53 エマの守護の盾
温かく柔らかな手が突然伸びてきて、エマの冷たく震える手を力強く握りしめた!
「何言ってるの! この躾のなっていないクズめ!あんた自身、一体どこが立派なのよ!」
怒りと軽蔑に満ちた女性の声が、エマのそばで炸裂した。
まるで生まれたばかりの幼い虎のように、凛とした正義感と愛らしさを兼ね備えていた!
エマは驚いて振り返ると、若々しく活気に満ちた顔が見えた。
それはエマが教えていた2年生の女子学生で、普段は隅っこで静かに座り、真面目にノートを取っている子だった。
今、彼女はエマの手をしっかりと握り、エマを背後に庇うようにして、背筋をピンと伸ばし、地面に倒れてみすぼらしい姿のトーマスを鋭い声で叱りつけていた。
「鏡を見て、自分のその有様を見てみろ!よくも他人を批判できるわね?その優越感はどこから来たの?!」
「その通り! 赤い瞳で何が悪いの?! エマ先生を馬鹿にしないで!
先生は赤い瞳なら、絶対超かわいいよ!」
その怒鳴り声は、まるで熱した油に水滴を落としたかのようだった!
瞬く間に、すでに義憤に燃えていた周囲の学生たちの怒りに火をつけた!
「マジかよ! 目が赤いから魔物だって? この人、頭おかしいんじゃないの?」
一人の男子学生が真っ先に叫んだ。
「なんてこった! どこから現れたこのクソ野郎?! 人前でこんな馬鹿げた理由で人を侮辱するなんて?!」
「エマ先生の目がどうしたって、あんたには関係ないだろ! ただ嫉妬してるだけだろ! 先生の能力の高さと、学生に人気があるのが羨ましいだけだろ!」
「あいつ、わざとやってるんじゃない? さっきからずっと、うちの学校にスキャンダルはないかって聞いてたし。 今度はでっち上げようとしてるんだろ!」
「俺が証言する!」
別の学生が一歩前に出て、興奮した声で叫んだ。
「先生の実験室を片付けていた時、たまたまエマ先生が仮面を外すところを見ちゃったんだ! 不気味だなんてとんでもない、すごくきれいな目だったよ!」
「本当?本当?赤い瞳? わあ、初めて聞いた! 絶対見たい! お願い!見せてよ! エマ先生!」
「私も証言する!」
また別の声が加わった。
「私はエマ先生の『契約通論』の授業を受けたことがある!
授業は分かりやすく、質問にも根気よく答えてくれるし、自腹で軽食を買って、私たちにエネルギーを補給してくれるんだ!
性格も良くて、雰囲気も良くて、スタイルも最高! この男の言ってることは完全にデマで中傷だよ!」
「俺も」
「私も見た」
「私も授業受けた」
「先生に助けてもらった」
「このゴミが!ブタみたいな顔で頭も回らないくせに、他人を批評するなんて、あんたこそ気持ち悪いのに!」
「みんな落ち着いて、肝心なのはそこじゃない!」
眼鏡をかけた論理的な男子が眼鏡を押し上げ、重みのある力強い声で言った。
「重要なのはこの男の行動だ! 公共の場で、これほど卑劣で下品な言葉で他人を攻撃するなんて、これはキャンパスハラスメントだ!」
「今は議論している場合じゃない!」
さっきエマを庇っていた女子が焦って叫んだ。
「誰か早くチャールズ君を引き止めて! このままじゃチャールズが相手を殴り殺しちゃう! 召喚獣が人を殴るのは大問題よ、チャールズにとって良くないわ!」
彼女の言葉が皆の注意を引いた。
トーマスを快く思っていなかった数人の男子学生が、すぐに「了解!」と応じて飛び出した。
彼らは口では
「止めるぞ!」
「おい、落ち着け!」
そう叫びながら、「仲裁」という名目で、誰かの拳が「うっかり」トーマスの脇腹に入り、誰かの足が「偶然」彼の足を払った。
トーマスを地面に押さえつけて身動きが取れないようにした。
「チャールズはいつ手を出したんだ?」
「そうだよ、彼の怪我は、私が彼の暴力行為を止めようとしてうっかりやってしまったもの。手を出したのは私だ」
「いや、私だ」
「嘘だ、俺だ」
「証言ならいくらでもする」
……
「これじゃ足りない、この件はこれで終わりじゃない!
学校の上層部に直接申し立てよう! セレナ様のところに行って、彼を追い出させよう!」
「そうだ! 追い出せ!」
「取材資格を取り消せ!」
「セレナ様の執務室へ行こう!」
怒りの声の渦がエマを包み込んだ。
けれど、そのどれ一つとしてエマを傷つける言葉ではなかった。
全部、彼女を守るための声だった。
エマの冷たかった体が温まり、こわばっていた指が、少女の温かい掌の中で微かに震えた。
目頭が熱くなった。
今回は、もう一人きりで裁きの台に立っているわけではない。
今回は、エマの背後には、正義を貫く学生たちが立ち並んでいた。
そして、エマのために怒りの拳を振り上げ、全身から守護の気配を漂わせているチャールズ。
彼は人だかりの中心に立ち、数人の男子学生に「引き止められて」いたが、胸は依然として怒りで高鳴っていた。
その琥珀色の瞳は人垣を突き抜け、切迫した眼差しでエマを見つめ、無言で彼女の状態を確かめていた。
エマの手を握る少女、拳を振り上げたチャールズ、エマの周囲に立つ学生たち……
エマが学生たちに差し伸べてきた優しさは、今この瞬間、何倍にもなって彼女のもとへ返ってきていた。
彼らは皆、エマの盾となっていた!




