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7 青い瞳は負けない

誤字や不自然な表現などがありましたら、教えていただけると助かります。

エミリーの視線が、扉の隙間から父の手にある肖像画へ落ちた。

そこに描かれていた赤い瞳が、目に入る。

胸の奥が、ちくりと痛んだ。

理由はわからないが、その赤だけが妙に目から離れなかった。

エミリーは無意識に自分の瞳へ触れる。

深い青――母親譲りの瞳だった。


そして不意に、忘れていた記憶が蘇る。

眩しい午後だった……


四歳のエミリーは裸足で、誰もいない侍女の部屋にこっそりと忍び込んだ。

彼女はつま先立ちになり、低い棚の上に置かれている、縁に安っぽい模様が施された古い鏡に手を伸ばした。

ついさっき、若い侍女にしつこく頼み込んで、小さな色を変える魔法を教わったばかりだった。


胸がドキドキしていた。

上手くできるかわからないが、それ以上に楽しみだった。

彼女は鏡の前に立つ。そこに映っていたのは自分の青い瞳だ。

エミリーは小さく息を吸い、覚えたばかりの曖昧な呪文を慎重に唱えた。

かすかな魔力の波動が走った。

次の瞬間、鏡の中のあの青い瞳は、色を拭い取られたかのように見え、そして鮮やかで、燃えるような赤へと変わった!

最も純粋なルビーのように、まるで……口にすることさえ許されない異母姉、エマの瞳みたいに。


「わあ……!」

小さなエミリーは思わず声を上げた。ピンク色の頬が興奮で紅潮した。

鏡の中の自分が、すごく綺麗だった。

もはや優雅さと礼儀正しさを求められる「エリアスお嬢様」ではなく、知らない誰かみたいだった。

彼女はこの色がすごく好きだ。温かくて特別、燃える炎みたいだ。


彼女はこの姿にすっかり魅了され、ある考えが頭に浮かんだ。

もし母にも見せてあげたら、きっと驚くだろう!

もしかすると……「きれい」と言ってくれるかもしれない?


その考えに、もう我慢できなかった。

礼儀作法も、母親の厳しさも忘れていた。

まるで最も大切な宝物を分かち合いたがる小鳥のように、侍女の部屋を飛び出した。

小さなスカートの裾をたくし上げ、長い廊下を駆け抜け、心の中で最も優雅で綺麗な母親のもとへと向かった。


「お母様! お母様! 見てください!」

応接間に飛び込む。

花を飾っていた母親の前で立ち止まった。


「私の新しい目! きれいでしょう?」

小さなエミリーは宝物を捧げるかのように、必死に顔を上げ、真新しい、炎のような赤い瞳をぱちぱちと瞬かせた。


しかし、予想していた驚きや褒め言葉は訪れなかった。


彼女を迎えたのは、一瞬にして青ざめた母の顔と、まるで首を絞められたかのような鋭く、取り乱した怒鳴り声だった。

「エミリー! 何をしているの?!」


エリアス夫人は、ほとんど乱暴なくらいの勢いで小さなエミリーを引き寄せた。

宝石の指輪をはめた指が、エミリーの細い肩をがっちりと掴み、爪が肉に食い込みそうだった。

エリアス夫人の体は微かに震えており、その声には小さなエミリーがこれまで聞いたことのない、強烈な嫌悪が満ちていた。

「醜いわ! すぐに元に戻しなさい! 

まるで……まるで魔物みたい!

汚らわしい! 赤なんて大嫌い!

もう二度とあんな気持ち悪い色を出さないで!

絶対に許さないわ!」


小さなエミリーの体がびくっと震えた。

彼女は完全に怯えきり、頭の中は真っ白になった。

その不安定な魔力は瞬く間に消え去った。

彼女の瞳から赤色がすっと消え、いつもの青の色に戻った。


それを見て、母親はようやく息を吐いた。安堵したようだったが、その瞳にはまだ恐怖が残っていた。

エリアス夫人はしゃがみ込み、両手でエミリーの頬を包み込んだ。

指先は冷たかった。

「ほら」

声はさっきより優しかったが、疑う余地のない強迫観念を帯びた口調で言った。

「これが私エルフラの小さな天使。 青こそ、最も美しい色よ。 最も高貴で、最も純粋な青が私たちの家系にふさわしい色よ」


エミリーは何も言えなかった。

しかし、母が先ほど見せた極度の嫌悪の眼差し、あの「気持ち悪い」という言葉は、すでに小さなエミリーの心に深く刻み込まれていた。

彼女はぼんやりと考えた。

ただ色が違うだけ……本当に……そんなに大事なことなのだろうか? 本当にそんなに、いけないことだったの?


でも、それからだった。

あの日を境に、一族の間では妙な噂が囁かれるようになった。

「赤い瞳は、人の心の奥まで覗くらしい」

「隠した本音も全部見抜かれるんだって」

「嘘も、嫉妬も、汚い気持ちも全部ね」

「だから赤い瞳は不吉なのよ」


誰が言い始めたのかはわからない。

けれど人は、見透かされることをひどく恐れる。

特に見られたくないものを抱えている人ほど。

そして気づけば、「赤い瞳の読み手」という名前だけが、静かに広がっていった。


「エマはあの女の子供だ。 彼女の赤い瞳は不吉だ。」

「彼女はあなたのすべてを奪い取るだろう、エミリー。」

「彼女より強く、彼女より優れていなければならない。 あなたがエリアス家の真の誇りであることを証明しなさい」

母親の言葉は、日々繰り返し、エミリーの認識を削り取り、彼女の世界を再構築していった。

気づけばエミリーも、それを疑わなくなっていた。


そしてエミリーは、母によって「愛」という名の目に見えない糸で、より強く、よりしっかりとその身側に縛り付けられていった。


記憶が途切れる。

現実へ戻る。


かつては美しいと感じたものの、母に「気持ち悪い」「魔物みたい」と罵られた赤い瞳を、彼女はふと見つめた。

その時、言葉にできない複雑な感情が彼女の胸の奥が、少しざわつかせた。

そこには、幼い頃に容赦なく否定されたことによる、わずかな悔しさが混じっていた。

彼女は素早く顔を背け、その肖像画を見ないようにした。

空間魔法も、あの女も、そして赤い瞳も、考えないようにした。


まるで母親が肖像画の中のあの赤い瞳の女に勝ったように、彼女、エミリー・エリアスもまた、エマには負けない。

青こそ正しい。

青こそが高貴なのだ。

母親はそう言っていた。

だから、間違っていない。

……間違っていないはずだった。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

評価や感想、ブックマークなどいただけると、とても励みになります!

明日も更新予定ですので、また読みに来ていただけると嬉しいです!


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