表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
令嬢ではない侍女ですが婚約破棄相手に溺愛されました(連載版)  作者: 灰月 琥珀
【1章 王宮追放】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/14

【1章 王宮追放】◇6

     ◇6


 善良そうで貴族らしい身なりの整った役人らしい方が近づいてくる。


「行く当てがなくて……」

「ほう、では宿に案内しましょう。ついてきなさい」

「ありがとうございます」

(くつ)はないのですか、裸足(くつ)とは? いったいどうしたのです?」

「い、いろいろありまして……」

「ほう……」


 一瞬(いっしゅん)、男性が不穏(ふおん)な笑みを浮かべた気がして、びくっとわたしは体を強張(こわば)らせた。これは、見たことのある顔だ。


(優しいふりをしてわたしを虐めてきた上級侍女の人たちと同じような(いや)な顔をしている。この人は危ない予感がする……!)


 わたしはついていくのをやめて、立ち止まって首を()った。


「あの、わたしは一人で教会に向かうところですから、どうぞお(かま)いなく」

「教会? 宿においでなさい。宿で一晩お休みすればきっといいことありますよ」

「いや、やめ――」


 私は男の人に突然(とつぜん)に口を(ふさ)がれ、押し倒されそうになる。

 男の顔つきが変わった。


「静かに、人が気づいてしまうといけない。騒ぐなよ。シーッ」


 (うで)(つか)まれそうになり、慌てて近くの川と反対側の方へと逃げようとする。

 それでも、悪びれた様子もなく歩いて追いかけてくる。

 わたしは走ろうとしたけど、怖くて足すくんで、そのまま足がもつれて転んでしまった

 すると、笑いながら男は近づいて()()ってきて、そして、わたしの肩を乱暴(らんぼう)(つか)むと、そのまま草むらへ連れて行って押し倒そうとする。


「おい女、逃げるなよ。今から可愛(かわい)がってやるよ。」

「やっ、やだー!」


 わたしが声をあげても(かれ)も周りに人はいない。

 きっとこのまま(かれ)も気付いてくれない。

 何が起こるかと考えると……わたしは背筋が(こお)る思いがした。

 わたしの力じゃ抵抗(ていこう)しても逃げられない、痛い、怖い。

 わたしは(ひとみ)いっぱいに涙をためながらも、せいいっぱい声を上げた。


「やだっ、お願い、もうやめてっ」


 こんな姿を見られたら、通行人に自分は淫乱(いんらん)だと、(いん)らな女だと思われるのだろうか。そんなの(くや)しいし、とても悲しい。

 今のわたしは裸足で、服だって(やぶ)れている。

 もしかして、商売でこんなことをしているのだと思われるのだろうか。


(こんなの(いや)だ、触れられる手が、とにかく気持ち悪い。今すぐ逃げたい)


 怖くて(くや)しくて、思わず涙がこぼれそう。


 手首を太い手で強引に押さえられて、恐怖心のあまり仕方なく(ふる)えた声で泣きそうになりがら叫んだ。

 涙がこぼれて顔がぐしゃぐしゃになりながら、どうすればいいのかと、答えのない答えを探して思考をぐるぐるさせた。


 頭の中でウラカン閣下(かっか)のことが頭に浮かんだ。


『カリナ。本当の君が知りたい、どうしたら君に会えるかな?』


 あの夜、ウラカン閣下(かっか)と話した時の言葉が思い出される。


(ウラカン閣下(かっか)、もしおられたら、助けてください。わたしを見捨てないで……)


 そのとき、わたしの体全体が白く光り輝きはじめた。


(えっ、これは何なの? 何かの魔法なの……?)


「あっ! 加護(かご)の魔法か何か仕込んでやがったのか!? ちっ……」


 わたしに(おお)(かぶ)さろうとしていた男はそのまま慌てて立ち上がり、背を向けて、転びそうになりながら走って逃げていく。


(良かった、何が起きたか分からないけど、助かった……本当に良かった……)


 雑草(ざっそう)と土まみれになった背中の痛みをこらえながら体を起こし、わたしは高鳴る心臓(しんぞう)をおさえ、涙ぐみながら呼吸を整えようとしゃがみ込んでいると、視界がだんだん暗くなり、そのまま意識(いしき)(うす)れていった……。




気に入っていただけましたら、ブックマーク、評価、いいねを頂けると今後の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ