56 魔物の襲来(1)
「学生たちを守れ!」
威厳に満ちた女性の声が、雷鳴のように轟いた!
セレナはいつの間にか広場の中央にある高台に立っており、手には銀炎を纏った長剣を握っていた。
「すべての召喚獣は戦闘態勢へ! すべての指導者たちよ、戦闘系を除く者は、学生たちを秩序正しく避難させよ!」
彼女が剣を一閃させると、銀色の炎が襲いかかってきた魔物を真っ二つに切り裂いた。
しかし、さらに多くの魔物が、亀裂から波のように溢れ出していた。
黒く、奇形であり、腐臭を放つ魔物たち。
犬のような姿のものもいれば、人型のものもおり、言葉では到底表現できない姿のものもいた。
ただ、その貪欲な目と粘液を滴らせる口元だけが、血肉への渇望を物語っていた。
「あああああ――! 助けて!」
学生たちは四方八方に逃げ散り、広場は瞬く間に混乱に陥った。
チャールズは人混みの中で必死にエマの姿を探した。
「エマさん! エマさん!」
「チャールズ!」
横から聞き覚えのある声が聞こえた。
チャールズが勢いよく振り返ると、エマが慌てふためく人混みをかき分けて近づいてきていた。
「エマさん!」
チャールズは駆け寄り、彼女の手を掴んだ。
「大丈夫ですか?!」
「大丈夫よ!」
エマは息を切らしながら言った。
「でも、裂け目……あの裂け目は自然のものではないわ! 誰かが人為的に開けたのよ!」
「え? 人為的なのですか?」
「ええ、裂け目の縁を見て!」
エマは空を指さした。
「自然にできた空間の裂け目の縁は滑らかであるはずなのに、この裂け目の縁には魔法陣の残光がある。 誰かがこっち側から通路を開いたのよ!」
チャールズの胸がどきりと沈んだ。
人為的に開かれたもの。
一体誰がそんなことをするんだ?
シャドウファングか?
いや、シャドウファングの連中はキャンパスには入れないはずだ!
誰かが彼らを手引きしているなら別だが――トーマス!?
「誰かは今はどうでもいいですよ!」
チャールズはエマの手を強く握りしめた。
「避難所へ行こう! セレナが、先生たちに学生の避難を組織するよう言ったんです!」
「だめ――」
エマは広場で悲鳴を上げてあちこち走り回る学生たちを見つめ、歯を食いしばった。
「チャールズ、私ならあの裂け目を直せるわ」
「何?! だめだ、危険すぎる!」
「チャールズ、今、あの裂け目を修復できるのは私だけよ」
エマの眼差しは決意に満ちていた。
「信じて。 あの裂け目は大きいけど、修復できないわけじゃない。 裂け目の縁に逆向きの魔法陣を構築すれば、閉じることができるの!」
「もし裂け目が修復されなければ、この戦いがいつまで続くか分からないわ。チャールズ、ここには学生が多すぎる。私には――」
「どれくらいかかる?」
とチャールズが尋ねた。
「三十分」とエマは言った。
「少なくとも三十分はかかるわ」
三十分。
チャールズは空を見上げた。
魔物は依然として次々と押し寄せていた。
三十分あれば、魔物たちは広場全体を死体の山と血の海に変えてしまうだろう。
しかし――
「わかりました」とチャールズは、エマの揺るぎない眼差しを見つめながら言った。
「エマさんは魔法陣を構築してください。 魔物については僕が何とかしますよ。
エマさん、何が起ころうとも、怖がらないで。僕はエマさんを傷つけたりしないから」
チャールズがそう言った時、それがエマを慰めるためなのか、それとも自分自身を慰めるためなのか、彼自身にも分からなかった。
エマは一瞬、呆気にとられた。
チャールズはエマの頭をポンと叩き、彼女の手を離すと、黒い洪流の方を向き直り、深く息を吸い込んだ。
「どんな魔物も、君に近づかせはしないですよ。エマさん」
狐の炎が彼の掌から立ち上った。
今度は、その炎は温かみのあるオレンジ色ではなく、目を刺すような金色だった。
「チャールズ……」
なぜか、チャールズの後ろ姿を見て、エマは不安を覚えた。
「行って!」
チャールズは振り返らなかった。
エマが考える時間はもうなかった。
広場の中央にある魔法のパフォーマンスを行うための石造りの高台では、装飾用のルーンランプがまだ灯っていた。
エマは歯を食いしばり、高台へと駆け上がった。そこは視界が最も広く、魔力の流れが最も良い場所だった。
彼女はあぐらをかき、両手で印を結んだ。
銀白色の空間魔力が彼女の指先から溢れ出し、絹の糸のように空の裂け目へと伸びていった。
結界を構築し、縁を修復し、逆転させる……
その一方で、チャールズは高台の真下に立っていた。
彼の目の前には、数え切れないほどの魔物がいた。
彼の背後には、エマがいた。
「どんな魔物も、エマさんに近づけはしない」
チャールズは静かに息を吐いた。
その瞬間、掌の金色の炎が空を焦がすほど激しく燃え上がった。




