12:ドキドキ?
『ハルさんハルさん、それ兄だよ』
「うん、そうだね。この不細工な子が僕の番で間違いないよ」
『ハルさん僕っ娘のオチ?』
「ボクッコ?」
自称僕な女の子かと思ったけど、どう見ても男性の顔をしている。
そうか、そういうこともあるのか。
『うおっ、なんだコイツ。変な……竜人だよな?』
ハルさんに持ち上げられ、更にチューされそうになっている兄が、ハルさんの顔を両手で押し返して拒否しつつフンフンと臭いを嗅いでいた。
『兄、何が変なのー?』
『コイツ、人間みたいな臭いがする。竜臭くない』
『え、竜って臭いの!?』
『なんか、漏らしそうなくらい強い臭い……あそっか、お前鼻弱かったな』
そう、たぶん猫としては全然臭いに敏感じゃない部類にいるようで、臭いで危険とか危険じゃないとかの判断が難しい。変なとこで人間の感覚が残っている。
『ところで兄、不細工なの? ペチャッとしてて可愛いけどなぁ?』
『俺も、俺は可愛いと思ってる!』
『だよね! 竜人の感覚変だね!』
『なー!』
ママンには沢山の彼氏がいるせいか、兄姉たちと私は違う猫種が入り混じっている。
私はどちらかというとママン似。たぶんメインクーンとかそこら辺の猫種。
スコティッシュっぽい姉がいれば、エキゾチックっぽい兄がいたり、色々だ。
ハルさんの番らしい兄は、クリーム色のエキゾチック系で、鼻ぺちゃ、顔は真ん中に寄っていて、猫なのにタレ目でめちゃくちゃ可愛い。ぶちゃ可愛いとかの部類かもしれない。
「君、名前は? 今何歳? 好きな食べ物はある? 嫌いな食べ物は? あ、今日から僕と一緒に住もうね。何色が好き? ふかふかの毛布とサラサラの毛布はどっちがいい? あっ、僕はイェールハルドだよ。君の番だ」
ハルさんが恍惚とした表情で嫌がる兄に再度ブチュッとキスをしながら、質問攻め。
『なんだコイツ……』
『兄、ハルさんだよ!』
『ハル?』
「っ! 番が僕の名前を呼んでくれたよ! ねぇ、兄さん!」
「…………ん。よかったな」
キラキラ笑顔になったりと、表情が忙しそうなハルさんに対して、なんだか憮然とした様子の陛下の人。
『陛下の人、どうしたの?』
「……イングヴァル」
『イン? 何が?』
「俺の名前だが?」
『へぇ!』
そんな名前だったんだー。さて、遊ぼ! っと踵を返していたら、後頭部を鷲掴みされた。
もう、なんですぐ鷲掴みするかなぁ。
優しいの? 優しくないの? 謎よ、謎。
「呼べ」
『陛下の人じゃダメなの? 気に入ってるんだけど』
「駄目だ」
『ふぅん? イン…………なんだっけ? ヴァル?』
「ん」
ハルさんといっしょで、後ろのとこだけでいいかと思い、ヴァルと呼んでみたら、見たことない柔らかな微笑みを返された。
目が潰れそうなほどのイケメンでした。
『…………兄姉と遊んできていい?』
「ん、行って来い」
妙に心臓がドキドキしてるのは、たぶん見慣れないものを見てびっくりしたせいだろう。
とりあえず、遊ぼ!




