21 学校祭・幕開け── 過去の記憶1 ──
誤字や不自然な表現などがありましたら、教えていただけると助かります。
学校祭が近づくたび、エマは少しだけ期待を抱いてルーカスに頼んだ。
「ルーカス、今年の学校祭……私と一緒に行ってくれない?
今年の魔法花火はモリア花火一族の特製で、すごく綺麗なんだって……」
ルーカスは毛づくろいを止めることさえしなかった。
「行かない」
冷たい返事は毎年同じだった。
「でも……みんな自分の召喚獣を連れて行くのに……」
エマの声には、自分でも嫌になるほどの弱さがにじんでいた。
「ダニエルでさえ、エミリーと一緒に……」
ルーカスの動きがようやく止まり、彼は顔を上げ、青い瞳でエマを冷たく一瞥した。
「行かないって言っただろ!」
彼の口調はますます苛立ったものになっていた。
「召喚獣が欲しいなら、新しいのを召喚すればいい」
新しいのを召喚する?
「新しいのが欲しいわけじゃない……」
しかし、ルーカスはもう彼女を見ていなかった。
だから、毎年行われる学校祭で、エマはいつも一人きりだった。
彼女は喧騒の片隅で身を縮めていたが、視線は思わず妹のエミリーと、彼女の忠実な灰色の狼、ダニエルへと向かっていた。
ダニエルを見るたび、エマはルーカスを思い出した。
同じ狼獣で、同じように鋭い瞳をしているのに、どうしてこんなにも違うのだろう?
ダニエルがエミリーを見る目は、いつも優しさに満ちていた。
ダニエルは頭を下げ、エミリーの肩に軽く額を寄せながら尋ねた。
「エミリーさん、あそこの屋台のペンギンのヘアバンドが欲しい?」
「狼のほうがいい」
「はいはい、灰色だね?」
そうして彼は軽々とゲームに勝ち、その灰色狼の耳のヘアバンドをエミリーの頭に被せてやる。
エミリーは嬉しそうに爪先立ちになり、ダニエルのふさふさした狼耳に触れようと手を伸ばす。
その時、ダニエルはいつもごく自然に腰を屈め、自分の頭をエミリーの手が届く高さに差し出し、彼女に撫でさせてやる。
提灯の明かりが織りなす影の中で、少女の明るい笑顔と狼の従順な姿は、「完璧な絆」と題された一枚の絵を構成していた。
あの笑顔、あの触れ合い……たった一度でいい、ルーカスがあんなふうに自分を見てくれたなら……
見つかるのが怖くて、彼女はさらに身を縮め、影の中に隠れた。
しかし、不運はいつだって予期せぬ時に訪れるものだ。
あの学校祭の日、エマはいつものように噴水の像の影に隠れていた。
トーマスは取り巻きを引き連れ、わざとエマの前へやって来た。
「おや! これはこれは、我がクラスの超有名人、優等生エマ様じゃないかぁ」
彼は悪意を込めて、言葉の最後を引き伸ばした。
「おや? 不思議だな…こんなに賑やかな日なのに、お宅のあの高貴なルーカス様はどこへ行ったんだ?
どうして我らがエマ様と一緒に来て、みんなに見せびらかさないんだ?」
「……」
「まさか、ルーカスはまた留守番か? なんで一緒に来ないんだ?」
取り巻きたちは一斉に爆笑した。
エマはうつむき、この場から逃げ出そうとした。
「逃げるのか?」
そばかすだらけの背の高い少年が、突然足を伸ばして――
「あっ――」
エマは石畳へと倒れ込んだ。 肘と膝をざらざらした石畳に打ちつけ、魔法書が散らばった。
周囲から向けられる視線には、好奇心、無関心、そして嘲笑が混じっていた。
トーマスはしゃがみ込み、その嫌らしい顔をエマに近づけた。
「あらあら、お気の毒ですね、エマ様。
妹さんのエミリーを見てごらんなさい。
彼女のダニエルは、なんて献身的なんでしょう、一歩も離れずにいるんです!
それなのに、あなたを見てごらんなさい……」
トーマスはわざと間を置き、大げさな同情を込めた口調で続けた。
「お前の家の白い狼、ルーカスは、エミリーの家と同じ狼獣の一族だろう? それでどうなった?
灰色の狼は高貴なエミリー様のそばへ行き、そして白い狼は、お前のような……
へへ、俺がルーカスだったら、こんな恥さらしにはなりたくないよ!」
「赤い瞳の読み手と一緒に、恥をかきたがる奴なんていないさ!」
そばかすの男はさらに悪意を込めてそう言い放ち、エマの肩を靴先で小突いた。
トーマスはエマの目の前にしゃがみ込んだ。
「知ってるか、エマ?
あの時、召喚の秘境で、あの白い狼を俺に渡すべきだったんだ」
彼は少し身を乗り出した。
「俺は手を差し伸べた。 だが、あいつは俺を一瞥もしなかった。
俺が君にどこが劣っているっていうんだ?
後になってわかったんだ。
あいつが選んだのは、君じゃなかった!」
「白い狼が君を選んだのは、ただ君の妹に近づきたかったからだ!」
トーマスは、エマの顔から血の気が引いていく瞬間を堪能していた。
「あいつが君についてきたのが、君の救いなんて思ってるのか?
違うよ、エマ。あいつはただの犬だ。
エミリーに近づくためなら、お前みたいな赤い瞳の魔物の隣にいることさえ我慢できる犬だ」
「それなのにお前は、その犬さえ引き留められない」
トーマスは口元を歪めた。
「なんて哀れなんだ、エマ。
赤い瞳の読み手を愛する奴なんて、どこにもいないよ!」
トーマス:「ルーカス、なんで俺を選ばなかったんだ?」
ルーカス:「……ふっ」
***
ルーカス:「エミリー様、なんで俺を選ばなかったんですか?」
エミリー:「……ふっ」




