10:聞こえてたんかい!
「……行きながら話す。ついてこい」
無表情な陛下の人がハルさんにそう言って、くるりと踵を返した。今度こそ厩舎に向かうようだ。
ハルさんを引き連れて歩きながら、陛下の人が神託だとかなんとか話してた。
ハルさんの後ろには、何でか殺気立った騎士みたいな人が二人。
何者だハルさん。いや、陛下の人の弟らしいけども。
ちなみに!話の内容はほぼ聞いていなかった。主にジャラジャラがジャラジャラしていたため。
「着いた」
「ここに僕の番が……!」
『ねーねー、番って何? って聞いたところで伝わんないんだけどさぁ』
陛下の人の肩の上で、ハハンと乾いた笑いを零していたら、後ろにいたハルさんと目が合った。
「番とは、魂に刻まれた生涯の伴侶ですよ」
『へぇ! ん?』
銀髪をサラッと揺らし、ニコッと微笑み返されて、出るはずのない汗が全身から大量に噴き出した気がした。
『もしや、聞こえていらっしゃいます?』
「うん。なんでか君の話している言葉が分かるよ。なんでだろうね?」
不思議そうに首を傾げるハルさん。なるほど、なんでだろう? なんすね。ということは、ハルさんが特殊能力に目覚めた可能性――――。
「……イェールハルドの番も、猫だからだろう」
も。
今、陛下の人、もって言った。
チラリと陛下の人の顔を見たけど、無表情で前を向いて歩いてる。また、無表情かい。
『聞こえてたんかい!!!!!!!』
「煩い」
叫んじゃったよね。咳き込むくらいでっかい鳴き声出ちゃったよね。
陛下の人の頬をデシデシと殴ってみるものの、ひ弱な子猫のパンチ。何の効果もなさそう。
ハルさんがあははと笑いながら私の頭を撫でようとして、雷レベルの静電気みたいなのが発生した。
バチン、バリバリィ! とかありえない音と目がチカチカするほどの稲光。
そして、盛大に吹っ飛んでいくハルさん。
『え、ごめん。そんなに静電気溜まってた……の?』
「不用意に触るな」
ハルさんが五メートルほど後方でゲホゲホと咳をしながらごめんなさいと謝っていた。
ちょっとよく意味が分からない。静電気溜めてたのは私なのに。いや、本当に静電気か? もしや私魔法が使えるようになったんじゃ?
『魔法少女爆誕の可能性が!』
「ない。防御膜を張っているだけだ」
『ほへぇ。なんで?』
「ん? お前を護るために」
『なるほど……普通に会話できるんかい!』
再度ツッコミ&頬に猫パンチ。
なんで今まで会話できない体で過ごしてたのよ!
独り言が全部筒抜けだったってか、独り言が多いなコイツみたいな扱いをされてた可能性がでてきたじゃないの。
何この恥のオンパレード。
陛下の人は、すました顔でハルさんに「置いていくぞ」とか言って、スタスタと歩き始めてしまった。
もしや陛下の人って、劇的なほどにマイペース!?




