67 後悔の嗚咽
ダニエルは優しい人だった。獣闘場で初めて出会った時、チャールズはそれを直感していた。
自分と同じように獣闘場で召喚獣を殺さないのだ。
チャールズは、ダニエルが本当にエマを責めているわけではないことも分かっていた。
ただ、ダニエルはあまりにも優しすぎて、チャールズは腹が立つほどだった。
チャールズはダニエルの体から絶え間なく滲み出る血痕を見つめながら言った。
「この獣闘場は、もうすぐ聖国軍に閉鎖されるそうだ。 ダニエル、君も……どうか気をつけて……」
ダニエルは黙ってうなずいた。
「ありがとう」
「さよなら、チャールズ……それと、エマさんの誕生日のお祝いを伝えてくれ」
「エマさんの誕生日は先月だったよ。 ルーカスは彼女の誕生日さえ覚えていないんだ!」
「ごめん……」
「……行ってくれ、もう会わないで……」
暗がりに身を潜めていたエマは、その会話を聞いて笑った。
急いで戻らなきゃ。チャールズに、まだ起きていたことを知られてはいけない。
やっぱりチャールズは我慢できないに決まっていた!
チャールズはエマがこっそりと立ち去るのを目尻で捉えると、まだ意識が朦朧としているルーカスを蹴って起こした。
ルーカスはダニエルを見たとき、まるで最後の希望を見たかのようであり、同時に終焉をもたらす者を見たかのようだった。
ダニエルが召喚獣の拘束鎖を取り出したとき、彼は抵抗しなかった。
ただ、かすれた声で叫んだ。
「ダニエル……頼む……俺をエマから引き離さないで……!」
ダニエルは手際よく鎖を巻きつけ、静謐な顔には何の表情も浮かべていなかった。
ダニエルはチャールズに手を振り、それ以上何も言わずに、よろめくルーカスを引きずりながら、道端に停めてある車へと向かった。
エンジンをかけ、この静かな海域を離れていった。
運転席で、ダニエルはバックミラー越しにみすぼらしい姿のルーカスをちらりと見ると、長い沈黙の末、ようやく低く重々しい口調で静寂を破った。
「ルーカス……君はたぶん知らないだろうけど……僕が君をどれほど羨ましく思っているか」
この予想外の一言に、ぼんやりとしていたルーカスの全身が震え、青い瞳には信じられないという表情が浮かんだ。
「何……だって?!」
ダニエルは前方の道路を見つめ、声は穏やかだったが、まるで解剖刀のように冷たく、彼自身の傷だらけの人生を切り裂いた。
「君が羨ましい……君には、心から君のことを思い、君のことを気遣ってくれるエマさんがいる。
エミリーさんは……」
ダニエルは一呼吸置いて、そう続けた。
「彼女はもともと悪い子ではなかったが、両親に甘やかされすぎてしまった。自己中心的で、虚栄心が強く、感情的になってしまった。
彼女の機嫌が悪い時、僕は最高の八つ当たり相手だった。 殴る、蹴る、引っ掻く、噛み付く、さらには魔法の衝撃まで……目立つ傷跡が残らなければ……僕は黙って耐えなければならなかった。
家計はもはや裕福ではないのに彼女は浪費を続けた。積み重なる借金……僕は何度も血まみれで残酷な地下の獣闘場に送り込まれ、血と傷跡で彼女の借金を返済させられた」
ダニエルの声には不満はなく、言葉にできないほどの疲労がにじんでいた。
「召喚獣には選択の権利などない。 契約が結ばれたその瞬間、私たちの運命は主人の手に委ねられる。
そして君は……」
ダニエルの声は、突如として皮肉と悲しみを帯びた。
「君は最初から最高の切り札を握っていた。 エマさん……君が思い描くものも、思いもよらないものも、すべて君の目の前に差し出してあげた。
なぜ君は……」
ダニエルは突然ブレーキを踏み、車は人影のない海沿いの道路の脇に停まった。彼は振り返り、氷のような灰色の瞳で、後部座席の死人のように青ざめたルーカスを鋭く見つめた。
一語一語が最後の審判のようだった……
「これほど素晴らしい手札を……こんな……惨憺たる結末に導くのか?!」
そうだ、なぜ……こんなことになってしまったんだ?!
「ああああああ――!!!」
ルーカスの絶叫が夜空に響き渡った。
果てしない後悔が、ルーカスの胸の奥底から轟然と噴き出した!
彼は後部座席で身を縮め、両手で自分の髪を必死に掴み、体を激しく震わせていた。青い瞳からは、糸が切れた珠のように涙が溢れ出し、絶望の叫びと混じり合い、やがて唸るような海風に容赦なく巻き込まれ、果てしない天地へと消え去っていった。
ダニエルは苦しむルーカスを見つめ、再びエンジンをかけ、静かに走り出した。
ある温もりは、一度失えば永遠に、二度と見つけることはできない。
遅すぎる悟りは、ただ自分の膿んだ傷口に塩を塗り込み、痛みを増すだけだ。
それが、ルーカス自身が支払うことになった代償だった。




