38 愛される価値
「はあ――!」
エマはベッドから勢いよく跳ね起き、荒い息をつきながら、パジャマは冷や汗でびっしょりになっていた。
「エマさん、 目が覚めましたか!」
心配そうな声がすぐに耳元に響いた。
チャールズだ。
彼はエマのベッドの端に座り、エマの汗を拭いたタオルをまだ手に握っていた。
エマが目を覚ましたのを見て、彼はようやく安堵したように深く息を吐き出し、その恐ろしい傷跡も、薄暗いナイトライトの下では少し柔らかく見えた。
「悪夢でも見たのですか?ずっと泣き叫んでいらっしゃいました……」
彼はエマを驚かせないよう、声を極力低く抑えていた。
エマは彼を見つめ、長い間溜め込んでいた悔しさが、水門を開いたかのように溢れ出した。
涙はもはや抑えきれず、瞬く間に視界をぼやけさせた。
やはり、悔しい気持ちになるものなのだ。
「チャールズ……いい……? 抱きしめてくれる?」
チャールズは微塵も躊躇しなかった。
彼はすぐにタオルを置き、その動きは少々不器用なほど慌ただしかったが、ベッドに登り、両腕を広げて全身を震わせているエマを胸に抱きしめた。
彼の抱擁からは、太陽の光を浴びた草木の清らかな香りが漂い、並外れて温かく、悪夢がもたらした血の匂いと冷たさを吹き飛ばしてくれた。
エマは顔を彼の肩に埋めて、夢の中の恐怖と現実の悔しさを支離滅裂に語り、声は詰まって調子を失っていた。
「怖かった……痛かった……誰もいなかった……」
チャールズはエマを遮らなかった。
ただ腕をきつく巻きつけ、顎を彼女の頭頂にそっと当て、片手でリズミカルに背中を軽く撫でた。
「もう大丈夫……エマさん……大丈夫……僕はここにいる……チャールズはずっとあなたと一緒にいますよ……」
激しい感情がようやく少し落ち着くと、エマは涙で濡れた顔を上げ、震える声で言った。
「チャールズ……本当に、生まれつき愛される価値のない人っているのかな?……たとえば……赤い瞳をした私みたいに」
チャールズの体がわずかにこわばった。
彼は両手でエマの顔を包み込み、指先で絶え間なくこぼれ落ちる涙をそっと拭った。
そして、エマを呆然とさせるような仕草をした。
彼はエマのおでこにそっとキスをした。
「エマさんはとても美しいですよ」
そしてチャールズはエマの手を取り、自分の顔へと導いた。
彼女の冷たい指先が、左頬を横切る傷跡にそっと触れるようにした。
「エマさん」
彼の声は静かだった。
「以前は、顔に傷のある狐獣など、誰も欲しがらないと思っていた。
でもあなたは私に別の意味を教えてくれました」
彼は彼女の手を握り、その手のひらを自分の頬に当てた。
「傷跡は『ふさわしくない』という印ではありません。
『生き延びた』という証です。そして、生き延びたなら、愛される価値があります」
「エマさん! 教えてくれたのはあなたです。誰もが愛される価値がありますよ」
エマは少し呆気にとられたようにチャールズを見つめた。
チャールズはそんなエマがどこか愛おしく感じ、再び彼女を抱きしめた。
「エマさんはあんなに辛い思いをしているのに、いつも他人のことを気にかけています。
僕を引き取ってくれたし、魔海では見知らぬ召喚獣のために魔力が枯渇するまで戦ってくれました……
君がしてきたことの一つひとつが、ある一つのことを証明しています――」
彼は彼女の赤い瞳をじっと見つめた。
「エマさんは愛される価値があります。施しでも、憐れみでもないです。エマさん自身が、愛を受ける資格を持っています。
エマさんは世界で一番優しい人です。魅力満点!」
エマは彼を見つめた。
涙はまだ流れていたが、その瞳にはもう悲しみはなかった。
彼女は手を上げ、チャールズの顔の傷跡をそっと撫でた。
「……チャールズ」
「ん?」
「あなたも愛される価値があるわ」
チャールズは一瞬、呆気にとられた。
そして、そのオレンジ色の大きな尾が、小さく、抑えきれないほど左右に揺れ始めた。
夜風がカーテンを揺らし、遠くの波のささやきを運んできた。
海に面した小さな小屋の中で、傷だらけの二つの魂が、しっかりと抱き合っていた。




