25 大きな尻尾はまだ丸見え
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エマは思わず立ち止まった。
まさかさっきの狐獣も、ここの召喚獣だったのだろうか。
彼女はドアを押して中に入った。
中庭はとても静かだった。
数匹の年老いた召喚獣が隅っこで日光浴をしており、彼女が入ってくるのを見て、ただだらりとまぶたを上げただけだった。
「どなたをお探しですか?」と、一人のスタッフが迎えに出てきた。
「ここの召喚獣を見てみたいんです」とエマは言った。
「それでは、まずはご自由にご覧になってください。私が院長を呼びに行きます」
エマは中庭でしばらく待ち、日光浴をしている年老いた召喚獣たちと少し会話を交わした。彼らはエマにどこから来たのか、どんな仕事をしているのかと尋ねてきたが、その口調は穏やかだった。
エマはここが想像していたよりも静かだと感じたが、彼女の視線はずっと何かを探し続けていた。
彼女はあの狐獣を見つけられなかった。
どこへ行ってしまったのだろう?
一方。
狐獣は訓練場の大きな木の上に立ち、幹の方を向いていた。
彼は遅れて戻ってきた。
あの子猫を落ち着かせるために二ブロックも回り道をしてしまい、福祉院に戻った時には、規定の時間を過ぎてしまっていた。
彼は罰として木の上に立たされ、夕食も許されなかった。
猫を助けた時に負った傷が、時折ズキズキと痛んだ。
彼は目を細め、枝越しに下を見下ろした。
魔海で死なずに済んだが、ここから飛び降りたらどうなるだろう?飛び散る血が花のように咲くのだろうか?
答えが出る前に、遠くから足音と話し声が聞こえてきた。
そちらにちらりと目を向けると、後ろ姿しか見えなかった。
院長が一人の女性を連れて、訓練室の方へ歩いていくのが見えた。院長の声には偽りの笑みが混じっていた。
「聖国軍も、あなたの空間魔法の研究に注目しているとか――」
その笑いは、狐獣に吐き気をもよおさせた。
投資家や金持ちが来るたびに、大人たちは偽りの満面の笑みを浮かべ、普段彼に指図する醜い本性を微塵も見せないのだ。
その女は突然立ち止まった。
彼女は振り返り、後ろの院長に何かを囁いた。
声が小さすぎて、狐獣には聞こえなかった。
狐獣は本来、気にも留めていなかった。ただ何気なくもう一度ちらりと見ただけだったが、彼は動きが止まった。
魔海で見た、あの見覚えのある白い仮面だ。
彼女なのか?
狐獣の心臓が激しく高鳴った。
その女は顔を上げ、院長の肩越しに、木々の梢を見つめた。
彼女が見ている方向は、まさに彼が立っている場所だった。
彼女は彼を見ている。
エマは、だらりと垂れ下がり、先がわずかにカールしたオレンジ色の大きな尾を見た。
そして彼の肩も、Tシャツは擦り切れており、その下から暗赤色の擦り傷が覗いていた。
彼女が口を開こうとしたその時、狐獣が突然顔を上げて彼女を一瞥した。
そして狐獣は素早く背を向け、身を屈めて、木の葉で自分の頭を隠した。
エマ:「……」
隠れたつもりなのかな? 大きな尻尾はまだ丸見えだけど。
彼女は笑いをこらえ、声を張り上げた。
「あ、見つけたわ。 あの狐獣よ」
狐獣の尻尾の先が、かすかに震えた。そして自嘲気味に口元を歪めた。
どうせ自分のことじゃないだろうし。
誰かに選ばれるなんて、ずいぶん昔に諦めたことだ。
だが、やはり我慢できずにこっそり振り返ると、隙間から院長の体が一瞬硬直したように見えた。
エマのクリスタル通信が突然鳴った。
「あ、緊急任務が入っちゃいました! 後で彼を迎えに来ます」
続いて慌ただしい足音が響き、白い制服が廊下の奥で一瞬、ちらりと見えた。
彼女は去っていった。
狐獣が立ち上がると、そこには空っぽの入り口しか見えなかった。
院長はその場に立ち尽くし、ふと顔を上げて狐獣の方を見た。その表情は複雑で、驚き、困惑、そして……悔しさが混じっていた。
「チャールズ?!」
院長は呟いた。
「どうして彼女がこの狐獣のことを……」
狐獣は一瞬呆気にとられた。今になってようやく、エマが口にした「狐獣」とは、まさか自分のことだったのだと理解したのだ!
彼の耳には、あの言葉が繰り返し響いていた。
「あの狐獣よ」
「後で彼を迎えに来るから」
彼女は自分のことを知っているのか?
いや、知らないはずだ。
チャールズはエマと接触したことは一度もないと確信していた。
それなのに、彼女は自分を指名した。
なぜだ?
院長は近づき、顔を上げて、木の枝に立つ彼を見下ろした。
「降りてきなさい」
と院長は言った。
チャールズが降りると、院長は彼をじっと見つめ、まるで商品の価値を再評価するかのように観察し続けた。
院長はようやく口を開いた。
「さっきの女、知っているのか?」
狐獣は首を横に振った。
「なら、なぜお前を指名したんだ?」
狐獣は驚いたふりをした。
「彼女が俺を欲しがってるんですか?」
院長はもう一度狐獣を一瞥すると、冷笑を漏らして何も言わずに立ち去った。
狐獣は気にせず、背を向けて訓練室へ戻った。
彼がトレーニングルームのドアを開けた途端、嫌悪感を覚える声が聞こえてきた。
「あの仮面をかぶった女。 ハハハ、きっと顔が醜すぎて人に会えないからだろう! 何を神秘的に装ってるんだ――」
チャールズの顔色が曇った。
トレーニングルームに爆笑が巻き起こった。
チャールズの目は険しかったが、口元はわずかに歪んでいた。
彼はゆっくりとドアを握りしめ、中へと歩み入った。
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