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モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第2部 第7章 天下一武道会編

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43.わたしのだいすきなエリ様(リリア視点)

 カッ、と。


 聖剣が光を放ちます。

 眩い光に、咄嗟に目を瞑ります。

 光の奔流に飲まれて、そして全身を包まれて、これが光だけではなくて……聖女の力を帯びたものだということを、肌で感じます。


 聖剣から溢れ出たそれは、ものすごい速度で、そして一気に広がっていきました。

 わずかな地鳴りと、ごうごうと風の鳴る音。

 姿形のないそれが、わたしには知覚できない範囲まで……この国の全土まで、広がっていく。

 何も見えないはずなのに、不思議とそれが当然のことのように理解できました。


 ふらりと身体が揺らぎます。

 ですが、その場に足を踏ん張って……掴んだ聖剣を支えにして、何とかその場に踏みとどまりました。


 光と一緒に聖女の力が吸い上げられてしまったみたいで、頭がくらくらします。視界もぼやけて、まるで貧血のような、酸欠のような、それでいて、ひどく眠いような。


 深呼吸をしようにも、浅い呼吸が精一杯で、目を開けようにも、瞼がずしりと重たくて。

 立っていようにも、足に力が入らなくて。

 もう今にも、意識が落っこちそうですけど。

 それでもわたしは、叫びました。


 情けない声で、裏返った喉で、それでも叫びました。


「みんな、エリ様のこと思い出しました!?」


 ぐらぐら揺れてかすみ始める視界で、周囲を見回します。

 攻略対象たちが、真面目な顔でわたしを見つめていました。

 こうしてみんなに囲まれているのは、何となく友情エンドっぽいな、とか、意識の端っこで思います。


「釣った魚に餌をやらなくて、思わせぶりで、そのくせ鈍くて、平気で嘘ついて、わたしのこと騙して、利用して、」


 呼吸が続きません。ぜぇはぁと浅い息を繰り返しながら、それでもわたしは話し続けます。

 騎士団の皆さんや、街の人。

 みんなが、何も言わずにわたしを見ていました。


「散々心配かけて、振り回して、それでも、やさしくて、かっこよくて、強くて、助けてくれて、支えてくれて、頼りになって――当たり前みたいに、一緒にいてくれて、」


 喉がからからです。もうまともに言葉になっているかも怪しいです。

 視界にちらりと、見覚えのある人影を見つけます。

 ああ、あの人、クラスの子です。

 エリ様の親衛隊の。その隣は、確か、訓練場の。


「そういう、超最高の、わたしのだいすきなエリ様のこと!!!! 思い出しました!!??」


 しん、と静まり返った広場に、声がしました。


「思い出したよ」


 ああ、この声。

 誰でしたっけ。聞いたことある気が、するんですけど。

 やさしくておだやかで……なのにちょっとだけ、わたしのだいすきなあの人に似ている……この、声は。


「みんな、思い出した。リリアちゃんの、おかげで」


 その声に、ふっと、身体から力が抜けます。

 へなへなと地べたに崩れ落ちます。

 もっとカッコよく、もしくはかわいく、……主人公らしく決められたらよかったのですが、わたしにはこれが限界でした。


 青く澄んだ空を仰ぎながら、最後の力を振り絞って、声を上げます。


「なら、よし!!!!!」


 そのまま、地面に大の字で倒れました。

 ああもう、空っぽです。すっかり使い果たしちゃいました。目を閉じたらこのまま、石畳の上でだって寝てしまえます。


 こんなに頑張ったんですから、ドレスの1着や2着では安すぎます。挙式とハネムーン新居付きでお願いしたいです。

 ていうか脈々と受け継がれていたっぽい聖剣の力、全部使っちゃいました。

 怒られる時はエリ様も一緒に怒られてくださいね。


 かすれゆく意識の中で、あの人の瞳の色に似た空を見上げながら……わたしはいつかのエリ様の真似をして、呟きました。


「ざまぁみろ、世界」


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― 新着の感想 ―
[良い点] リリアがエリ様を大好きなところ [一言] リリアーーーーー!!!!!!!!!お疲れさま!!!頑張った!!!!リリエリ推しに効く!!かっこいいよ!!! チューぐらいしてやってエリ様!!!!!…
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