47 寄り添う温もり
チャールズは静かに耳を傾け、再び目頭が熱くなった。彼はうつむき、額をエマの肩にそっと寄せると、声を詰まらせてこう呟いた。
「……ここが僕の家? 僕とエマさん二人きりの家?」
「そうよ」
エマは彼の耳を優しく撫でながら言った。
「いくらでもここにいていいのよ」
それまで焦燥感から激しく振り回していたチャールズのしっぽは、ようやく静かに垂れ下がり、その先端がエマのふくらはぎにそっと巻きついた。
エマはチャールズの不安が一日や二日で消えるものではないことを知っていた。
チャールズの不安は、売買され、傷つけられ、捨てられたという経験に由来しており、そうした経験がもたらした傷が癒えるには長い時間がかかるのだ。
エマはチャールズが自分の前ではお利口なふりをすることなど気にしなかったし、時折見せる独占欲や陰鬱な様子も気にならなかった。
彼女はチャールズが暴力的な人間ではないことを知っていた。
彼女のチャールズは優しい人なのだ。ただ、これまでの生活が彼に優しさを見せることを許さなかっただけだ。
だからエマは時間と行動、そして日々寄り添うことで、彼の心にある「自分は価値がない」という思いを、少しずつ「自分は価値がある」という気持ちに変えていこうと決めていた。
「さあ、ご飯に行こう。 お腹が空いたわ」
エマはチャールズの頭をポンと叩いた。
ところがチャールズは突然顔を横に向け、初めてエマの首筋を舐めた。
エマは戸惑って彼を押しやった。慣れないわ。
「犬科って、なんで人を舐めるのが好きなの?」
チャールズの瞳から、一瞬にして従順な表情が消えた。
「エマさん……彼も、あなたを舐めたことがありますか?」
彼は手をぎゅっと握りしめては緩め、気持ちを落ち着かせたかのようにして、再び口を開いた。
「大丈夫……今、あなたのそばにいるのは僕です……」
エマは飛び上がって、もう一回チャールズの頭をポンと叩いた。
「あの人、私に触らせることなんて絶対に許さないわ! 彼が好きなのも私じゃないの。わかった?」
朝食の雰囲気はようやく和やかなものに戻った。
チャールズの料理の腕前は相変わらず非の打ち所がなく、エビフライは香ばしくてサクサク、他の料理もどれも美味しかった。
彼は絶えずエマに料理を盛り付け、背後でしっぽを小さく、嬉しそうに振っていた。まるで、ようやく主人の気持ちを確信した子犬のように……
夜が更けていった。
エマは身支度を整え、休もうとしたその時、寝室のドアがそっとノックされた。
「エマさん……」
ドアの向こうから、少し慎重でありながらも期待に満ちたチャールズの声が聞こえてきた。
ドアを開けると、チャールズは自分の枕を抱えてそこに立っていた。
ふさふさとしたしっぽが、少し緊張した様子で枕の端を巻き込み、琥珀色の瞳が薄暗い廊下の明かりの下でキラキラと輝いていた。
「そ、その……一緒に寝てもいいですか? 暴れたりしませんから……ただ……ただ……」
断られるのを恐れているような彼の様子に、エマの心はすっかり溶けてしまった。
「……入っていいわよ」
エマは体を横にずらして場所を空けた。
チャールズの目が一瞬で驚くほど輝いた。
彼は素早く部屋へ滑り込み、自分の枕をエマの枕の隣に置いた。
そしてお利口に横になり、ベッドの端のごくわずかなスペースだけを占めた。
エマは思わず笑みを漏らし、首を横に振った。
召喚獣なのに、なんて可愛いんだろう……
エマは横になり、電気を消した。
暗闇の中で、チャールズの温かな体温と、ほのかな草木の香りが感じられた。
やがて、温かくふさふさした大きな尾が、探るようにエマの腰にそっと巻きついてきた。
エマはそれを押しのけなかった。
チャールズは励まされたかのように、体を少し近づけてきた。
彼の温かな胸がエマの背中に触れ、その大きな尾はまるで最も温かい毛布のように、エマを優しく包み込んだ。
狐の尾は、本当に温かい。
狐の体も、本当に温かい。
エマは彼が築いた温かい港に身を寄せ、窓の外の潮の音を聞きながら、ゆっくりと目を閉じた。
エマが半生をかけて抱えてきた悔しさ、もがき、見捨てられた苦しみ、手に入らないものへの卑屈さ……それらはすべて、この温かく確かな闇の中で、潮の満ち引きにそっと運ばれ、遥か彼方の海底へと沈んでいくかのようだった。
そして、チャールズも同じだ。
窓の外では、波がささやき合っている。
窓の内側では、傷だらけの二つの魂がついに互いを見つけた。
前半生の荒れ狂った風雪は、まるでこの瞬間、ようやく止んだかのようだった。




