恋に堕ちました9
本日2話目で完結です。
「そう今更なのです。今までの10年間の私はいったいなんだっていうんですか」
ねぇとルゥに同意を促せばルゥも目を細めて短く鳴いた。
久しぶり私は旦那様に怒っているのです。
「10年私は好きだってずっと言っていたんですよ。それを今になって返されても遅いのよ」
たどり着いた庭にルゥを離してあげれば、近くを飛ぶ蝶を追いかけていく。
幸せだと思うのです。
今はコーエン様という友達もできて、大好きなルゥもいる。
ほら、とても幸せでしょう?
旦那様を大好きだった私も幸せだったけど、今はもっと充実しているように思うわけで…
ほら、振り返ればさっきまで固まったままだった旦那様が息を切らしながら私の後ろに立っていた。
「なんですか?もう絆されたりしませんよ。もう旦那様を大好きだった私はいなくなってしまいましたもの」
「ああ、それはもうわかった。ばかだったと今日ほど実感したことがないくらいだ」
「そうですか、私にはもうルゥがいます。旦那様は前と同じ生活にお戻りになったら?」
そういえば旦那様はこぶしを握り締めて下を向いてしまった。
私も強くなったのものね、ここまで旦那様に言えるようになるなんて…笑えちゃう
「…わかった」
その声は小さかった。
「えっ?」
聞き取りづらく旦那様を見れば、旦那様は笑っていた。
何で笑っているのですか??
「わかったよ。そうだな、今更だよな。」
「ええ、今更ですよ」
「メルは好きにすればいい。俺も好きにするよ」
もう元の生活に戻る宣言ですか?
「俺を好きでいてくれた10年を俺も返すことにするよ」
「どういうことですか?」
何やらよくわからない流れになってきたようです。
「メルと同じように今日から10年…いやそれ以上俺はメルを愛するよ」
「はっ??」
頭が付いてこない。旦那様は何を言っているのだ?
「今はルゥとの蜜月を楽しんでいろ。けど、覚悟していろよ」
旦那様は急に私の顔に向かって手を伸ばしたきた。
驚いて後ろに下がろうとしてもそれより早く引き寄せられた。
頬をつかまれ旦那様の吐息が感じるほど顔を近づけあっていた。
角度から見れば口づけられているように見えるようだがそんなことはない。
そんな至近距離から久しぶりにみた。
昔から好きだったあの旦那様の不敵な笑顔をだ。
旦那様はふと後ろで私の危機に気が付き威嚇してくれているルゥに一瞬だけ視線をやるとまた私に戻った。
そしてその笑顔と共にこういったのです。
「宣戦布告だ。メル、俺との新たな恋に堕としてやるからな」
顔が赤くなるのを感じて悔しくてそれでも私はこう返します。
「私はもうルゥと新たな恋に堕ちてます。間に合っていますわ、旦那様」