4 鏡に映る赤い瞳の魔物
誤字や不自然な表現などがありましたら、教えていただけると助かります。
エマは自分がどうやって家まで帰ったのか、覚えていなかった。
どれだけ歩いたのか、誰とすれ違ったのかも。
玄関の扉をどう開けたのかさえ思い出せない。
まるで魂を抜き取られたかのように、気づけば彼女は見慣れた廊下を通り抜け、リビングの冷たいソファにどさっと倒れ込んでいた。
窓の外はすでに真っ暗だった。夕焼けもとっくに消えている。
広い部屋は不気味なほど静かだった。
暖炉の火もほとんど消えかけていて、赤い残り火だけがかすかに揺れている。その微かな赤い光が彼女の青白い顔に落ちていた。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
耳元には、自分の鼓動だけが轟いていた。
エマはぼんやりと顔を上げ、視線が部屋をさまよう。そして視線はテーブルの上に置かれた銀の鏡で止まった。
彼女はしばらく鏡を見つめていた。やがて震える指先が、ゆっくりとそれを持ち上げる。
ひやりとした感触が頬に触れた。
薄暗い光の中、鏡の中のぼやけた顔が、少しずつ近づいてくる。
赤い瞳、見慣れたはずの自分の目がやけに鮮明になっていった。
耳元で、あの声がまた聞こえてくるようだった。
「赤い瞳の読み手……」
「魔物が現れた!……あいつと遊ぶな……ふん、ふん、失せろ!」
「赤い瞳の魔物のエマだ! みんな逃げろ……ハハハ」
こんなことを言われるのは初めてではない。
エミリーが生まれてからずっと耳元で聞こえていた声で、とっくに慣れたはずなのに……
なぜルーカスの声だけが、呪文のように頭の中で響き続けて離れないのか?
「この魔物みたいな赤い瞳の主人を君にあげるよ。 いるか?」
胸がズキっと痛くなり、エマは無意識に鏡の縁をぎゅっと握りしめた。
彼女は再び鏡を見つめた。
鏡に映る少女の肌は不健康な黄色みを帯びており、エミリーみたいに真珠のような輝きはなかった。
頬には淡い茶色のそばかすがいくつかある。かつては可愛らしいと思っていたが、今となっては欠点にしか思えなかった。
眉は整っておらず、唇の色も薄すぎる。
最も目を刺すのは、その真っ赤な瞳だった――ぼんやりしていて、疲れで満たされていた。
そこには、エミリーの瞳に見られるような、生き生きとした輝きはなかった。
「青い瞳のエミリーお嬢様と比べたら……」
エミリーはいつも眩しかった。金色の巻き毛はまるで自ら光を放っているかのようで、瞳は澄んだ深海のような青色だった。
彼女が笑えば周りも笑い、誰にでも話しかける。
……人々は彼女を好いた。
同級生も、先生も、それどころか……召喚獣たちでさえも。
いつだって人の輪の真ん中にいて、当然のように愛される存在だった。
それに対して、エマはどうだろう?
エマは鏡に映る赤い瞳を見つめた。
ただ色が違うだけなのに。
これまで本当に不幸をもたらしたことは一度もなく、噂されているような人の心が読める、というわけでもない。
それなのに、それがまるで皆が彼女を嫌う理由になっているようだった。
「お前の勝手な思い込みで、毎日いい主人ぶって現れるな!」
ルーカスの声が再び響いた。
カチッ。
鏡の枠が握りしめられ、かすかな音がした。
「バシッ!」
耐えきれなくなったように鏡を机に叩きつけた! 銀の縁が木製の机を擦り、耳障りな音を立てた。
エマの胸が激しく上下した。
――どうして?
どうして私なんだろう?
どうしてこんな目なんだろう?
どうして私がすべてを捧げたのに、返ってくるのはこんな憎しみと嫌悪だけなの?
数秒後、震える指が再びあの冷たい鏡へと伸びた。まるで自虐行為のように、彼女は再びそれを手に取り、鏡の中の自分を見つめることを自らに強いた。
何度も何度も、鏡を叩きつけ、また手を伸ばして拾い上げる。
また叩きつける。
数秒後にはまた拾う。
また見る。
また苦しくなる。
それでも、やめられない。
何度も何度も…………
薄暗いリビングで、鏡はまるで歪んだ渦へと変わり、彼女のすべての勇気と、残されたわずかな自尊心を飲み込んでいくようだった。
それを見るたびに、ルーカスの言葉が頭の中で何度も響いた。
見るたびに、エミリーの姿はますます輝きを増していく。
激しい憎悪が心の底から湧き上がってきた!
胸の奥がぐちゃぐちゃに掻き回される。
違う!
ルーカスが憎いわけじゃない。
エミリーが憎いわけでもない。
嫌だったのは鏡の中にいる、この顔、この赤い瞳、この暗くて、みっともなくて、何もない自分なのだ!
ついに、エマは自分を引き裂きそうなその視線に、もはや耐えられなくなった。
深く、深くうつむき、熱く火照った額を冷たく硬い鏡面に押し当てた。
涙が音もなくこぼれ落ちる。
「うっ……」
暗闇の中、リビングには抑えきれない嗚咽だけが漏れた。
残酷な真実を映し出すその鏡は、今や、劣等感に完全に打ちのめされ、自己嫌悪の深淵に縮こまっている一人の姿を映し出しているだけだった。
「……もう……いやだ……」
どれほどの時間が経ったのか。
カチッ。
と扉の鍵がシリンダーを回す微かな音が、息が詰まるような静寂を破った。
次の瞬間、扉が開いた。
廊下の光が瞬時に闇を切り裂いた。
背の高い人影が玄関に立っていた。
ルーカスが帰ってきた。
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