表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/30

28 噓つき

誤字や不自然な表現などがありましたら、教えていただけると助かります。

院長は窓辺に立ち、中庭でじゃれ合う召喚獣たちを眺めていた。


トレーナーは彼の背後に立ち、まだこう言っていた

「チャールズは今回、手荒すぎましたよ。リオンの頭は5針も縫うことになったのですから」


院長は振り返らずトレーナーに問うた。

「あの女、エマ先生のことだが、何か連絡は?」


トレーナーは首を横に振りつつ答える。

「もう一週間になりますが、何の連絡もありません。おそらくもう来ないでしょう」


院長は長い間沈黙した。

「たとえ来たとしても、チャールズを引き取らせるわけにはいかない」

ようやく口を開いた院長の声は穏やかだった。


「では、院長の意向は……」


「チャールズを追い出すんだ」

院長は振り返った。

「自分で逃げたと言うんだ。 もしあの女が来ても、従順な召喚獣ならいくらでも選んでもらえる」


トレーナーは少し躊躇した。嘘をでっちあげて騙すわけだ。あの女は迎えには来ないと…

「チャールズはそれを信じるでしょうか?」


「信じるかどうかは重要じゃない」

院長の眼差しが冷たくなった。

「重要なのは、彼が去らなければならないということだ」


トレーナーはチャールズを見つけた。


チャールズは日向ぼっこをしていた。


トレーナーは彼の足を蹴った。

「起きろ、処分が決まったぞ」


チャールズはゆっくりと顔を上げた。

傷跡だらけの顔には何の表情もなく、ただ冷たく彼を見つめていた。


トレーナーはその視線に背筋が凍る思いをしたが、それでも上から目線の口調で言った。

「院長から伝言だ。

お前は退所処分だ。 ヴェルニス召喚獣福祉院から出て行け」


チャールズは動かないままトレーナーを見つめていた。

以前なら、ここを離れて自由になれることを喜んだだろうが、今は……


「ああ、そうだ。 ある女性が君を引き取ると言っているのも聞いただろう」


チャールズの目が微かに動いた。


「君の詳しい事情を相手に伝えたよ。 だって嘘はつけないからね。 引き取る方に対しても責任があるし」

トレーナーは一瞬間を置き、口元を歪めて言った。

「彼女は『そんな気性が荒くて醜い狐獣なんて、絶対にいらないわ』って言っていたぞ」


数秒間、静寂が流れた。


チャールズはゆっくりと立ち上がった。

「彼女は、気性が荒くて醜い狐獣は絶対にいらないって言ったのか?」


チャールズはトレーナーより頭一つ分背が高く、背中の傷はまだ癒えていなかった。

魔法の鞭の打撃には破壊の魔力が含まれており、傷の治癒を妨げるが、それでも彼がそこに立っている姿には、直視できないほどの威圧感があった。

「……彼女がそう言ったのか?」

彼は低い声で、もう一度念押しした。


「ああ、そうだ。 その望みは諦めたほうがいい」


チャールズはそれ以上何も言わなかった。

彼は背を向け、まっすぐ入り口へと向かった。


背後から、リオンの手下たちの嘲笑する声が聞こえてきた。

「ハハ、誰にも求められない奴だ!」


「とっくに消えさっているべきだったんだ!」


チャールズは聞こえないふりをして、召喚獣福祉院の鉄の門を押して外へ出ていった。


背後で、門が「ガチャン」と音を立てて閉まった。


チャールズは遠くへは行かなかった。

彼は召喚獣福祉院の向かい側の壁際にしゃがみ込み、影の中に身を潜めていた。

背中の傷がひどく痛んだ。彼は動く気にはなれなかった。


彼はトレーナーの言葉を信じなかった。

あの女は、魔海で見知らぬ召喚獣のために命を懸けて戦ったのだ。

彼女は自分を欲しがらないかもしれないが、決して「気性が荒くて醜い狐獣」などとは言わないはずだ。

彼女は召喚獣をそんなふうに貶めるような人間ではない。

だから、トレーナーはきっと嘘をついたに違いない。


一日、二日……

チャールズは朝から門の前にいて、白い制服が見えるたびに顔を上げた。

違った。

また違った。


エマは来なかった。


養護施設の職員が彼を追い払いに来た。

「どっか行け! 厄介者め!」


彼が動こうとしないので、誰かが箒で彼を叩いた。

彼は場所を変えて、またしゃがみ込んだ。


リオンの手下たちが通りかかると、彼に向かって唾を吐きかけた

「傷面のやつ、まだ待ってるのか?ハハハ、哀れだな!」


チャールズは何も言わず、彼らを見もしなかった。

ただ毎日そこにしゃがみ込み、ヴェルニス召喚獣福祉院の鉄の門を見つめていた。


一週間、二週間……

エマはやっぱり来なかった。


チャールズは夕方までしゃがみ続け、お腹がペコペコだった。

彼はゆっくりと街角の雑貨店の入り口まで歩き、あの子猫を見に行った。


子猫はほんの数日で少し大きくなり、体はきれいに磨かれていた。

ここに住む老夫婦が数日前に見つけて以来、毎日餌をやりに来ていたのだ。


足音を聞きつけ、その場しのぎの小さな巣から顔を出した子猫は、チャールズだと気づくと「ニャー」と一声鳴き、巣から飛び出して彼の足首にすり寄ってきた。


チャールズはバッグから最後の猫用おやつを取り出し、しゃがみ込んで包装を破り、子猫の口元に差し出した。


子猫はゴロゴロと喉を鳴らして食べた。


お腹がいっぱいになると、子猫は彼の膝の上に飛び乗り、脚の上を軽く踏みしめた後、ふさふさとしたオレンジ色の大きな尻尾の中にすっぽりと潜り込み、温かいボールのように丸くなった。


チャールズはうつむいて子猫を見つめた。

尻尾の上は温かい。体に当たる日差しも温かい。


だが、彼の心は凍えるほど冷たかった。


戻ってくると言ったのに。

迎えに来ると言ったのに。

頼んだわけでもないのに。


考えれば考えるほど腹が立ち、知らず知らずのうちに尻尾を振り払った――


「ニャーッ――!!」

子猫は吹き飛ばされ、空中で小さな放物線を描いた。


チャールズは瞳孔を縮め、慌てて手を伸ばして受け止めようとしたが、動きが急すぎた。

背中の鞭の傷が引っ張られ、激しい痛みにバランスを崩し、全身が前に倒れ込み、「ドスン」と地面に叩きつけられた。


すると、小さくてふにゃふにゃした何かが、彼の頭の上に落ちた。


子猫は彼の頭の上でしっかりと佇み、首を傾げて「ニャー」と一声鳴いた。


チャールズは地面に伏せたまま、微動だにしなかった。

「……」


彼はゆっくりと手を伸ばし、頭の上から子猫を降ろして、両手でそっと抱きかかえた。


子猫は彼の鼻をペロリと舐めた。


チャールズはその丸い瞳を見つめ、ぶすっと言った。

「……嘘つき」


チャールズ:

「別に待ってねぇ」

一分後

(尻尾ぶんぶん)

「来る、来ない、来る、来ない、来る、来ない……」

「あああああああああーーーーーー!!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ