55 トーマスの報復
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学園祭の最終日、陽射しが燦々と降り注ぐ中、校内は相変わらず人声で賑わっていた。
数日前、トーマスが取材エリアで騒ぎを起こし、学校から追い出されたという出来事はすでに聖国中に広まっていた。
トーマスと彼の「デイリー・エンターテインメント」の取材チームは、永久に取材資格を剥奪された。彼の名は聖国の報道界でも完全に地に落ちた。
「自業自得だ!」「当然の報いだ!」「クズめ!」――聖国には罵声が溢れかえっていた。
アデルハイム家までもが声明を発表し、トーマスとの関係を正式に断絶した。
アデルハイム伯爵は末っ子が生まれて以来、狼獣との契約を結べなかったこの息子を見限っていた。
今回の事件が発覚した後、アデルハイム伯爵はさらにきっぱりとトーマスの姓を剥奪し、今後アデルハイム家の成員を名乗ることを禁じた。
「幼い頃から役立たずで、アデルハイム家の汚名を高めることしかできなかった」
トーマスは部屋の隅にうずくまり、両手を激しく震わせていた。
「エマ……エマ……エマ……!」
彼は歯を食いしばってその名を繰り返し呟き、目は血走っていた。
「全部お前のせいだ……全部……全部!」
トーマスは床に拳を叩きつけると、立ち上がって狭い部屋の中を、まるで檻に閉じ込められた獣のように行き来し始めた。
すべては彼女のせいだ。あの赤い瞳の女のせいだ!あの忌々しい狐のせいだ!
もし彼らが抵抗しなければ、もし彼女が大人しく辱めを受け入れていれば、もし彼女が学生たちを立ち上がらせなければ、彼はこんな有様にはならなかったはずだ。
「復讐したいか?」
突然、背後から声が響いた。
トーマスは勢いよく振り返った。
いつの間にか、部屋の入り口には黒いローブをまとった何者かが立っていた。顔はフードで覆われ、灰色の、冷たさしか感じられない瞳だけが覗いていた。
「お前は……誰だ?! どうやって入ったんだ?!」
「私が誰かは重要ではない」
黒いローブの男は幽霊のように音もなく、ゆっくりと部屋へと歩み入った。「重要なのは、私が君に復讐をさせてやれるということだ」
黒いローブの男は袖から卵ほどの大きさで、暗紫色の光を放つ水晶球を取り出した。
水晶球の内部では、黒い魔法陣がゆっくりと回転している。
「これは……何だ?」
「空間の裂け目を作る魔法陣だ」
黒いローブの男は水晶玉をトーマスの目の前の机に置いた。
「これを粉々に砕けば魔界への通路が開く。魔物が溢れ出し、あの学校へ、あの女のもとへ押し寄せるだろう」
トーマスの呼吸が荒くなった。
彼は手を水晶玉へと伸ばしたが、すぐに引っ込めた。
「俺が……なぜお前を信じなきゃいけないんだ?」
「信じなくてもいい」
黒いローブの男は背を向け、入り口へと歩き出した。
「それなら、ここで、野良犬のように朽ち果てていればいい」
黒いローブの男の姿がぼやけ始めた。
「待って――!」
トーマスは水晶玉を掴んだ。
「砕けばいいだけか?」
黒いローブの男は振り返らなかった。
「砕けばいい」
その声は次第に遠ざかっていった。
「そうすれば、あの女の学校は地獄と化すだろう」
言葉が終わると、黒いローブの男は一筋の黒い煙と化し、空中で一瞬歪んだかと思うと消え去った。
残されたのは、トーマスとその暗紫色の水晶玉だけだった。
彼はそれをじっと見つめ、そして笑った。
「エマ……お前の学校は今学園祭をやってるだろ? お前はあの学生たちが大好きなんだよな?」
彼は震える手で水晶玉を掲げた。
「それなら、全部失えばいい。 君に関わる者のすべてを……君の墓の添え物にしてやるよ」
正午12時ちょうど。
学園祭の中央広場では、大規模な魔法ショーが始まろうとしていた。
学生たちは大きな輪を作り、わくわくしながら待っていた。
チャールズは群衆の後方に立ち、エマのために用意したお弁当を手に持っていた。
「エマさんの出番ももうすぐだろう……」
彼は独り言をつぶやいた。
「ドーン――!!!」
耳をつんざくような轟音が、広場真上から響き渡った!
「あああ、もう始まるの?」
「ワクワクする! 空間魔法の演目があるらしいよ!」
皆が一斉に顔を上げた。
空が裂けた。
雲ひとつない青空に、巨大な漆黒の裂け目が突然現れた。
「あれは何……?」
「学園祭の演目かな? リアルすぎる……」
「ち、違う、違う――!」
誰かが、裂け目の縁に漂う不吉な紫色の光を認識した。
「これは魔法の投影じゃない! 本物の空間の裂け目だ!」
裂け目の向こう側には、渦巻く紫色の雲霧、鼻を刺す硫黄の臭い、そして……
裂け目の奥で、無数の赤い瞳が開いた。
「魔……魔物?!」
「魔物だ! 魔物が裂け目から溢れ出してきた!」
次の瞬間、悲鳴が炸裂した。
最初の魔物がすでに裂け目から頭を覗かせていた。
それは全身を黒い鱗で覆われ、四つの目が燃える炭のように光る犬型の魔物だった。
それは血まみれの巨口を開き、耳をつんざくような咆哮を上げた。
そして、群衆めがけて飛びかかってきた。
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