉間にどえらく皺が寄っていた。
怒ってないって言ったけど、怒ってるよね? 心配させたよね?
『……ごめんなさい』
寝てるから言っても意味はない。
ヴァルが起きたらもう一回謝ろうと決めて、胸の上で丸まる。ここ、寝心地良さそうだし、起きたらすぐ分かるだろうから――――。




