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【アニメ化決定!】真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです  作者: 鬱沢色素
三章

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361・落ち着いて話し合いましょう

 その後。

 私達は家屋の中に入り、襲撃してきた女性から話を聞くことになりました。


「ここが、あなたの家ですか」


 室内を眺めながら、そう声を零します。


 中は暖炉が焚かれており、橙色の暖かい光が薄暗い室内を灯します。

 一方、ものがほとんど置かれておらず、殺風景といった印象も受けました。


「…………」


 女性は先ほどから口数が少なく、私達を恨めしそうな目で見ています。


 現在、彼女は縄で拘束されています。

 少しかわいそうだとも思いましたが、またいつ暴れ出すか分からない……というシキの進言から、こういう形になりました。


「驚いたよ。まさかまだ、フロストガルドで住んでいる人がいるなんてね」


 ナイジェルがそう声をかけますが、やはり女性から感じる敵意はそのまま。


「どうして、私達を襲ったんですか?」


 シルヴィが優しく彼女に話しかけます。


「それに、村中に仕込んでいた罠だって……ただの住民だと思えません。私達を襲った理由を、まずは教えてください」

「だって……今まで誰も村を訪れなかったのに、いきなり他国の紋章が刻まれた馬車が入ってくるんだぞ……! 敵襲以外に考えられないではないか! しかも禍々しい魔力も感じるし……」


 ようやく彼女は口を開いてくれて、シキの方に顔を向けました。

 みんなの視線が、シキに集まります。


「おっ。魔力を感知することが出来るのか。かっかっか! 妾を警戒するとは、なかなか判断力があるではないか」


 一方、シキはそう楽しそうに笑うだけでした。


 ……まあ、女性の言うことにも一理ありますよね。


 私は一息吐き、彼女の縄を解きます。


「へ……」


 まさか解放されるとは思っていなかったのか、女性はきょとん顔。


「なにを企んでいる?」

「なにも企んでいませんよ。私達が勝手に、村に足を踏み入れたのは事実ですからね。いつまでも拘束しておくのは、かわいそうだと思ったんです」


 縄が完全に解かれ自由の身になっても、彼女は戸惑いの表情を浮かべるのみで、その場から動きませんでした。


「だが、逃げられうと思うなよ?」

「下手な真似をすれば、すぐに斬る」


 ドグラスとファーヴが、女性に鋭い目線を向けます。


「……訳の分からないヤツだ。急に村に来たかと思えば私を拘束して、しかもすぐに解放する」

「私達は、戦いに来たわけではありませんから」

「ふむ……まあ、フロストガルドに攻め込んできたというわけではなさそうだな」


 女性は少し腑に落ちなさそうな表情ながらも、ゆっくりと立ち上がります。


「どこに行く」

「逃げはせん。というより、逃げたくても逃げられない……と言った方が正しいがな」


 鋭い目を向けるドグラスに、女性は背を向けます。


「少し待っていろ。貴様らも腹が減っただろう?」


 そう言い残し、彼女は部屋の奥に消えていきます。

 なんでしょう? そう思っていると、女性は両手にお皿を持って、すぐに戻ってきました。


「シチューだ。貴様らの口に合うかは分からんが、礼は尽くそう」


 テーブルの上に、シチューが入ったお皿を置いてきます。

 私達がお互いの顔を見合いながらも席につき、女性が入れてくれたシチューを口にしました。



 しばらくして……。



「美味しかったです」


 一息吐き、私はスプーンを置きます。


「体の中がぽかぽかと温かくなる感じで……ありがとうございました」

「毒でも入っているかと思えば、そうではなかったみたいだな。もっとも、妾に生半可な毒など、効くわけがないが」

「僕達のために作ってくれたのかな?」


 私に続いて、シキ、ナイジェルが順番に口を動かします。


 女性は仏頂面で、


「毒などいれん。少し戦ってみて、貴様らにそういうのが通用しないと身に染みて分かったからな。それに朝に作った余りだ。気にするな」


 とそっけなく答えました。


「…………」


 一方、ファーヴは空になったお皿の中身を見て、なにか意味深に考え込んでいました。


「さて……そろそろ、あなたのお名前を聞かせてもらってもいいですか? 戦う前、カリスタという名前が聞こえましたが……」

「それが私の名だ。フロストガルドの守り人を務めさせてもらっている」

「そうそう、その守り人っていうのはなんなのかな? 誰もいないはずのフロストガルドに君が住んでいたし、不思議な点ばかりだよ」


 ナイジェルがそう質問する。


 彼女──カリスタさんは少し考えていましたが、


「……まあいいだろう。話してやる。特段、隠すことでもないからな」


 そう言って、ゆっくりと話し始めました。


「フロストガルドは年中、雪に覆われた土地だ。作物もほとんど採れず、厳しい生活を強いられている」

「それなのに、どうしてあなたはここに?」

「それが、私の使命だからだ。フロストガルドの王家に仕え、国を守る──というな」


 真剣な顔つきで、カリスタさんが言います。


「フロストガルドの王家……? フロストガルドには、王族が存在しているのか?」


 とドグラスが問います。


「存在している。いや……存在していた、と言った方が正しいか。貴様らはこの国ついて、どこまで知っている?」

「あまり詳しくは知りません。猛吹雪のせいで今は誰も住んでおらず、閉ざされた土地だ──と」

「その他は?」

「これは迷信だから、言わなかったけど──」


 ナイジェルがそう口を開き、答えます。


「『女王の呪いに触れた、呪われた土地』──だと」

「呪われた土地?」

「それはどういう意味なんだ」

「僕にも分からないよ。何故か、フロストガルドについての歴史的な文献はほとんどないんだ。だけどそのせいで国が滅び、今のような現状を招いている……って聞いたことがある」


 私とドグラスからの質問に、ナイジェルが肩をすくめます。


「呪われた土地……あまり穏やかな話ではありませんね」


 シルヴィは頬に手を当て、目を細めます。


「話が見えん。結論から話せ。どうして、フロストガルドは滅んだ? ナイジェルの話は本当か」

「まあ待て……禍々しい魔力を持つ者よ。シキと言ったか? 私だって、他国の者に話をする機会なんてほとんどなかったから、慣れていないんだ」


 イラつく様子のシキを、カリスタさんは手で制します。


「昔のフロストガルドも雪に覆われた土地であったが、ここまで酷くなかったと聞く。たくさんの人々が住み、他国とも交流があり栄えていた」

「だとしたら、どうして……」

「ナイジェルの言っていることが本当だ。女王の怒りに触れ、呪われた……だから、年中吹雪くような土地になり、人々が離れたと聞いている。まあ女王というのがなんなのかは分からないし、眉唾な迷信である可能性も否めないが」


 とカリスタさんは溜め息を吐きます。


 フロストガルドも昔は、栄えていた……。

 今まで、フロストガルドは誰も住まない土地だと聞かされていたので、驚きです。

 そんな歴史があったとは。


「そして、私は守り人の末裔。私の父、そして祖父……ずっと昔から、たとえ国が滅ぼうとも、いつかは再興すると信じて……国を守ってきた」

「辛くなかったんですか?」

「辛い? そのような感情は忘れた。私はこの使命のために、ずっと生きてきたんだからな。他の生き方は知らない」


 カリスタさんの言葉は真っ直ぐとしたもので、疑う余地がないように感じました。


 暮らすだけでも厳しい土地で、彼女はずっと過ごしてきたんです。実際は当然、辛いこともあったのでしょう。


 しかし、彼女は本当に辛いと思っていない。自らの使命を全うするために、生きてきたわけですね。


「……まだ言っていない情報があるだろう」


 黙って話に耳を傾けていたファーヴが、ぽつりと言葉を漏らします。


「守り人の末裔は、貴様一人だけではない。他にも複数いるんだろう?」

「……やはり、隠し事は不可能か。その通りだ」


 あっさりと答えるカリスタさん。


「王都が近い──他国の者は、“死都”と呼んでいるのだったか? 王都に近いこの村で、私達は身を寄せ合って生きてきた」

「やはり……か。朝に作ったシチューの余りだとは言ったが、一人分にしては多いと思っていたぞ。それにあの罠の数を仕込むのも、一人では不可能だろう」

「まあな。とはいえ、年々守り人の数は少なくなっていった。祖父の代にはもっといたと聞かされたが……」


 とカリスタさんは表情を暗くします。


 ただでさえ、閉ざされた土地なんですからね。

 子を産み育てるのにも、限界があるでしょう。

 カリスタさんには悪いですが、年々人口が減っていくのは仕方がないと思いました。


「だったら、他の守り人はどこにいるのかな?」


 ナイジェルが問いを投げかけます。


「せっかくだから、挨拶をさせてもらいたいんだけど。僕達が敵じゃないってことを、知ってもらうためにもね」

「今はいない」


 断定するカリスタさん。


「いない? 隠すつもりではなかろうな」


 シキがぎろっとカリスタさんを睨み、声に警戒心を含ませます。


 ですが。


「今更、そんなことをするつもりはない。だが……あれは一週間ほど前だろうか。本当に村から姿を消してしまったんだ。今まで、こんなことはなかったはずなのに……」


 カリスタさん自身もよく分かっていないみたいで、声に動揺を滲ませます。

 どうやら、嘘は吐いていないようですね。


「なにか、心当たりはないんですか?」

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