44 守護の一撃
ルーカスは、まるで自分がまだエマの召喚獣であり、エマの生活に干渉する権利があるかのように、当然のことのようにエマに詰め寄った。
言葉にできない怒りがエマの胸に込み上げた。
「新しく引き取った召喚獣、チャールズよ」
エマはできるだけ平静を装って答えた。
視線は彼に向けず、波がきらめく前方の海を見つめていた。
「じゃあ、俺は?!?」
ルーカスの声は急に高くなり、隠そうともしない怒りと焦燥感がにじんでいた。
彼は勢いよくエマの方を向き、いつもは氷のように冷たい青い瞳の中に複雑な感情が渦巻いていた。
「どうして新しい召喚獣を飼えるんだ?!」
「ルーカス、私たちはもう召喚契約を解除したわ。 5年前に」
エマは顔を向け、彼の目をまっすぐに見つめた。
「ずっと自由を望んでいたんじゃないの? 私はそれを与えたはず」
「……契約を解除した?」
ルーカスは一瞬呆気にとられたようだったが、すぐに冷笑を漏らした。
「だから、顔中傷だらけの気持ち悪い野狐のために俺を見捨てたのか? エマ、お前の趣味はそこまで落ちてしまったのか?」
「気持ち悪い野狐」という言葉が、エマの怒りに火をつけた!
バシッ――!!!
エマが全力を込めて叩きつけた手のひらが、ヒリヒリと痛んだ。
彼女はルーカスを睨みつけ、怒りで声がわずかに震えていた。
「ルーカス! チャールズをそんな風に言うな!
あなたに彼を貶める資格なんてないわ!」
ルーカスはその平手打ちで顔をそらした。
彼は顔を覆い、青い瞳には信じられないほどの衝撃が満ちていた。
かつては彼の言うことなら何でも聞き、触れてもらうことさえ懇願していたエマが、まさか自分に手を上げるなんて、夢にも思わなかっただろう。
「エマ!」
彼は声を張り上げて叫んだ。
「約束したじゃないか! 絶対に俺を見捨てないって! ずっと俺の面倒を見てくれるって!」
彼は過去の約束を盾にエマを問い詰めた。まるでエマが許しがたい裏切りをしたかのように。
「絶対に捨てない? ずっと面倒を見る? はあ」
エマは冷笑を浮かべた。
「でもルーカス、あなたが本当に欲しかったのは、ずっとエミリーだったじゃない? ダニエルの立場だったんじゃないの?」
エマは一歩近づき、ルーカスの急に縮んだ瞳をまっすぐに見つめた。
「召喚獣の秘境で、あなたが一目惚れしたのは彼女だった!
遊園地が爆発した時、あなたが飛び込んで守ったのは彼女だった!
あの深夜、中庭に立ち尽くして想っていたのも、あなたには永遠に手の届かない彼女だっただろ!」
「ルーカス、私たちの召喚契約は、あなたにとって無理やり受け入れさせられた枷に過ぎないんでしょ!
だから、私があなたに与えたのは『見捨てる』ことではなく、『叶えてあげる』ことよ!
あなたが憧れる人を追い求めることを叶えてあげるの! あの美しい人、私のような不気味な赤い瞳の魔物ではない!」
ルーカスの顔色は一瞬にして青ざめた。
意図的に隠していた本心が、エマによって容赦なくむき出しにされ、白日の下に晒されたのだ。
彼の瞳に動揺がよぎり、勢いよくエマの肩を掴んだ。
「俺……あの言葉、君はいつも気にしてなかったじゃないか!
あの日、休憩所で、俺はただ怒りすぎていただけだ。どうしてそんなに根に持つんだ?!」
肩を痛いくらいに握りしめられても、エマは振りほどこうとはせず、ただ冷ややかに彼を見つめた。
「気にしていない? 何を気にしていないの? 『赤い瞳の魔物』と罵られたこと? 自分の召喚獣が、私と一緒に歩くことさえ恥だと感じるほど私を嫌っていること?」
「ルーカス、気にしていないわけじゃないよ。ただ、あの頃の私は、気にすることさえできなかっただけよ」
エマは苦笑いしながら首を横に振った。
ルーカスの唇がわずかに動いた。
その青い瞳に宿っていた怒りは少しずつ消え、茫然とした表情へと変わった。
エマの肩を掴んでいた手の力が少し緩み、彼は視線をそらした。
「ごめん……」
「ごめん? ハハハ……ただ『ごめん』だけか……」
今さら「ごめん」なんて?
エマはとんでもない冗談を聞いたような気がした。
どれほど遅れてきたのか分からないこの謝罪は、この時、この場所で、あまりにも色あせていて、安っぽく感じられた。
それは、踏みにじられた心を取り戻すことも、刻まれた傷を癒やすことも、過去10年間の残酷な真実を変えることもできない。
ルーカスは口を開き、まだ何か言いたそうだった。
しかし、エマはすでに手を上げて彼の言葉を遮っていた。




