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第39話 お見舞い

「ここね」


 騎士団の施設で部屋の場所を聞いたリリィは、セリーヌを伴いアベルが住む部屋の前に来ていた。


 コンコン


「はい」


 ドアをノックするとアベルの声が中からして、ドアが開いた。


「あれ?リリィ?どうしてここに?」


 アベルが少し驚いた顔をした。


「怪我したって聞いて来ちゃった…駄目だった?」


 少し首を傾げながら聞く。


「いや、ダメなんてことないよ。ありがとう。入るか?」


 突然の訪問に立ち話もなんだと、アベルが問い掛ける。


「うん!」


 その言葉にリリィは嬉しそうな顔をして頷いた。


「あれ?大人の靴が…」


 リリィがケイティのブーツに気がつく。


「あぁ……じ、上司と一緒だからな」


「そっか、まだ見習いだもんね。って散らかってるなぁ。男2人暮しだからってもう少し片付けなよ」


 なんの疑問も無く上司、もしくは先輩は男性だと決めつけるリリィ。


 いや、男女で住むケース等まず無いので、リリィの発想が普通だ。


 騎士団と言う仕事柄、男性の比率が高いし何より騎士団の宿舎なのだ。

 ケイティが副団長の地位にあり、決定した唯一の男女同室の部屋なのだ。


「あぁ、そうだな。なかなか時間が無くて……」


 アベルは一緒に住んでいる上司が女性だとは言い出しにくく話を逸らす。


 普段はアベルが掃除しているので、散らかっては居ないが、アベルが任務で離れている間に元の散らかりを取り戻していた。


 そして当のケイティは討伐隊から戻っておらず、怪我をしている事もあり、必要最低限の片付けしかしていなかったのだ。


「でも…」


 包帯があちこちに巻かれたアベルの身体を見て、リリィが言った。


「どうやったら、蟻に襲われてそんな怪我するの?」


「えっと…」


 変に説明して心配を掛けたくなく、言い淀むアベル。


「蟻に咬まれて転んだとか?」


 笑いながらリリィが聞いてくる。


「そんな感じ…かな」


 誤魔化すように頭を掻きながらアベルが答える。


 ふと、リリィの後ろの司祭服を着たセリーヌから、馬鹿にするような冷たい視線が投げ掛けられる。


 (ち、違うんだ! あぁ、でも、説明したらリリィに心配掛けちゃうし…うぁぁ、どうしたら…)


 困ったのを表すかのように、更に頭を掻く速度が速くなる。


「もうドジなんだから。ちょっとじっとしてて」


 リリィがアベルの胸に手をかざすと、アベルの身体を光が覆う。


 しばらくするとリリィは手を降ろした。


「これで怪我は治ったはずよ…さて、じゃぁ、ちょっと部屋を片付けようかな」


「い、いいよ、そんなの」


 止めるアベル。


「な〜に?見られちゃ不味いものでもあるの?」


 身体を屈めて下から覗き込む様な姿勢でリリィが聞いてくる。


「いや、そういうわけじゃないけど…」


「リリィ様…片付けでしたら、私が」


 セリーヌが申し出る。


「いいの。私がやりたいからやるの。アベル達は座ってて」


 と言うと、嬉しそうに部屋を片付けだすリリィ。

 彼女は愛する相手の世話が出来るのが嬉しかった。


 椅子にアベルが座った。


「セリーヌも座ってたら?」


 片付けをしながら、リリィが言う。


「いえ、リリィ様が働いているのに、私が座るわけには…ここで立って居りますのでお気になさらず」


 そう言うと部屋の片隅に移動した。


 リリィは常に後ろにセリーヌが立っているのに慣れていたが、どうも落ち着かないアベルは、部屋を見渡した。


 (確かに部屋散らかってるなぁ…

 でも、この部屋はケイティ副団長が使ってるんだよな。

 あの人片付けないし…ほら、あそこにも服が脱ぎっぱなし…!!)


 脱ぎ捨てられた服の中にポツンと下着が混ざってるのが目に入った。


 殆ど女性らしい服を着ないケイティであったが、流石に下着は女性ものだった。


 (ま、まずい!!)


「お、俺もやっぱり片付けるよ」


 そう言うと、急いで脱ぎ捨てられた服を片付ける振りをしながら、下着をポケットに隠す。


 (って、なんで俺、隠してるんだ??べ、別にリリィはただの幼馴染…だよな?)


 などと思いながら、嫌な汗が流れるのを感じるアベル。


 しかし、嬉しそうに洗い物をしてくれているリリィを見ると、やはり本当の事は言えなかった。


 ふと、セリーヌと目が合った。

 何かを言いたげな冷たい視線をアベルは感じた。


「…私だけ動かないのは気が引けますので、私も手伝います」


 そう言うと、セリーヌがすたすたとアベルの横に歩み寄る。


 そして、小声で…


「リリィ様の悲しむ姿を見たくないので言いませんが…程々になさって下さいね」


「は、はい…」


 何故か謝ってしまうアベルであった。



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