表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
21/73

21 学校祭・幕開け── 過去の記憶1 ──

誤字や不自然な表現などがありましたら、教えていただけると助かります。

学校祭が近づくたび、エマは少しだけ期待を抱いてルーカスに頼んだ。

「ルーカス、今年の学校祭……私と一緒に行ってくれない?

今年の魔法花火はモリア花火一族の特製で、すごく綺麗なんだって……」


ルーカスは毛づくろいを止めることさえしなかった。

「行かない」

冷たい返事は毎年同じだった。


「でも……みんな自分の召喚獣を連れて行くのに……」

エマの声には、自分でも嫌になるほどの弱さがにじんでいた。

「ダニエルでさえ、エミリーと一緒に……」


ルーカスの動きがようやく止まり、彼は顔を上げ、青い瞳でエマを冷たく一瞥した。

「行かないって言っただろ!」

彼の口調はますます苛立ったものになっていた。

「召喚獣が欲しいなら、新しいのを召喚すればいい」


新しいのを召喚する?

「新しいのが欲しいわけじゃない……」


しかし、ルーカスはもう彼女を見ていなかった。


だから、毎年行われる学校祭で、エマはいつも一人きりだった。

彼女は喧騒の片隅で身を縮めていたが、視線は思わず妹のエミリーと、彼女の忠実な灰色の狼、ダニエルへと向かっていた。


ダニエルを見るたび、エマはルーカスを思い出した。


同じ狼獣で、同じように鋭い瞳をしているのに、どうしてこんなにも違うのだろう?


ダニエルがエミリーを見る目は、いつも優しさに満ちていた。

ダニエルは頭を下げ、エミリーの肩に軽く額を寄せながら尋ねた。

「エミリーさん、あそこの屋台のペンギンのヘアバンドが欲しい?」


「狼のほうがいい」


「はいはい、灰色だね?」

そうして彼は軽々とゲームに勝ち、その灰色狼の耳のヘアバンドをエミリーの頭に被せてやる。


エミリーは嬉しそうに爪先立ちになり、ダニエルのふさふさした狼耳に触れようと手を伸ばす。


その時、ダニエルはいつもごく自然に腰を屈め、自分の頭をエミリーの手が届く高さに差し出し、彼女に撫でさせてやる。


提灯の明かりが織りなす影の中で、少女の明るい笑顔と狼の従順な姿は、「完璧な絆」と題された一枚の絵を構成していた。


あの笑顔、あの触れ合い……たった一度でいい、ルーカスがあんなふうに自分を見てくれたなら……


見つかるのが怖くて、彼女はさらに身を縮め、影の中に隠れた。


しかし、不運はいつだって予期せぬ時に訪れるものだ。


あの学校祭の日、エマはいつものように噴水の像の影に隠れていた。


トーマスは取り巻きを引き連れ、わざとエマの前へやって来た。

「おや! これはこれは、我がクラスの超有名人、優等生エマ様じゃないかぁ」

彼は悪意を込めて、言葉の最後を引き伸ばした。

「おや?  不思議だな…こんなに賑やかな日なのに、お宅のあの高貴なルーカス様はどこへ行ったんだ?

どうして我らがエマ様と一緒に来て、みんなに見せびらかさないんだ?」


「……」


「まさか、ルーカスはまた留守番か?  なんで一緒に来ないんだ?」


取り巻きたちは一斉に爆笑した。


エマはうつむき、この場から逃げ出そうとした。


「逃げるのか?」

そばかすだらけの背の高い少年が、突然足を伸ばして――


「あっ――」


エマは石畳へと倒れ込んだ。 肘と膝をざらざらした石畳に打ちつけ、魔法書が散らばった。


周囲から向けられる視線には、好奇心、無関心、そして嘲笑が混じっていた。


トーマスはしゃがみ込み、その嫌らしい顔をエマに近づけた。

「あらあら、お気の毒ですね、エマ様。

妹さんのエミリーを見てごらんなさい。

彼女のダニエルは、なんて献身的なんでしょう、一歩も離れずにいるんです!

それなのに、あなたを見てごらんなさい……」


トーマスはわざと間を置き、大げさな同情を込めた口調で続けた。

「お前の家の白い狼、ルーカスは、エミリーの家と同じ狼獣の一族だろう? それでどうなった?

灰色の狼は高貴なエミリー様のそばへ行き、そして白い狼は、お前のような……

へへ、俺がルーカスだったら、こんな恥さらしにはなりたくないよ!」


「赤い瞳の読み手と一緒に、恥をかきたがる奴なんていないさ!」

そばかすの男はさらに悪意を込めてそう言い放ち、エマの肩を靴先で小突いた。


トーマスはエマの目の前にしゃがみ込んだ。

「知ってるか、エマ? 

あの時、召喚の秘境で、あの白い狼を俺に渡すべきだったんだ」


彼は少し身を乗り出した。

「俺は手を差し伸べた。 だが、あいつは俺を一瞥もしなかった。

俺が君にどこが劣っているっていうんだ?  

後になってわかったんだ。

あいつが選んだのは、君じゃなかった!」


「白い狼が君を選んだのは、ただ君の妹に近づきたかったからだ!」

トーマスは、エマの顔から血の気が引いていく瞬間を堪能していた。

「あいつが君についてきたのが、君の救いなんて思ってるのか?

違うよ、エマ。あいつはただの犬だ。

エミリーに近づくためなら、お前みたいな赤い瞳の魔物の隣にいることさえ我慢できる犬だ」


「それなのにお前は、その犬さえ引き留められない」

トーマスは口元を歪めた。

「なんて哀れなんだ、エマ。

赤い瞳の読み手を愛する奴なんて、どこにもいないよ!」


トーマス:「ルーカス、なんで俺を選ばなかったんだ?」

ルーカス:「……ふっ」

***

ルーカス:「エミリー様、なんで俺を選ばなかったんですか?」

エミリー:「……ふっ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ