39 シャドウ・ファングの夜訪
日ごとに暖かくなってきた。
チャールズはまた新しいレシピを覚え、月光草の等級を見分ける方法を学び、エマが夜遅くまで研究している時には、彼女を起こさないようにそっと温かいお茶を手の届くところに置いておくようになった。
チャールズとエマは、互いの存在がある生活に少しずつ慣れていった。
ある夜のことだった。
エマの研究課題は重要な段階に入っていた。彼女は実験室に午前2時まで残っていた。
おかしい、今日はチャールズが迎えに来ていない。
エマは疲れ切った体を引きずりながら、一人で海辺の小屋へと戻った。
庭の門は半開きで、家の中の明かりはついていなかった。
屋内は真っ暗で、異様なほど静まり返っていた。
「チャールズ?」
エマは探るように声をかけ、すでに手に魔力を集め始めていた。
返事はない。
彼女は眉をひそめ、体を横にしてドアを押して開けた。
月明かりが窓枠の間から差し込み、床に青白い光の斑点を落としている。
すると、彼女はリビングの床から天井までの窓が全開になっているのを見た。
夜風がカーテンを揺らし、バサバサと音を立てている。
チャールズはリビングの中央に立ち、彼女に背を向けて、まるで張り詰めた弓のように体を硬直させていた。
そして彼の向かい側、床から天井までの窓の近くの影の中に、黒いローブをまとった三人の人影が立っていた。
月明かりが彼らの痩せて不気味なシルエットを浮かび上がらせていた。顔は真っ白な仮面によって覆われ、空洞のような目の穴だけが露わになっていた。
黒いローブは夜風に吹かれても微動だにせず、空気中には息が詰まるような気配が漂っていた。
「チャールズ・シャドウファイア」
真ん中にいた黒衣の男が口を開いた。声はかすれていた。
「脱走者、番号047」
チャールズは背後からエマの足音を聞いたが、振り返らなかった。
「エマさん……部屋に戻って。 外に出ないで」
「あの人たちは誰?」
エマの声は張り詰めていた。
「お願いだ」
チャールズはようやく振り返った。
月明かりの下、傷跡だらけのその顔には、普段の温和さはなく、彼女が今まで見たことのないような不屈の決意だけが浮かんでいた。
「お願いだ、部屋に戻ってくれ」
彼は繰り返した。
「見ないでくれ」
エマは何か言おうとしたが、チャールズはすでに顔を背けていた。
彼は三人の黒衣の男たちに向き合い、ゆっくりと背筋を伸ばした。
「俺はもうシャドウ・ファングの一員じゃない」
彼の声は相変わらず穏やかだった。
「無実の人を巻き込むな」
「無実?」
真ん中の黒衣の男が耳障りな笑い声を上げた。
彼の視線はチャールズを通り越し、エマにねっとりとかかった。
「お前の主人、この赤い瞳の女は」
黒衣の男は一語一語を強調して言った。
「我々の生贄として、まさにうってつけのようだ」
空気が一瞬にして凍りついた。
「――『生贄』?」
チャールズの声は突如として冷たくなった。
「お前たち……彼女に手を出してみろ」
言葉が終わるや否や、チャールズは動いた。
エマは彼がどう動いたのかさえはっきりとは見えず、ただ目の前がちらりと光ったかと思うと、チャールズの姿はすでにその場から消えていた。
次の瞬間、彼は一番左の黒衣の男の目の前に現れていた。
右手にはいつの間にかオレンジ色の炎がまとわりつき、鋭い風音を立てて斬り下ろされた!
黒衣の男は素早く反応し、身をかわした。しかし、炎の刃は彼の仮面をかすめ、「カッ」という音と共に、仮面は真っ二つに砕けた。
仮面の下には紙のように蒼白な顔があり、その目には恐怖はなく、狂気じみた興奮だけが宿っていた。
「シャドウファイア、シャドウファイア! ついに……使う気になったのか、047」
彼はひび割れた唇を舐めた。
「ボスの言う通りだ。この女に手を出せば、お前はまた……我々の仲間に戻る」
チャールズの瞳孔が急に収縮し、手が微かに震え始めた。
「チャールズ!」
エマの声が夜風に乗り響いた。
「彼らの言葉に惑わされないで! 君が誰で、どこに属するかは、君自身が決めることよ!」
チャールズは呆然とした。
彼は深く息を吸い込み、琥珀色の瞳が再び澄み渡った。
「よく聞け。 俺の名前はチャールズだ。 047ではないし、『シャドウ・ファング』の一員でもない」
彼は三人の黒服の男たちを前に、一語一語はっきりと言った。
「俺はエマさんの召喚獣だ」
「彼女に手を出す者がいれば――」
彼の手のひらから炎が突如として噴き上がり、オレンジ色の光が部屋の半分を照らし出した。
「――その者はこの世から消滅させる」




